ネスリングの威力
好奇心とこれまでの慢心により、きしめんと葵の部下の後をつけることにしたアスタ、チョコ、ロマの3人。
さっきの隊員2人が路地を歩いてゆく。
「何人だ?」
「3人だな」
追跡者に気づかれないよう、振り返らずに小声で話していた。
「応援は出した。周辺の奴らがすぐに来るだろう」
「奴らは気づかれてないつもりだろうな。同じペースで付いてきている。足音からも浮ついた感じが伝わる」
「どうせガキの根性試しだろ」
「何だろうが、我々魔王軍の後をつけるということは、排除対象になるということだ」
隊員2人が角を曲がる。
アスタ達も後から追いかけて曲がったら、仁王立ちで待ち構えていた。
「わ!」
「まずい!」
戻ろうと振り返ると、別の隊員がいた。
追跡していた2人がアスタを指差す。
「またお前か!!」
「その隣はブラックサレナじゃないか?」
チョコが汗をダラダラと流して慌て始めた。
「や、やばいよ!どうする!?」
「チョコがテンパるな!お前が一番戦闘能力高いんだぞ!!」
隊員に詰め寄られ、背中を合わせる3人は抵抗もせずに捕まった。
「なんだ、拍子抜けだな」
「コロシアムの英雄がいたから、もっと楽しめると思ったのに」
手を背中で縛られた3人が魔王軍の隊員達に囲まれて俯き、チョコは反省したように落ち込み、ロマは悔しそうに呟いた。
「完全に油断したね」
「まさか気づかれてたなんて・・・」
「お前らの浮き足立った追跡なんて、お見通しだ」
「魔王軍を侮るな」
隊員達が3人の処遇について話し合う。
「こいつらどうする?」
「きしめんさんに渡せばきっと喜ぶよ」
「そうだな。すごく恨んでたし」
「さし出そうか!」
ロマがその言葉に顔を上げた。
「僕達を四天王に差し出す気?」
「勿論。功績を上げて上司を喜ばせるのも部下の務めだ」
魔王軍に向かって不敵に笑う。
「そっか。それは残念だね、喜ばせてあげられなくて!!」
3人の縄が【高速縄取り虫】で一斉に解けた。
「何!?」
すかさずロマが地面に暗黒玉を投げつける。
「黒煙!?」
「煙幕か!?」
黒煙が広がる中ロマの怪しい笑いが浮かび、消えていく。
「あいつらを捕まえろ!逃すな!!」
次の瞬間、一瞬にして玉に光が吸い込まれ、真っ暗闇に包まれた。
ネスリング【暗黒玉】
割ると黒煙が著しく広がり、その後急速に玉が辺りの光を吸収して、一定時間闇に包まれる。
煙幕を改造したいたロマオリジナル。
「な、何だ!?」
「うわぁ!!」
隊員達が3人に押されて倒れる。
「いてて・・・」と起き上がると、背後に気配を感じ振り返った。
「誰だ!?」
だが、暗闇で何も見えない。
まだ人の気配があるので振り返るが全く見えない。
すると、背後から突然殴られた。
「この!」
「誰だ!」
「近くにいるぞ!!」
仲間達の声がするかと思えば、集団で殴られ始めた。
「ここだ!」
「見つけたぞ!」
「こいつ!!」
「や、やめろ!俺だ!!」
叫びながら防御をするが止まない。
暗黒玉の効果が切れ、闇が晴れると3人が仲間を殴っていたことに気づいた。
「は!あいつらは!?」
「どうなってるんだ!?誰もいない!」
辺りを見渡すと路地には自分達しかいなかった。
「悪い・・・起きれるか?」
仲間の肩を借りて起こしてもらう。
「何だこれ?」
背中についたシールを仲間が剥がした。
ネスリング【後ろの正面だぁれ?】
人の気配を消す忍シールをロマが改造し、貼った所から人の気配を感じるようにした。
「気配はこいつからだったのか!」
「バカにしやがって!!」とシールを投げ捨てて立ち上がった。
「周辺の仲間に連絡だ!あいつらを叩きのめせ!!」
アスタ達が逃げながら振り返る。
「追いかけてこないね!」
「ロマのノーティーエッグズ・・・ネスリング!すごい効果的だな!」
「まあね!・・・ぅわ!!」
調子に乗っていると、目の前からさっきとは別の魔王軍達が出てきた。
「いたぞ!」
「こいつらだ!!」
「やば!」
「こっち!!」
ロマについて2人が走っていく。
魔王軍たちはまた他の仲間に連絡をして3人を追いかけた。
アスタ達が路地を曲がり、すぐにある角も更に曲がる。
魔王軍達も見失わないように追いかけて勢いよく曲がると、ジェル状の何かにぶつかり、中に入った。
「むぐぅ・・・」
「何だこれ!?」
すると、続々と仲間が入ってくる。
「うわぁ!」
「何なんだ?」
「出られないぞ!!」
反対側から挟み撃ちで来た仲間がその光景を見て驚いていた。
ネスリング【溺愛な身代わり様】
あらゆる攻撃から一回だけ身を包んで守ってくれる、愛にあふれた過保護な身代わり様をロマが改造したもの。
外から一定のダメージを与えないと絶対に出してくれない、愛という名の牢獄に閉じ込められる。
人数制限も1人から5人へアップ!
半透明な物体に仲間が囚われている。
「内側からの攻撃が通じない!!」
仲間の救出の為、応援に集まった隊員達が足を止められた。
「今のうちに行こう!」
ロマ達3人が走り出す。
かなりの時間も人員も割いて、やっとダメージ数が溜まり、身代わり様が爆ぜた。
「うわぁ!!」
5人以外にも、全員がジェル状のもので覆われる。
【溺愛な身代わり様】は爆ぜた後、愛故の別れの涙が君たちを包む二重トラップ!
「畜生!!」と身代わり様の涙でベトベトの魔王軍が叫んだ。
アスタ達が走るが、すぐに後ろからまた別の魔王軍が追いかけてきた。
「いたぞ!」
「こっちだ!!」
ロマがロケット弾を頭上後方に投げる。
魔王軍の1人が上空で攻撃をすると、爆破した。
「うわぁ!!」
その風圧でアスタ達は前方へ、魔王軍は後方へ吹き飛んだ。
「大丈夫か!?」
「今の爆発は!?」
爆発音を聞いて周辺から魔王軍が集まる。
「いててて・・・」
「みんな大丈夫?」
「早く行こう!!」
ロマ達がまた立ち上がって走り出した。
メイン通りを外れた、人気の無い通りに出てきた。
何もない場所に、二階建ての小さな廃病院が立っていて、周囲には針金で簡易的な柵がされていた。
「どうしよう!この辺隠れる場所無いよ!」
「どうする?戻る?」
慌てるチョコとロマに対して、アスタだけは廃病院を指した。
「いや、戻るのは危険だ!ここに入ろう!!」
3人が柵を越えて中に入る。
「正面の扉は鎖で巻かれてるよ!」
「回りこもう!」
周囲を回ると、トイレの窓が開いていたのでそこから忍び込んだ。
中を物色していると、ロマが正面玄関から外に魔王軍が迫ってきているのを確認した。
「アスタ!チョコ!あいつらが来た!!」
「もう!?早くない!?」
チョコの背中にボタンのような何かが付いているのに気づき、アスタが取り上げる。
「俺たちは追跡されていた!!」
「そんな!」
「ど、どうする?ここを出る?」
アスタが字が消えかかっている看板を見て口角を上げる。
「いや、ここであいつらをまとめて潰そう!」
アスタの提案にチョコとロマが固唾を飲んだ。




