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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
花園へ
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そうめん

数日前、魔女の心臓と核を四天王と魔王が取り入れた日のこと。

そうめん以外の3人が各々目に見えてパワーアップをした結果、意気込みを新たに次の戦闘に対する意欲を示していたが、そうめんだけは正反対に魔王から授かった針を考え事をしながら眺めていた。

『おかしい・・・なぜ私だけ能力が退化したの?』

そう、そうめんはキャンドルの心臓を取り入れた結果、能力が魔王軍に入って一番最初に身につけたものに戻ってしまったのだ。


誰よりも魔法を使うことを苦手としたそうめんは魔王軍の訓練ではいつも最下位の成績だった。

細かい調整は効かなくても妖精との相性が一番よく、誰よりも強い魔力を使えるようになり、さらに素手や武器を持った戦闘技術も体力も高い魔王軍最強のきしめん。

性格の細やかさから繊細な雷撃や、知力の高さから応用的な戦闘を繰り広げ、能力の副産物であるスピードは軍随一。そして生まれ持った才覚と鍛錬の結果で剣術の天才と呼ばれる葵。

感覚的に魔法の使い方を理解し、他のどの隊員も身につけていない能力を体内に取り入れた妖精によって開花させ、魔力消費の激しいという欠点もセンスのいい魔力調整で乗り越え、功績を上げて来たパルフェ。

そんな3人が持つものを何一つ持っていないそうめんはというと、妖精は体に取り入れたもののその力の発揮量はみんなと比べて半分以下。

どれだけ鍛錬を重ねようとも魔力はこれ以上上がらない。

しかし、パルフェやきしめんに比べて知力が高かった。

3人がまわりからチヤホヤされている間にそうめんは図書室で魔法書や魔王軍の得て来た技術書やデータを毎日読み込んでいた。

必ず自分が活かせる特性の魔法があるはず・・・。

「妖精を体に入れて定着したのは4人だって!だから次の幹部は四天王なんだって!私はパルフェ様がいいな!」

「俺はやっぱり強いきしめん様だな!男の憧れだよ!」

「僕は葵様かな!剣術は天才だし、知力の高さと上品さは頭ひとつ抜けた感じがするね!」

静かな図書室で雑音が聞こえる。

本のページを1つめくる。

「そうめん様は?」

「あの人って妖精がたまたま体に定着したってだけでしょ?」

「私たちの方が魔法の成績上じゃない?」

「クスクス・・・」

雑音が聞こえる。

本を変えまたページをめくる。

「あの人のところに配属されたらたまらないよね。だって・・・」

自分の周りに本の山がいくつも積み上がる。

そしてまたページをめくる。

「自分よりも弱い人についていかないといけないなんて」

「クスクス」と嘲笑う声が自分のなかでピタッと止んだ。

その時に自分の指もある本で止まった。

「あった。これが私の与えられた能力」

本の表紙には”毒全集”と書いてあった。


本を読み、毒の魔法書を手にしたそうめん。

魔王に伝えるととても喜んでくれて、四天王の武器として針を授かった。

初めは小型モンスターで試したが、何も起こらない。

さらに本を読み込んで練習を重ね、やっと微量の毒を生成できるようになった末に初めて毒で倒したモンスターは針を刺したら数歩歩いてから倒れ、しばらくしたら死んだ。

毒を作るのに魔力は多くはいらない。

しかし、繊細な技術を要した。

だから毒の使い手は少ない。

強い毒を作ろうと思えばそれなりの訓練がいるのだ。

しかも見た目に派手さはない。

そんな地味な技術を習得するより、もっと華のある炎や雷や水といった技に行きたがる。

はっきり言うと毒などの特殊な技は隙間産業のようなものなのだ。

自分が幹部として周りも納得させる活躍をするにはこれを極めるしかない。

そうして鍛錬を重ねる内にコツを得た。

毒の扱い方、濃縮の仕方、毒の種類、相性など様々な知識と技術を3年もかかったが自分のものとして確立していったのだ。

四天王になってから少しの間は輝かしい功績は無かったが魔王は自分を信じて待ってくれていた。

やがて時間と共に他の3人に引けを取らない存在となった。

それからのそうめんは躍進的な活躍を見せ、誰も後ろ指を指さなくなった。

自分の中には積み上げた、誰にも奪われない知識と技術という財産がある。

これを最大限に活用してここまできたのだ。

それなのに今、また周りとの差ができた。

それもかなり大きく、与えらた上で差がついてしまった。

『あなたには形状変化の特性があったキャンドルの心臓を与えたの。あなたはどの部下よりも魔法を使うのが苦手だけど、魔法の消費が比較的少なく、勉強熱心なあなたはその能力を上手く使ってもっと技を磨くことができると思うわ!!』

