表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
東の大陸
9/218

世間知らず

「お前ら!よくやった!!イーストポートでこいつを渡してさっさと飯に行こう!!」

そう言って振り返るスキンヘッドで恰幅の良い大男の背後には草木一つない更地になった元盗賊団のアジトと、手には立派な宝石があった。

魔王軍の制服を着た仲間から喝采が起こる。

「これはお前に任せる!」とまだまだ慣れてなさそうな新人隊員に戦利品の宝石を差し出す。

「そんな!俺なんかまだ新人ですよ?」

両手を前に出して遠慮する新人に笑顔で宝石を押し付けた。

「だからだよ!まだ手柄が無いだろ?これを魔王様に渡して自分の手柄にすれば良い!」

その言葉に新人は目を輝かせる。

「ありがとうございます!」

「早く稼いで飯でも奢れよな!」と肩を叩いてやった。

その様子を影から誰かが見てた。

その夜、新人が1人でいる所を襲われた。

「きしめんさん!大変だ!!」

「何だ?騒がしいな。」

さっきの恰幅の良い大男はきしめんという名前らしい。

イーストポートで飲んでいたきしめんの元へ慌ただしく部下が駆け寄る。

「トイレの帰りが遅いから見に行ったら、新人が襲われてました!宝石を奪われたようです!!」

「何!?」

報告を聞くなり立ち上がって1人で出て行った。

走っていくと新人を担ぐ仲間に鉢合う。

「おい!大丈夫か⁉︎誰にやられた⁉︎」

両肩を掴んで大きな声で問いただすと「すいません・・・宝石が・・・」と満身創痍な新人部下が弱々しく答える。

「そんな事どうでもいい!それよりお前を襲ったのはどこのどいつだ⁉︎」

「ここらを仕切る・・・山賊です・・・」というのを聞くなり、きしめんは飛び出した。


数人の山賊達がニヤニヤしながら山小屋できしめんの部下から奪った宝石を見ている。

「魔王軍の奴チョロかったですね!」

「新人なんかにお宝を任せるからだ!」

「これで周りの奴らにも“きしめんから奪った”と言えるんじゃないですか?」

すると、突然ドアを蹴破られた。

「誰だ⁉︎」

「誰だ、だと?」

言うなりきしめんが巨大なハンマーを振り上げた。

次の瞬間、断末魔が響き渡り山がまた一つ更地になった。

「魔王軍機動隊隊長きしめん!地獄でこの英雄の名を広めてこい!!」

きしめんは宝石を取り返し、満月の光が遮られる事がなくなった地に背を向けて去った。


日が高く登る頃、アスタとキャメリアが茂みから東西の大陸を繋ぐ唯一の境界の門にいる門番達を覗いていた。

制服のせいか、門番はまるで同じ人が2人いるかのような見た目をしていた。

制服には大きく左の門番に1、右の門番に2と書いてある。

「やばいわね。西の大陸にあるメリリーシャの街はあそこを通らないと行けないわ」

「ここまで魔王の手が回ってるとは・・・。予想以上に権威の幅が広いな」


遡ること数時間前。

「次どこ行くの?」

キャメリアに聞かれてアスタが腕組みして考える。

「特には決めてないけど、近くに町があるらしいからそこに行こうと思う。そこで仲間の情報を集めつつ、色んな人に出会おうかと。・・・あ!!思い出した!ここ、知ってる?仲間とここを目指すために島を抜けたんだけどさ」

そう言ってカバンから出して広げたのは、かつてファルシが秘蔵書庫から持ち出したネバーランドの地図。

「ネバーランドの地図?」

「そう!このネバーランドに行きたいんだ!!」

真剣に言うアスタに冷ややかな目を向ける。

「は?何言ってんの?そんなのあるわけないじゃない」

「え!?無いの!?だって俺、キャメリアに会う前に人魚見たし!ここにも人魚の海あるよ!?」

ネバーランドが無いという衝撃の事実を受け入れたくなくて、真剣に指差して話すが現実は変わらなかった。

「これは架空の話よ」

「嘘だろ・・・。魔法さえあるのにネバーランドが無いだと?」

「ちなみに、そこで何する予定だったの?」

核心を聞かれたがさすがに女子のキャメリアに話すのは躊躇った。

「なんか・・・家族とかそこにいるのかなーってみんなで話してたんだよ」

「あー、たしか女性が追い出されたんだっけ?だからお母さんを探しにってことか・・・。気の毒だけど騙されたみたいね」

急に優しい言葉をかけてくれるキャメリアに嘘をついた罪悪感が芽生える。

『う・・・優しさが刺さる。・・・ま、所詮こいつも地元を出たことの無い俺と同じで無知なはずだ。きっとどこかにネバーランドはあるはずだ!!!』

「とにかくさ、次の町探そうぜ!仲間の情報とか欲しいし!!」

その言葉に笑顔で前のめりに提案した。

「ねぇ!ここいらの小さな町より、境界を渡った西の大陸にメリリーシャの街っていう大きな街があるの!都会で人が沢山いるからそこに行かない?人が多い方が仲間の目撃証言とかも得られ易いかも!!」

