賞金首
魔王軍の拠点ではきしめんとパルフェが悔しそうに怒っている。
「くそ!またもやあのチビ共にウチの部下がやられただと!!」
「私の所もやられたわ!小賢しい奴らめ!」
2人がいつもの如くパーティに怒りを露にしていると魔王が来た。
「きしめん、パルフェ。あなた達に仕事を頼みたいの」
2人が渡されたポスター大の書類を見るとパーティとチョコの写真が貼ってありその下には”wanted”と書いてあった。
「魔王様、こいつらをどうされるのですか?」
「その子達、あなた達を困らせてるんでしょ?そろそろ釘を刺そうかと思ってね」
しかし、きしめんとパルフェは困ったように進言する。
「だけどあいつら、葵が情報収集の為に雇ってるって言うし・・・」
「葵の手前、下手に手は出せませんよ」
「大丈夫よ。葵なら今じっ・・・別の用事をしてるし、私から伝えておくわ」
「それなら・・・まあ」とパルフェが納得する。
その横できしめんが冷や汗を垂らす。
『魔王様もパルフェに気を使ってるな・・・』
「ちょっとおいたが過ぎたわね。魔王軍の怖さ、思い知らしてあげる!!」
魔王は不敵に笑った。
翌日、シャロンが早朝でまだ人が出歩かない時間帯に朝散歩をしていると、街中のポスターが目に入った。
それを手にしてホテルに走って戻る。
アスタが寝ているとノックの連打音が響いて、シャロンの大声が聞こえた。
眠そうにしながらも出る。
「うっせーな。今何時だと思って・・・」
「アスタ大変!!シャロン達有名人だよ!!」
そう言って見せられたポスターに目を丸くして手元から奪い取った。
「な・・・これ、賞金首だと!?」
シャロンが傾げる。
「シャロン!これどこにあった!?」
「街中に沢山あったよ!」
アスタの冷や汗が止まらない。
「キャメリア!!」と叫びながら隣のドアを叩く。
「うっさいわね!迷惑よ!!今何時だとおもって・・・」
「これを見ろ!!」
自分の賞金首が掛かったポスターを見せられて一気に目が覚めた。
「賞金首!?しかも何この額!?都市で庭付きの家買えるわよ!!」
「シャロンはお菓子屋さんで店ごと買えちゃうよ!」
何故かシャロンだけ得意気にしている。
「おい、キャメリア!賞金首かけられたって事は何か大変な事が起こるんじゃ・・・」
「そうよ!賞金稼ぎに狙われるだけじゃない!あらゆる施設が使用できなくなる可能性がある!つまり、このホテルも追い出される!!」
それを聞いてやっとシャロンも事の重大さに気づいた。
「嫌よ!こんな贅沢なベッドに朝、夕食付の都会生活を辞めて野宿なんて我慢できない!!」
「なら早速街中の貼紙を剥すぞ!!チョコを叩き起こせ!!」
パーティはチョコの住むあすなろ荘に来た。
「うーん、まだ薄暗いよ?何?」
目を擦り微睡むチョコの肩を力強く掴む。
「寝ぼけてる場合か!!賞金首を掛けられた!!ここも狙われるぞ!!誰かに見られる前に剥がそう!!」
寝間着のままポスターを持って街を駆け回る4人。
「えぇー!?本当に僕が賞金首にかけられてる!!どういう事!?」
「わからん!だが、出資者が魔王軍だ!!」
「きっと葵さんが居なくなったからよ!!」
「とにかく、早く何とかしないとシャロン達のメリリーシャライフは終わっちゃう!!」
「急げーーー!!」というアスタの掛け声で方々に散った。
4人が必死に剥がして回る。
そして、空が白っぽくなった頃に再集合した。
4人が滝のような汗を流し、肩で呼吸する。
「全部回って・・・取ったよ・・・」
シャロンがポスターの束を見せた。
「うん・・・けど・・・」
チョコが辺りを見渡す。
「何か・・・増えてない?」
剥がしたはずの場所に再び貼られていた。
「おかしい!!何故だ!?」
「ちゃんと剥がしたのに!!」
慌てるアスタとキャメリアにシャロンが近くで観察する。
「あー!これ新しく貼られてる!」
「本当だ!僕馬車が10台も買える値段になってる!!」
「俺なんて小さな村が買えるぞ!!」
チョコとアスタも見て驚く。
「全員倍になってるわね・・・。新たに刷られたとしか思えないわ!」
「構うか!剥がせーーー!!!」
すると「あー!!」とシャロンが大声を出した。
「どうしたシャロン!」
「これ見て!!」
シャロンの指す文言を見る。
「なになに?混沌のカタストロフィ、アスタ、聖水と神樹のサクリファイス、キャメリア、叡智のアルバトロス、シャロン、幻影のカルネージ、チョコレート・リリー・・・」
アスタが読み上げると次第に皆、目が輝いていた。
『な、何かわからないけど・・・かっこいい!!』
この4人、悲しいかな所詮は10代の集まりだったのだ。
魔王軍では魔王が四天王達に増刷したポスターを渡していた。
「彼らが動いたらこれを貼って」
「はあ・・・」と気のない返事できしめんが受け取り文面を見る。
「あの、魔王様?これは一体・・・」
パルフェが指すそこには中二病全開の健全な大人なら恥ずかしい赤面モノのキャッチコピーが書かれていた。
「彼ら世代の集りにはそういう文言があれば剥がしにくいでしょ?」
「なるほど、流石です!魔王様!名策士です!!」ときしめん。
そして、まんまと引っかかるパーティ。
「ふふ・・・混沌のカタストロフィ、悪くない!!」
「聖水と神樹のサクリファイス、意味なんてわからないけど素敵な響きね!」
ノリノリのアスタとキャメリアにそわそわするチョコが口出しする。
「で、でもさ、これ剥がさないとまずいんだよね?・・・幻影のカルネージ・・・すごくかっこいいけど」
アスタが現実に戻る。
「あー、そうだよな。ホテル追い出されちゃうし。めちゃくちゃ剥がしたくないけど・・・」
「仕方ない。また剥がしましょうか」
そこにノリノリのシャロンがポーズを取りながら前に出る。
「ふっ!この叡智のアルバトロスと言われし大魔導師シャロンに任せな!!」
シャロンが杖を振ると近くのポスターがアスタに張り付いた。
「杖調子悪いの忘れてた!」
「あのな・・・」
呆れるアスタとは逆に、キャメリアは喜んだ。
「凄いわよ!シャロン!これどの範囲で使えるの?」
「叡智のアルバトロス!」
「・・・叡智のアルバトロス、これどの範囲で使えるの?」
すると不敵に笑って答えた。
「ふっ!この大魔法は見える範囲で使えるのさ!」
「いいね!これなら時間短縮にもなるよ!」
チョコが褒めると「ま、それほどでもあるんだぜ!」と叡智のアルバトロスが前髪をかき上げる。
「・・・ぷは!!よし!これで街中のポスターをひっぺがすぞ!!」
アスタは顔に付いたポスターを取って指揮を取った。
パーティ達が話している通りを一つ入った路地では、オールバックの強面の男がチョコのポスターを手に取って、パーティ達の声がする方向を見ていた。
また別の通りでもチョコのポスターを手に取る天然パーマの男がいて、さらに別の通りでもチョコのポスターを手に取る白いフードのプルチネッラ面を付けた者がいた。