魔王の言葉が頭の中を何度も反復する。

「何か変化があるはず・・・。3人があれだけ変化した心臓を取り入れて何もないはずがない。魔王様はこの毒の退化に驚きもしなかった。ということは予想済みの変化だったということ?」

また魔王の言葉を思い出す。

「キャンドル・・・形状変化・・・」

試しに実験用の毒薬の錠剤を手に乗せてみた。

その時、ふと頭に「飲んでみよう」という考えが浮かんだがすぐに打ち消した。

「飲む?この劇薬を?そんなことしたら自殺行為じゃない!!なんてバカな発想を・・・」

しかし、まだ同じ考えが過ぎる。

そうめんは妖精を入れた腹に手を当てた。

「もしかして・・・あなたの意見なの?」

何も答えないが、妖精が自分に飲むように促していると感じる。

劇薬を口に入れることがどれほどバカげた行為かは重々承知しているが一度自分と妖精の能力に賭けてみることにした。

「上等じゃない。やってやるわよ」

そして1粒口に運んぶ。

飲んで様子を見ていると、次第に呼吸が荒くなってきた。

腹痛が襲うと同時に吐き気も催して来た。

「ハァ・・・ハァ・・・くっ!!」

前屈みに倒れ、近くの机に体をもたれかける。

それも束の間、一気に症状が緩和した。

そして手を見てみる。

「解毒したの?毒耐性が上がったとか?」

いや、そんなものじゃない、何か・・・力が溢れる感じがした。

立ち上がり、顎に手を当てて考える。

ただ耐性がついただけじゃない、何かを感じる。

劇薬の入ったビンを手に取ってから、ハッとしたように顔を上げた。

「この毒に弱いモンスターは・・・これだ!」

すぐに実験用で飼育しているネズミ型のモンスターをカゴに入れ、針を持った。

いつものように魔力で毒を生成する感覚を感じ取り、モンスターに針を刺す。

途端にモンスターが暴れ回り、パタンと倒れた。

死んだことを確認すると、解剖して死因を調べる。

「なるほど・・・私の新たな能力がわかった!!全ての毒を解毒できる毒耐性と、体内に吸収した毒を生成できる!!」

針に目線を向けた。

「これは退化したんじゃない!毒の種類をリセットしただけ!!一番初めに使った毒も生成できる・・・毒の記憶を保存し、引っ張り出して使える!!」

勉強熱心、技を磨く・・・今、魔王が与えた理由を理解した。

かなり強い能力を得たものだ。

そうめんは肩を小刻みに揺らしながら笑って、魔王軍が貯めて来た毒を片っ端から飲んだ。


きしめんと共に魔女の残党狩りを魔王から依頼された。

「そうめんは毒が変化していたと言っていたが、もうある程度使いこなせるようになったのか?」

「ええ、もちろん。私なんかより、威力が強くて試せないきしめんの方が練習の機会を得れなかったんじゃないの?」

きしめんが少しねたように言葉につまる。

「俺は・・・めっちゃ小さく出して部下に見せてたよ。難しかったけど」


きしめんは部下達に早速自慢しに行ったが威力が威力なだけあり、かなり小さく火柱を立てて見せていた。

「見ろ!新しい能力を!!」

「うわ!ちっちゃ!火柱かわいい!!」

「きしめんさん今までこんなに小さく出せるような魔力調整できなかったのにその技術が上がったんすね!!」

「きしめんさん!お湯沸かさせてもらってもいいですか?」

1人がヤカンを手にしていた。

沸かしたお湯でみんなでカップ麺を食べたという。


「みんなが俺の炎で沸かした湯で作ったら特別旨いって!へへっ!まったく、かわいい奴らだ!!」と鼻を指で擦って誇らしそうにする。

「あっそ」

聞いた自分がバカだったと呆れた。

「俺は墓地付近にいる残党を狩るよ」

「そう。それなら私は砂漠に近い残党を行こうかしら」

「それじゃ、お互い新しい能力は不慣れなわけだし、何かあれば連絡し合おう」

「もちろん」

そう言って2人はそれぞれの目的地へと向かっていった。

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