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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
メリリーシャの街
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ビストートの瞬間冷凍機

ゴーレムがアスタとチョコを追ってコンテナの角を曲がると入り口以外の三方向を囲まれた空間になっていた。

周りには様々な物が置かれているが、真ん中に置いてあるシュレッダーからヒソヒソ声が聞こえる。

音を追って半分の大きさとなったゴーレム2体がシュレッダーを覗き込んだ。

その声は中に入れられたノーティーエッグズ【こだま】から声を発していた。

体を乗り出して音の発信源を注意深く探していると、足を押し上げられて頭からシュレッダーに突っ込んだ。

素早くアスタがシュレッダーのレバーに回って倒す。

刃が動き出し、みるみるうちに細かく刻まれた。

廃棄口から出て来るゴーレムのみじん切りをチョコが麻袋を構えて受ける。

ゴーレムが全て入ったら素早く口を閉めた。


「あ!シュレッダーにかけて袋詰めにされた!!」

パルフェは双眼鏡を覗き込み大きな声を上げた。

「でも袋くらい時間をかければ破けるだろ」

「そうだな。大した問題では無さそうだ」

パルフェが双眼鏡を離す。

「そうね!あいつら、気になる戦いしてくれるからついつい連続で能力を使っちゃった!」

「お前な・・・」

「だって、だって〜!」

呆れながら文句を言うきしめんと言い合う。

『そうか。それは残念だな。パルフェの能力は1日5回まで。決着は見られなかったか』


「アスタ、全部入ったよ!!」

「まだ油断はできんな。破片がまた小さいこいつになっていつか袋を破くだろ。こいつをどう処分したものか・・・」

アスタが考える。

「メリリーシャの湖に沈める?」

チョコの持つ袋が暴れ出した。

「うわ!」

「沈めるのは時間が無いな。キャメリアのラエビガータがいるならまだしも、俺らだけではそこまで深くに沈められないだろう。それに、そいつが水中でも行動ができるとすればすぐに追って来るだろうしな」

チョコが必死に抱えて抑え込む。

「そ、そうだね!こんなに小さくしたのにすごい力だよ!!」

その時、アスタの目にビストートの瞬間冷凍機が入った。

「そうだ!冷凍しよう!」

アスタがドアを開ける。

「れ、冷凍!?」

「そう!冷凍してどっかの冷凍庫に入れてりゃ当分安全だろ!」

他に策も無いチョコは考える間もなく冷凍機に押し込んだ。

「それがどこまで安全なのか分かんないけど、今はやるだけやってみよう!」

チョコが必死にドアを押さえる。

「スイッチオン!」

アスタが瞬間冷凍機のスイッチを押した

すると、さっきまで中で暴れ回っていたゴムゴーレムの動きが急に止まった。

「と、止まっ・・・」

次の瞬間、中から破裂音が炸裂した。

2人で顔を見合わせる。

しばらくしてアスタがゆっくりと扉を開けると冷凍機の中で木っ端微塵となった残骸だけが残っていた。

もう動かないゴムゴーレムだった残骸を確認するとそっとドアを閉めた。

「爆発・・・したね」

「うん・・・」

沈黙をアスタが破る。

「俺さ、思い出したんだけど」

「何?」

一呼吸置いてから再び話す。

「昔な、地元の病院の裏口から入っていたずらしたことがあったんだよ。その時に液体窒素があって、幼かった俺はそれが何なのか知らなかったんだ。それで、好奇心で近くにあった消しゴムをツボに入れてみたら今みたいに破裂したんだよ」