アスタが満面の笑みでキャメリアを指差す。

「キャメリア、お前なんてできる奴なんだ!よし、早速そこへ行こう!ちんけな町に寄り道してる場合じゃない!!」

『いざ、運命の出会いを求めて!!(あとついでに仲間も!byアスタ)』

アスタは仲間が隣の大陸なんて長距離を流されるわけないだろうとは全く想像できていなかった。

むしろ隣の大陸=隣町程度の距離感にしか思ってなかったのだ。

そして集落から出た事のないキャメリアもまた同じく世間知らずなのであった。


悩みながら境界の門を覗いていると風に乗って飛んで来た紙がアスタの顔に覆い被さる。

「ぶっ!」

「何これ?号外新聞?」

手に取ってキャメリアが見ると、昨日のきしめんの内容が書いていた。

「誰これ?きしめん?」

「知らないの?魔王軍一やばい四天王のきしめんよ!ほら見て!」

記事を見て目を丸くする。

『へー、四天王って葵以外にもいるんだ。てか四天王って何なん?』と思いつつ、目を通す。

「え!山を更地に⁉︎地域で暴れる山賊を退治。山は必要犠牲・・・何だ?えらく魔王軍を良く書いてるな・・・」

「新聞社によっては魔王軍贔屓の所もあるのよ。賄賂渡したりしてる新聞社とかもあるわ。その代わりに何かあった時に守ってもらったりしてるのよ」

顎に手を当てて「なるほどな」と呟く。

すると2人の門番に大柄の男が近づき、開門して通る。

「アスタ!まさにあいつよ!きしめん!!」

「うわっ!タイミング悪っ!・・・今の俺らじゃあいつどころか、きっと門番にすら勝てんぞ。どうする?海を泳ぐ?」

そう言って2人で海を見る。

「それは難しいわね。あいつらからバレない位置から泳ぐと日が暮れちゃう。まさか大陸間がこんなにも遠いなんて思わなかった・・・」

キャメリアの腰に提げてあるステファニアを見る。

「ステファニアの力でなんとかできないのか?」

「無理言わないでよ。草系の妖精しかないのよ!・・・てか、アスタは何もできないの?何か魔法は持ってない?」

アスタが両掌を上に向けて肩をすくめる。

「俺が何か使えるわけねーだろ!今までこの世に魔法だとか、お前や柊さんみたいな特殊能力者がいること自体、本とか空想の世界だと思ってたんだぞ!刀だって最近貰ったばかりでロクに使ったことないし!俺は能力も一般常識もその辺の一般人以下だと思え!!だからお前を誘ったっていうのに!!」

「何を偉そうに!!」

急にアスタが手で制してキャメリアを黙らせる。

「おい、あれ見ろよ!」

「何よ!!」と怒りつつもアスタの指す方向を見て驚いた。

「女の子!?」

きしめんの背後に魔導師の女の子がついて歩いていた。


「ご苦労。変わりないか?」

四天王のきしめんが聞くと門番が頷いた。

「今朝魔王様からの召集があった。西の大陸へ四天王が集まるだろう。東の大陸の警戒を強めるよう伝えておけ」

門番が敬礼をし、門を開けて男を通した。

その後ろを堂々と少女が付いて行く。

「ご苦労!」

堂々とした挨拶に門番も不思議な気持ちで見送ったが、やはりきしめんに首根っこを掴まれて戻された。

そして門は閉ざされた。

不思議そうに門番の片方が槍の柄で突くと少女が立ち上がり勇敢に門番に立ち憚かる。

「そこをどきなさい!絶対通してもらうもん!」

門番が目を合わせ、少ししてから少女に向き直り構えた。

「こっちもそのつもりで来たんだから!!」

少女が杖を構えた。

威勢はいいが手元が震えている。

門番の攻撃に少女が飛ばされた。

「きゃっ!」

とどめを刺しに門番が近寄る。

怯えて目を瞑った。

大きな音に片目を開き、恐る恐る前を見ると1、2歳年上そうな男の子と女の子がいた。

男の子が刀で門番1を抑え、女の子が人形を取り出して妖精を召喚し、門番2をツタで取り押える。

召喚士の女の子が振り返り、手を差し伸べた。

「大丈夫?私はキャメリア!名前は?」

「シャ、シャロン!」

手を掴んで立ち上がる。

「戦える?」という質問に「うん!」と元気よく答え、杖を構えた。

シャロンも加わり門番との戦いが始まる。

門番1がツタを簡単に破った。

一瞬できたその隙にアスタが背後から刀を振り下ろす。

しかしこれも簡単に門番1にかわされ、横腹を蹴り飛ばされた。

「アスタ!!」

キャメリアが妖精の力で再度ツタを相手に向けて出すが避けられる。

シャロンが門番2に杖を向け、魔法を使った途端に相手が石化した。

その様子に「え!?」と思わずシャロンが驚く。

「やるわね!シャロン!」

アスタが起き上がり門番1に刀を振り上げて果敢に攻撃を仕掛けた。

キャメリアが敵の足をツタで固定し、逃げられないようにアスタのサポートをすると、門番1も石化した。

「ナイスシャロン!」

アスタが刀を振り下ろすと同時にステファニアがツタで背後から襲いかかる。

「違うの!シャロンに石化の魔法は無いの!」

アスタの刀が当たろうとした時に門番1は瞬時に風化した。

ツタが勢いのままアスタに当たり同士討ちする。

「アスタ!」

門番1がキャメリアの背中で再構成され、静かに立っていた。

キャメリアが槍の柄で殴られて倒れる。

唖然と見ていたシャロンの背後で門番2が石化を解き、襲いかかろうとした時、アスタが刀を投げて突き刺した。

怯むもすぐに刀を抜き、再び襲いかかる。

門番1もアスタを殴りにいく。

「アスタ!キャメリア!」

シャロンが叫んだ頃には2人共地面に倒れていた。

いとも簡単に戦線は壊滅した。


西の大陸にある一番大きな都市メリリーシャにきしめんは向かっていたが、ポケットでケータイが鳴り画面を確認した。

「何!?集合場所が東に!・・・戻るか」

きしめんはうんざりしながら踵を返して再び境界の門へと向う。

3人にきしめんという更なるピンチが迫っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