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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
メリリーシャの街
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兄弟との取引

アスタがお菓子屋でクッキーを買い、外に置いてある木の下のベンチで食べていると、2人組のサングラスをした男が近づいてきた。

「思ったより小さいな」

「もっとデカいと思ってた」

いきなりの失言にイラッとするアスタ。

『何だこいつら!?いきなり失礼な!!』

「どうも、プルチネッラ。俺はrossoのチェルヴェッロだ」

「同じく、rossoのコルポ。メールでも知らせたが、本来来るはずのベットに急遽予定が入ったので、その代わりに来た」

『名乗ろうにもクッキーが邪魔で名乗れん!!』

アスタがもごもごしていると、話を先に進められた。

「ここは人も多いし、さっさと行こう」

「ついて来い」

『え?どこに?てかrossoって何?プルチネッラって?』

アスタがなんとなくついて行くと、ある倉庫に着いた。

3人で中に入る。

薄暗い倉庫の真ん中に、何か大きな物体が布を掛けられて置いてあった。

その異様な様子に少しばかりの恐怖心を覚える。

「さあ、これだ」

「近くで確認しろ」

アスタは恐る恐る近づき、布を剥がした。

剥がされた布の下には、真っ黒で堂々としたボディの機関銃があった。

「す、すごい・・・」

思わず感嘆の声を漏らす。

「こっちの世界では珍しいのは当然か。いくら科学の世界とはいえ、俺たちでもなかなかお目にかかれないんだ」

「さ、そろそろ機関銃の代金を支払ってもらおうか」

コルポに言われ、アスタがギクッとする。

『代金!?これどれだけするんだよ!?そもそもこの取引自体何なんだよ!!俺知らねーし!!』

アスタが咳払いをし、兄弟に向きなおる。

『だがしかし、この機関銃とやらは欲しい!ハッタリかまして、貰うもん貰って逃げてやる!!』

アスタは世間知らずから来る肝の太さ、または図太さと、外に出てからも読見続けていた数々の本から抜粋して窮地に対し一筋の逃げ道を閃いた。

「何を言ってる?代金なら振り込んだはずだが?」

少し低めの声で堂々と言い放たれた言葉に兄弟が「え?」と意外そうな顔をする。

「この前まで連絡を取っていたベットに確かめてみろ。俺は現金でも特に大金を持ち歩くのが嫌いなんでね。銀行を通してのやり取りで了承を得たはずだ」

アスタはメリリーシャの図書館で読んだアンダーグラウンドな物語のセリフを丸々引用した。

「兄貴から聞いてる?」

「いや。確認するか」

アスタが仮面の下でほくそ笑む。

『さっき急遽予定が入ったとか言っていたから、急な連絡には出れないはず!』

兄がケータイで電話を掛ける。

「あ、もしもし兄貴」

『繋がんのかよ!?しかもあっさりと出やがった!!』

思いの外繋がってしまった電話に焦り始める。

『どうしよ!このままこっそり逃げるか!?しかし、相手は2人!しかも会話からして、科学の世界から来た奴らだ!そんな未知数な奴相手に逃げ切れるのか!?』

「なんか振り込んだとか言ってるんだけど、どうする?」

「バカ!出て行く前に言っただろ!昨日の時点で振込みは確認してある!!」

電話から怒鳴り声が聞こえて来る。

「ひゃっ!兄貴耳潰れる!」と耳からケータイを離す。

「お使い内容も聞けないような耳は潰れているのと同じだ!!」

「ごめん、兄貴!取引続けるから切るね!じゃ!」

慌てて切り、一息つくと、アスタに振り返り、表情を引き締める。

「と、言うわけだ。昨日の時点で代金の振込みは確認した。取引は成立だ。あとはこれを持って帰れ」

『た、助かった!!奇跡が起きた!!ありがとう、プルチネッラって人!!』

そこで、兄弟がふと同じことを考えた。

『持って帰れと言ったものの・・・』『どうやって持って帰るんだろう?』

アスタが機関銃に触れて観察する。

『このチビが?』『この細腕で?』

兄弟がアスタを観察する間、アスタはアスタで機関銃の持ち運び方に悩んでいた。

『どうしようか・・・。こんなデカくて重いもの、持ち運べるわけがない。第一、持ち運べても目立つ。最悪、本物のプルチネッラ?って奴に途中で出会って奪われるかもしれない・・・』