チョコが冷凍機に目を戻す。

「後から知ったんだけど、ゴムって急速に冷やされると縮もうとする力と、それに反発する力が働いて爆発するらしいんだ」

チョコはたらりと汗を一つ流した。

「アスタ・・・これ、どうする?ビストートに謝りに行く?」

アスタが唇を噛む。

「うーん・・・。チョコ、俺達はやってない。全てゴム人間のせいだ」

「うん・・・え?」

チョコが動揺してアスタの顔を見る。

「ゴム人間が冷凍機に勝手に入って中で破裂した。いいな?」

「・・・ゴム人間が」

アスタは眉一つ動かさないで淡々と言う。

「そうだ。あとこれは処分しよう」

「しょ、処分!?」

アスタが冷凍機を押す。

「チョコ、そっち持て!シュレッダーに入れるぞ!」

「え、えぇ〜!」

「仕方ないだろ、こんなん謝っても絶対ビストートは許さないだろうし!それにゴム臭くて料理には使えないだろうしよ!処分した方がお互い良いってもんよ!!」

チョコは仕方なく手伝い、2人で冷凍機をシュレッダーに入れた。

アスタが手を合わす。

「安らかにお眠り下さい!それとビストートの怒りもあの世に連れてって下さい!!」

アスタはスイッチを押した。

雄叫びにも似た音を出しながら冷凍機はシュレッダーの餌食となった。

それからアスタとチョコは歩いてその場を去った。


「あ!そろそろあいつら決着ついたんじゃないかな?見て見ましょ!!」

きしめんを遮ってパルフェは双眼鏡で覗いた。

「うそ!!ありえない!!」

「どうした!?」

「何があった!?」

葵もきしめんも身を乗り出す。

「ゴムゴーレムが・・・影も形もないわ・・・」

その報告に2人も驚く。

「影も形もない?さすがに何かの間違いだろ!?」

「部下達だけならまだしも、俺らでさえあのゴーレムは手を焼くというのに!!」

パルフェが神妙な面持ちで双眼鏡を離した。

「もしかするとあいつ、とんでもない能力を使えるんじゃないかしら?ほら、前にきしめんが言ってなかった?」

「あぁ、俺と戦った時も、あいつは今までに見た事のない矛盾した能力を使ってきた」

きしめんの言葉にパルフェが傾げる。

「矛盾した能力?」

「俺は熱い氷で固められた」

「熱い氷?そんなのって・・・」とにわかには信じがたい事実を受け入れられなさそうに返す。

「信じ難いが葵もその光景を見ただろ?」

「ああ、俺も見たよ。きしめんの熱で溶かしたのも見た」

『しかし、本当にあいつがそんな能力を持っているのか?情報は育った島といつも携えている刀のみ。出生すら分からないあいつの正体は何なんだ?』

「とにかく今回のことは開発部のフォレノワールに結果報告して解明させてみるわ」

そこで葵が思い出したかのようにパルフェに声をかける。

「あれ?ところで、パルフェ」

「何?」

「お前の能力って10秒間を5回だけ念じた相手を見られるんだったよな?」

「何だよ、葵。今更だな」

「そうよ!それがどうしたの?」

きしめんもパルフェも葵の確認に疑問を抱く。

「今の6回目じゃないか?」

「あ!やば!」

パルフェが目をそらす。

「え?そうなのか?」

「そうだよ。俺はちゃんと数えていた!」

「それは〜、その〜」

きしめんも睨む。

「どういうことだ?何故回数を誤魔化してたんだよ?」

「はっきりと答えてもらおうか!」

2人に責められ「・・・はい」と呟いて下を向く。

「怒らないでね?」

「内容による」

「初めは5回だったの。でも、最近魔女狩りしてたでしょ?その偵察とかで能力を使ってたら6回まではなんとか使えるようになって・・・」

葵をチラッと見る。

「何だよ?早く言え」ときしめんに急かされる。

「隠さずにな」と葵も追従して言う。

「最後の一回は・・・葵の寝姿用で・・・」

葵のみならずきしめんまでも悪寒を感じた。

「この!ストーカーが!!」

「気持ち悪い話すんな!ボケ!!」

「だから言いたくなかったの!」

「二度とするな!!」と葵が怒りながら拠点を出て行った。

「真実を確かめるため、一度現場を見に行くか。しまった・・・パルフェから場所を聞いておくんだった」

葵は仕方なく歩いて行った。


ビストートは冷凍機が一向に来ないので夕方預かり場まで来た。

「あれ?俺の冷凍機がない・・・」

辺りを見回す。

「なんだ?どこにも無いぞ?・・・ん?」

地面を見ると朝に冷凍機があった場所から物を引きずった跡があった。

それをたどるとシュレッダーがあった。

シュレッダーの後ろを見る。

一番上にあるみじん切りにされた破片に購入した科学の世界の会社のロゴの断片があった。

ビストートが驚愕する。

そこにゴミの回収業者がやって来た。

「お兄さん、それ処分するからどいてもらえる?」

ビストートはその場に虚しくたたずんでいた。


葵が日没頃にやっと現場の情報を掴んで到着した時にはもちろんのようにアスタたちはいなかった。

「アスタ達は流石にいないか・・・」

葵が進む。

「この辺か!」

シュレッダーのある空間までやって来た。

しかし何も無い。

シュレッダーの廃棄物入れにも何も無かった。

「信じられん。本当にアスタ達はあのゴーレムを消し去ったのか?でもどうやって?」

考えていると背後から気配を感じたので振り向いた。

「誰だ!?」

フードを被り、仮面をつけた人物が現れる。

「・・お前は!!」


後日、ビストートのレストラン。

「よう!来てやったぞ、ビストート!」

「好きな所座れ!」

いつものように大使4人とキャメリア、シャロンが座る。

「新規6名来たぞ!ちゃっちゃと働け!!」

「はいぃ!!」

アスタとチョコは冷蔵庫をシュレッダーにかけた所を業者の人に見られていたらしく、すぐにビストートにばれた。

ゴムゴーレムの話は信じてもらえず、2人は冷凍機代を償う為にバイトをすることとなった。

大使や女子が席から覗く。

「ひゃー!コキ使われてんな」とマタリが苦笑いして2人の様子を覗く。

「大変そうだね」

「あの2人ゴム人間に襲われて仕方なく冷凍機で戦ったら壊れたって言ってたけど・・・」

それを聞いてロマが笑う。

「ぷっ!何だよ、ゴム人間って!苦しい言い訳だな!!」

「いくらゴム人間に襲われたからって、冷凍機をシュレッダーにかけちゃまずいわよね」

「アスタとチョコがんばれー!」

シャロンが大声で言うが厨房からは罵詈雑言が聞こえる。

「しっかり働け!!冷凍機みたいにシュレッダーにかけられたいのか!ゴミ屑ども!!」

「は、はいぃ!!」

馬車馬の如く2人は数日間働いた。

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