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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
メリリーシャの街
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幻の大使

「きゃー!!」

パーティが大使館に向かう途中、シャロンの悲鳴がメリリーシャの街に響き渡った。

「どうした、シャロン?」

シャロンが折れた杖を見せる。

「落としちゃったら・・・折れた・・・」

「でもこれ今折れたんじゃないみたい」

アスタが受け取り確認すると、キャメリアが折れた箇所を指した。

「ほら、接着剤のあとがあるわ」

「本当だ。だから最近シャロンの魔法が上手く使えなかったのか・・・」

「あ!!」

シャロンが思い出し、また大きな声を出す。

「あすなろの子達だ!」

「確かに杖を返した後様子がおかしかったものね」

「でもさ、シャロンが貸したわけだし、特に見張ってたわけでもなかったんだから、あの子ら責められんぞ」

「う・・・」

それからシャロンのテンションは回復することなく、大使館についた。

「シャロン、どうしたの?」

シャロンがずっと涙目なのでリントンが気にして頭を撫でてあげる。

「杖が折れたんだよ」

「まさかあの子達に貸した時!?」

アスタの言葉にチョコが焦るもキャメリアが落ち着かせる。

「悪いのは借した時に管理してなかったシャロンの方だから、気にしないで」

「でも・・・」

マタリがシャロンの前にひざまずき花を渡す。

「あなたの元気が無いとまるでこの世から太陽が消えた様に暗い・・・。どうか元気を出してくれないかな?」

シャロンがまだ落ち込んでいた。

マタリが仕方なく聞く。

「ご飯食べに行く?」

シャロンは元気なく、それでもしっかりと頷いた。


さすがのビストートもシャロンを見て驚く。

「うざい位元気な奴がどうしたんだ?」

「杖が折れたそうだ」

「ま、腹が膨らめば元気も出るさ。何か食えよ」

いつになく優しいビストートにアスタとロマが横目で見る。

「優しいな」

「優しいね」

「あのな、俺だって流石にここまで落ち込まれると優しくするわ!こっちも鬼じゃねーんだよ!」

だがシャロンはドルチェまでしっかり食べたにも関わらずまだ落ち込んでいた。

「どうしたもんか・・・」

「悪いな、心配掛けて」

「ほら、シャロン元気出して!皆心配してるわよ!」

キャメリアが背中をさすって慰めるが下を向いたまま弱々しい声で答える。

「だって・・・だって・・・杖無いと魔法使えないんだもん。だからってその辺じゃ売ってないし・・・」

「逆にどこに行ったらあるの?シャロンの地元しか無いってこともないよね?だって西の大陸にだって魔導師くらいいるんだからさ」

ロマの問いにシャロンが黙って考えてから口を開いた。

「杖の原材料になる神樹が手に入らないと作れないから、神樹が生えてる場所なら大抵杖を作ってくれる妖精か職人さんがいるはず・・・」

シャロンの話を聞いてマタリとリントンが思い出す。

「そういえばエディブルの花園に神樹があったよな」

「確かあれから作られる杖って大魔導師が使うらしいね」

大魔導師というワードを聞いたシャロンは急に体を乗り出して2人に聞いた。

「も、もしかしてプリムトンの樹!?」

「あー、そんな名前だった気もする」

「あれはエディブルにしか生えてない上にたった一本しかないから貴重な樹らしいですね」

パトロックの話しを聞いて目を輝かせる。

「シャロンよく知ってたわね」

「うん!学校で習った!!」

「学校の授業ほぼ寝てたくせにそんなんは覚えてんのな」

「大魔導師が授業してくれたことがあって、すんごくかっこよかったの!!シャロンもいつかプリムトンの杖を持って絶対に大魔導師になるって決めてたの!!」

アスタとキャメリアは呆れながら聞いていた。

「憧れだと覚えてられるもんなんだな、授業内容って」

「叶いそうで何よりよ」

マタリがパーティたちに向く。

「俺らから手紙書いとくから、エディブルに行きなよ。いい所だよ!」

「す、凄い!プリムトンの杖!」

「お!元気戻ったか!ほらよ、ジェラート。おまけだ。前に教えてくれた雨降しの実で作ったジェラート!」

「わあ!ビストート大好き!」

シャロンが嬉しそうにビストートに抱きついた。

「やっとうるさいのがいなくなってせいせいするよ!」

「あっそ!」

そっぽを向いて腕組みしながら膨れるロマに舌を出すアスタ。

「もぉ〜!遊び相手のアスタたちがいなくなって寂しいからって拗ねないの!!」

「拗ねてないし!!」とロマはパトロックに悪態をついた。

帰りはシャロンのご機嫌が治り、嬉しそうにスキップまでしていた。

「シャロンちゃんの手紙、早めの方が良いよな」

