葵がいっぱい
きしめんが4人を探して歩いていると、葵が来た。
「あれ?きしめんか?」
「葵!!」
きしめんが驚いた表情を見せる。
「何してるんだ?こんな所で?召集があっただろ?」
「あ、いや・・・ちょっと野暮用を済ませてからな!」
きしめんの返答に葵がしかめる。
「野暮用?魔王様の召集は野暮用以下なんだな」
「何だと!?」
怒るきしめんに両手を出して「まあまあ」と落ち着かせる。
「嘘だよ。お前のことだ。のっぴきならない事情があるんだな?」
きしめんが堪えると、「ところで・・・」と続けた。
「何でそんなに服が汚れてるんだ?まるで誰かと戦ってるみたいだな」
きしめんが慌てて砂埃を払う。
「べ、別に!!ちょっと転んだだけだし!!」
顔を赤くしてそっぽを向く。
『ぷー!!結構可愛いヤツだな!!』
ニヤニヤしながら葵に変身したアスタが見ている。
「良かったら手を貸そうか?お前がここまで手こずる相手だ。相当の者だろ?」
「え?」
さっきのアスタ達が葵に無残にやられる様を思い出す。
『もし、ここであいつらだと葵にバレたら・・・こいつより格下確定!!』
「いや、大丈夫だ!!」
「そうか。ま、いつでも頼ってくれ」
肩を軽く叩いてアスタが去った。
アスタがポケットからミツバチの形をしたバッチを出す。
ノーティーエッグズ【おはなしバッチ】
このバッチを軽く握って話しかけると、同じバッチを付けてる人とお話しができるよ!
スパイごっこにうってつけ!!
「こちらアスタ。きしめんとの接触は順調だ!よろしくどうぞ!」
「うぃ!」と3人から返ってきた。
『さっき俺らが散々葵にやられてたからな!葵にボコられた奴ら相手に葵自身の手を借りるのはプライドが許さんのだろう!そのちんけなプライド煽りに煽ってやるよ!!』
アスタはまるで悪役がしてそうな笑い方をしていた。
「何が何でもあいつらを探してやる!!」
きしめんは煽られた怒りのまま4人を探す。
すると前からシャロンとチョコが飛んできた。
シャロンとチョコが花弁を押して元の姿に戻り、吹き飛ばされたように飛び出し、キャメリアのツタをクッションにして受け止める。
「うわぁ!!」
その後ろから葵に化けたキャメリアがゆっくりと現れる。
「おいおい、お前ら。また性懲りもなく俺に盾つくのか?」
「ち、違うよ!!」
「葵さんに変な事しようとしたんじゃないよ!!今逃げてんの!!」
「誰から・・・逃げてるって?」と意地悪く聞くと2人が唖然と見守るきしめんを見て逃げた。
「うわぁぁあ!!」
キャメリアが今気づいたフリをする。
「あれ?きしめんか?また会ったな!さっきからあいつらがちょこまかとしててな。それで、お前の方はいけそうか?」
「あ、ああ。大丈夫だ・・・」
キャメリアが近寄る。
「遠慮せず、いつでも言えよ。手伝うからさ」
そう耳元で耳打ちして去る。
きしめんは悔しそうに見送った。
「こちらキャメリア。きしめんと二度目のコンタクト成功!よろしくどうぞ!」
シャロンとチョコは去ってから花弁を押して葵の姿に戻る。
この2人が接触を試みたのは魔王軍に恨みを持つきしめんの下敷きになったさっきの男だった。
「いた!あいつだ!」
「まだ生きてる!!」
チョコが言うとシャロンが指した。
シャロンが陰に隠れ、チョコ扮する葵が男を起こしに行った。
「おい、大丈夫か?」
「ん、んん〜・・・は!」『あ、葵!?』
目を覚ました男はつい口元を押さえた。
『まずい!こんなふらつく中、別の四天王と出くわすとは!!』
男はふらつきながら「大丈夫です・・・ちょっと転けただけなので・・・」と歩いていく。
すると、待ち伏せしていたシャロンがぶつかりに行く。
「おっと、大丈夫かい?」
「すいませ・・・!?」
男は2人目の葵に目を疑った。
「どうした?俺に何か付いてるか?」「頭を打ったんだな。安静にしないと」
視界が揺れる中2人の葵が次々と話しかけてくる。
「わ、わぁぁぁあ!!!」
男は踵を返して走っていった。
「どうしたんだ?」「待てよ!」
2人は目を合わせてニヤリと笑った。
そしておはなしバッチで報告する。
「こちらシャロンとチョコ!」
「例の男に接触成功!」
2人で声を揃えて「よろしくどうぞ!!」と言った。
アスタがノーティーエッグズ【チートかくれんぼ】を見る。
「きしめんより、あの輩の方が近いな。こっちから行くか」