アスタがチラリと兄弟を見る。

『あ、見た!』『俺らを見た!持ち運び方法を見られたくないのか?逆に気になる!!』

兄弟がアスタの前に回り、近くで観察する。

まさかの行動にアスタもビクッと体を硬らせて驚く。

『何だこいつら!?まさか疑い始めたか?取引に来ておきながら、ブツの持ち運び方法も用意して無いこの俺を!!』

アスタがカバンを探る。

『お!何か出てくるぞ!』『何だ?何をする気だ?』

兄弟に見守られながら必死に探した。

『こいつらをまく良いノーティーエッグズ何か無いか!?』

だが何も無かった。

『しまった!ノーティーエッグズを買い足すのを忘れていた!!どうする!?』

しかしどれだけ探れど、何も無い。

あるのは財布とシャロンの魔法の瓶だけ。

瓶を手にし、シャロンとの会話を思い出した。


「アスタ、これあげる!」

「瓶?・・・もしかしてイーストポートで葵の部下達の身包み剥いだやつ入れてた瓶か?」

「そうだよ!これにはシャロンの魔法がかかってるんだ!物を入れると瓶に入るサイズになって収納できるの!便利だから1つあげる!」

シャロンから受け取る。

「へー、ありがとう!これってどれだけ入んの?」

「結構沢山入るよ!そのサイズだと元の重さで馬二頭分くらい入るよ!」

「めっちゃ入るな!」

アスタが目を丸くする。

「何でも詰められんの?」

「生きてる物は詰められないよ!あと、それに入れた物の重さは半分くらいに軽量化するの!それと同じ魔法をカバンにもかけといたよ!」

「助かるわ!さすが!!」と褒めるとシャロンは鼻高々と自慢気に胸を張った。


『馬二頭分・・・こいつくらいなら入るはず!!』

蓋を開け瓶の口を機関銃に当てた。

兄弟が唖然と口を開けながら見守る中、どんどん機関銃を瓶が吸っていく。

「すげー・・・これが魔法か」

「科学とは全然違うな」

兄弟たちが目を丸くしていた。

全て入れきってからアスタが一呼吸した。

「ふぅ・・・それじゃあ、取引はこれで」

瓶をカバンに入れる。

4分の1の重さになったとは言え、カバンが明らかに垂れ下がるので手で頑張って持ち上げた。

去るアスタの背中を兄弟は見送る。

すると、電話が鳴った。

「チェルヴェッロ、取引は終わったか?」

「今終わったよ。それにしても魔法ってすげーよな。牛乳瓶1つであんなデカイ物を入れていきやがったよ」

「・・・牛乳瓶でか。紙じゃ無かったのか?」

「あぁ、そうだよ。瓶だった」

「わかった、ご苦労。ゆっくり戻って来い」

チェルヴェッロが電話を切る。

「さ、仕事も終わったことだし」

「遊びに行こうか」

兄弟はサングラスを外して飛び跳ねた。


アスタは急いでホテルに戻った。

「あいつら機関銃って言ってたな!きっと科学の世界の武器なんだろうな。そして、あいつらは確実に闇組織の人間だ!頭はかなり悪そうだったけど・・・」

相変わらず機関銃の重みで、腰に巻いたカバンが垂れ下がる。

「重さが半分の半分になるとはいえ、流石に重いぞ!さっさと帰ろう!ホテルまで行けば安全だ!」

汗だくになりながらホテルに着いた。

自分の部屋の前までやっとの思いで辿り着く。

「あら、アスタ!すごい汗ね」

「アスタその格好!お店で見てたブラックサレナのだ!」

シャロンがアスタを指差し、キャメリアは腕組みをして横目で見る。

「あれ?お祭が面倒だって言ってたのは、どこの誰だっけ?」

「ま、祭は面倒でも、チョコのは格好良かったんだよ!いいだろ!!」

みるみる赤くなるアスタ。

「いつまでその格好してんのよ?ホテル内までそんな格好でうろついて浮かれすぎよ!早く脱げば?」

「うるせぇな!今脱ぐよ!」

アスタが手を放してフードを外していると、カバンごとズボンがずり落ちた。

シャロンは真っ赤になって「きゃー!」と悲鳴を上げ、キャメリアは「汚いもん見せんじゃないわよ!!」とアスタを叩いた。


そして、本物の取引相手のプルチネッラはというと、約束の木の下でクッキーを箱買して夜まで食べ続けていた。

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