「そうだな。シャロンがまた拗ねないうちに行きたいし、来週一杯はいるつもりだったけど、今週中には出るか!」

「シャロン、プリムトンの杖の為なら元気出す!!」

意気込んでいるシャロンの頭をビストートが鷲掴みするように撫でる。

「現金なヤツだな!凄い魔法使えるようになったら見せてくれよ!」

「うん!!」

大使達とパーティがサンスベリアを出た。

「また来るよ、ビストート!」

「ごちそうさん!」


店がひと段落着いた頃、ドアが開いて客が1人入って来た。

ジャケットを着こなした銀髪の青年だ。

「いらっしゃい、久しぶり!トラジャ!!」

「やぁ、久しぶり!まだいいかな?」

「トラジャのためならいいよ!好きな所座って!」と促す。

「ありがとう。どうしても君の料理が食べたくなってね!」

ビストートがメニューを持ってきた。

「さっきまで大使たちいたんだ!本当に入れ違いくらいだよ!!」

その言葉を聞いてかなりショックを受けた顔をする。

「えぇ〜!!さっきまでみんなのこと大使館で待ってたのに!!」

「大使館向かって行ったからすれ違わなかったか?」

少し考えてから首をひねる。

「待ってようと思いながらカフェに行ったり、近くのおもちゃ屋さん行ったりしたのが悪かったかな?最終的に大使館と全く別方向からここに来たんだよ」

「全然待ってないじゃん!でも、トラジャらしいよ!」とクスクスと笑う。

いつもと違い全く毒舌が飛ばないのには理由があるのだ。

長年の付き合いやその他諸々でトラジャのことを尊敬しているビストートは無礼を全く働かない。

まるでトゲを抜かれたサボテンのように丸くなったものだ。

「Bセット頼むよ」

「はいよ!」

すぐに前菜が出てきた。

「あれ?今日はなんだか彩りがいいね!赤がきれいだ!」

「最近この街に旅で来た魔導師のガキンチョに教えてもらったんだよ!生の酸味と加熱時の味の変化と色味が面白くて気に入って使ってるんだ!」

「へぇー!相変わらず仕事熱心だな。この辺で採れるの?」

トラジャがフォークですくって木の実を見ながら質問する。

「前にカラの魔女が住んでた側の郊外でなってたんだよ!」

「魔女の家付近まで行くの?危険じゃ無いか」

心配そうにするトラジャに苦笑いで返す。

「正直怖かったけど、これ教えてもらった翌日にはカラの魔女が魔王軍のきしめんに倒されたって新聞にあったから今は安心して採りに行ってるよ!魔王軍は嫌いだけど、今回は助かったから複雑な心境だけど」

トラジャが黙って味わっている間にパスタを作る。

前菜を完食した頃に丁度パスタが出てきた。

「やっぱり美味しいね!君のお父さんも一流の腕をしていたけど、君のも引けを取らないな!!」

「親父が俺にここを受け継いでくれてしばらく立つけど、トラジャにそう言ってもらえて嬉しいよ!」

ビストートが照れ臭そうに笑う。

こんな素直なビストートをいつものメンツが見たらどう思うだろうか?

「最近ここの街に魔王軍が来たり、魔女狩りがあったりしてたけど大使たちは大丈夫なの?変わったこととか困ってそうなこととかない?」

「あー、なんか一回ロマが魔王軍の部下たち相手に改造したいたずら用のおもちゃで大量撃退したらしいけどな。あとは旅人のパーティのガキンチョたちに昼飯たかられてるくらいじゃないか?」

「魔王軍とロマが戦ったの?」

食後のカフェを飲みながら信じられないという顔を見せる。

「あのいたずらっ子のことだ。心配だなぁ・・・」と再びコーヒーをすする。

「でも、もうそんなことしないんじゃないか?」

「なんでそんなことわかるんだよ?」

「ロマが最近来たパーティたちとつるんで魔王軍にちょっかい出したみたいだけど、そのパーティたちがもうすぐこの街を出るみたいだからさ」

トラジャが傾げる。

「旅に出るってこと?」

「みたいだな。うっとうしい奴らだったけど、うまいうまいって食ってくれてたし、俺も寂しくなるよ」

「そうだろうね・・・。いつ出るんだろう?一応ロマがお世話になったからその内挨拶行かないと」

「そんな大した奴らじゃないからわざわざトラジャが行かなくてもいいよ!それに大使たちがお世話してる側だし!」

ビストートがいたずらっぽく笑う。

「魔導師のガキンチョが杖折れたからエディブルの花園行くとは言ってたよ。てか、大使館にこの後寄るんだよな?大使たちに聞けば?」

「あー・・・このあとまた外交で街を出るんだ。それにパトロックに捕まりそうで・・・」

「そりゃ内勤仕事全部させてたら文句言われるわな」

ここはさすがのビストートさえも苦言を呈す。

「それじゃあ、ごちそうさま!また来るよ!!大使館のメンバーをよろしく!!」

「またな!!幻の大使メンバー!!」

トラジャは苦笑いしつつも颯爽と去って行った。

「ほんと、定住しないな。渡り鳥みたい」

そんな渡り鳥の胃袋を掴んむビストートは看板を”close”にして店を閉めた。

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