地図を内ポケットにしまう。
「キャメリア!輩を先に片付けよう!よろしくどうぞ!」
「了解!!よろしくどうぞ!」
輩の前に出て声を掛ける。
「ふらついてるけど大丈夫?」「頭押さえてるけど頭痛いの?」「どこ行くんだ?」「また転けるぞ」
腰を抜かして転けた時、ついに4人の葵に囲まれた。
「おい、どうした?」「もうかけっこ終わり?」「まだまだ走れるだろ?」「頭が痛いんだろ?薬いる?」
男は混乱して発狂しながら走り出した。
4人はニヤリと笑い路地にそれぞれ散った。
次はきしめんの前にチョコ扮する葵が来た。
「よぉ、きしめん!用事は済んだか?」
「ま、まだだ!!」
「いつでも手伝うよ!」と去る背中に言うと「黙れ!」と怒鳴られた。
また進むとシャロンの葵が現れる。
「また会ったな、きしめん!」
きしめんが疑問を残しつつ黙って過ぎ去る。
曲がった先にキャメリアの葵がいた。
「きしめん!どうした?そんなにうろうろして?散歩か?」
「葵!?どうなってやがる!?」
戻って確認するが誰もいない。
「ん?どうした?何かあるのか?」
「いや!気のせいだった!!」
葵を避けて通り過ぎた。
「本当に大丈夫だから!何も心配とかいらないから!!」と逃げるように足早に去る。
「本当に心配はいらないんだな?」
アスタの葵が逃げた先にいた。
「ふぁ!?」
思わず変な声が出たし、尻餅もついた。
「ど、ど・・・どうなってるんだ!?どこに行っても葵がいるだと!?お前は一体何人いるんだ!?」
「何人って、俺は1人さ!何を言ってるんだ?」
アスタが手を差し出す。
「急に何を言ってる?尻餅までついて、まったく。ほら、手を貸すから」
「す、すまねぇ・・・」『そうか。そうだよな。葵は隠密部隊。こんなのは得意芸の一つ・・・なのか?』
混乱気味の謎理論で自分を納得させたきしめんは立って背を向け、深呼吸をした。
『でも何でわざわざ俺にそんな隠密芸を披露するんだ?』
その後振り返り「取り乱して悪かったな、葵」と呼ぶと葵が2人になっていた。
思わず目を見開く。
『あ、あれ?葵が・・・2人?』
「どうした?呼吸が乱れているぞ?」と2人がハモって言う。
もう一度葵たち?に背を向けて呼吸を整える。
『そ、そんなはずないだろ?葵は1人のはずだ!そうか!双子だ!俺らには言ってなかった双子の兄弟が今、奇跡的にハモっただけだ!!』
「悪いな!今ハモった奇跡に驚いただけ・・・はぁ!?」
なんと葵が3人になっていた。
「どうした?きしめん?今日は体調不良か?」
ノーティーエッグズ【キセキのハモり】
この粒を飲むと例え何人でも会話でハモることができるよ!
長台詞をハモると気持ちいいよね!!
3人が口を揃えて言ってくるのに更に混乱する。
「・・・かもしれない。ちょっと疲れてんのかな?」
さすがにきしめんが冷や汗を垂らす。
「きしめん大丈夫?」
「あ!こら!お前はまだだろ!」
更に奥からもう1人来た。
「あ・・・あ・・・うわぁぁぁあ!!!」
ついに我慢できなくなりその場から逃げ出した。
「あれ?きしめん?」「どこ行くんだよ?」「俺もついて行くよ!」「待って!きしめん!!」
きしめんは走った。
脇目も振らずにただひたすら走った。
「うわ!!」
「わ!!」
小路が交差した場所で男とぶつかる。
お互い尻餅をついて見合わせ、「わぁぁぁあ!!!」と叫び声を響かせる。
そして十字路の全ての道から葵がやって来た。
「やぁ、きしめん!やっぱり足が速いな!」「あれ?さっきの輩もいるぞ」「きしめんが捕まえたの?」「やるじゃないか!流石我が同僚!」
咄嗟に2人は抱き合って4人の葵に口々に褒められるのを怯えていた。
「わぁぁぁあ!!!」
これが最後の断末魔だった。
疲弊したきしめんが召集場所に現れた。
「きしめん、どうしたの?」
「えらく疲れてるわね」
見た事ないほど疲弊するきしめんに、流石にパルフェとそうめんが心配する。
「さっきえらい目に遭ってな・・・。実は・・・」
そこに本物の葵が現れた。
「皆、遅れてすまない!幹部会議を始めよう!」
姿を見た途端、きしめんの血の気が引く。
「うわぁぁぁあ!!」
パニックに陥ったきしめんが冷静さを取り戻すことはなく、会議は無くなったという。
この後、アスタ達は本日二度目の電撃を食らう事となった。




