ネスリング
パーティとチョコが朝から大使館に遊びに来ていた。
「見ろよ、アスタとチョコ!僕が改造したネスリング【鋼鉄こだま】!!強度を上げたから、プロ選手が投げても壊れないんだ!」
そう自慢気に見せびらかすロマにアスタとチョコが体を乗り出す。
「何それ!」
「ネスリングって?」
「ノーティーエッグズの改造したやつだよ!!」
ロマの回答に2人が目を輝かせる。
「ノーティーエッグズって改造できるの!?」
「知らないの?ノーティーエッグズは子どもが好奇心で自由に改造できるように、ある程度簡単な作りになってるんだよ!」
自慢気なロマに大使達が口を出す。
「こいつはよく改造して、強化してるんだよ」
「そうそう!沢山のオリジナルネスリングがあるんだ!卵から孵化したけど、まだおもちゃ使ってる巣立ちしてない雛でネスリング!」
「雛とは言え、それで複雑ないたずらもしてくるから困りもんだけどね・・・」
まだ笑顔を見せているマタリやリントンに対して、パトロックだけため息を吐いていた。
きっと1番の餌食になっているのだろう。
「へー、すげーな!」
「ノーティーエッグズって妖精の魔法を使ってるんだよね?もしかしたらシャロンもそういうの、得意なんじゃない?」
チョコがシャロンを見るとドヤ顔で人差し指を揺らしていた。
「チッチッチ!そんなの頼らなくても、シャロンには魔法があるもん!」
「あれ?シャロンもノーティーエッグズ使ってなかったっけ?」
キャメリアがいたずらっぽく笑いながら言うと、尻すぼみに照れながら言い返す。
「た、たまには使うよ!面白いもん・・・」
「ふん!氷の魔法しかないくせに!」
ロマの言葉に睨み返して怒った。
「む!そんな事ないもん!魔導師には基礎魔法があるもん!!」
「基礎魔法?」とチョコが聞き返す。
「そう!他の人達は個々の能力分しか妖精から魔法を借りられないけど、シャロン達魔導師はそれとは別に基礎魔法が使えるの!」
シャロンの話にみんなが注目した。
「基礎魔法ってのは、物を浮かせたり、多少の怪我なら回復もできるの!あとは物に魔法をかけて能力を持たせたり!」
キャメリアとアスタが思い出したように言う。
「それって、イーストポートでの瓶ね!」
「アラビアータへの瞬間移動もか?」
「うん!あれも基礎魔法だよ!基礎魔法は訓練すれば凄く便利なんだから!」
得意気なシャロンにチョコが感心する。
「なんだかシャロンの話を聞いていると、基礎魔法って万能な感じがするね!」
「うーん、残念ながらそうでもないんだ・・・。やっぱり根底にあるのは“基礎”だから、どれだけ訓練しても出来る事は“それなり”なの。条件とかもあるし」
それを聞いたロマがふんぞり返る。
「結局その程度だろ?ノーティーエッグズなんて、やろうと思えばどこまででも改造できるんだ!それに誰だって使える!!どうだ?こっちのがロマンあるだろ、アスタ、チョコ!!」
ロマの言葉でアスタもチョコもニヤニヤと口元を緩くして笑う。
「まぁ〜、シャロンの魔法には助けられたし、便利っちゃ便利だけど・・・」
「ロマンの面だと、ノーティーエッグズの方が魅力的かな!!」
仲間の裏切りに膨れるシャロンをキャメリアがなだめる。
「アスタ、チョコ!行こ!!ノーティーエッグズで一旗揚げてやろう!!」
「ヒャッホーウ!!」「イェーイ!!」と叫びながら3人が出て行った。
「シャロンの魔法で助けたこともあるのに!みんな魔王軍にやられたらいいんだ!!」
「負け犬の遠吠えだね!!」と遠くからロマの声が聞こえた。
リントンが悔しそうに下唇を噛むシャロンを慰める。
「まあまあ、シャロン。男の子はみんな女の子と比べるとちょっとお子ちゃまなんだ」
「ロマン求めるあたりが相当物語ってるよな」
「だけどあの3人、あまり変な事しないといいけど・・・」
パトロックが心配そうに玄関の方向を見つめていた。
3人がノーティーエッグズを求めて街を歩く。
「あそこのお菓子屋さん、ノーティーエッグズが当たるクジがあるんだ!運が良ければ高級なのも当たるんだよ!」
ロマが指差し走る。
「へぇー、そうなんだ!」
「行こ行こ!」
店に入って店員に声をかける。
「クジ引かせて!」
「どうぞ」
3人がお金を払って穴の開いた箱に手を突っ込みクジを引く。
「ちぇ。6等だ」
「僕も」
アスタとチョコは同じ6等を引いた。
「はい、6等の景品」
2人の手にノーティーエッグズが置かれた。
「これは?」とアスタが手の上にある小さい厳かな人形を観察する。
高さは親指くらいだが、まるで公爵か何かをモチーフにしたような立派な口髭とマントをまとった姿をしている。
「【反卿】だよ!」
「どうやって使うの?」
アスタがロマに【反卿】を見せる。
「音に反応して、別の音階で奏でてくれるイカしたヤツだよ!」
「へぇー!」と感心した2人の声を拾って反卿が一オクターブ高い音と一オクターブ低い音で「へぇー!」と奏でた。
「ロマは?」
チョコに訊ねられ「僕は・・・」とクジを開く。
「4等だ!」
「はい、4等の【増強粉】」
ロマの手に粉の袋が置かれた。
「それは?」
「これをかけると物が大きく、強くなるんだ!」
「4等っぽい。それって便利なの?」
チョコが苦笑いする。
「僕はこれでノーティーエッグズを巨大化させて、派手ないたずらに使うよ!」
「モノは使いようだな!」
ノーティーエッグズを持って3人で店を出た。
「ねえ、ロマ!改造したやつって、他にどんなのがあるの?」
「これだよ!」
チョコに聞かれて得意気にロマが手のひらの虫を見せつけた。
「何それ!」「虫?」と興味津々に覗く。
「これは、高速縄取り虫!尺取虫の様に縄を伝って、一周したら縄の結び目が外れるでおなじみ縄取り虫を自己記録更新の5倍速に成功したんだ!」
2人が「すごーい!!」と目を輝かせた。
「他には他には!?」
ロマがロケット弾を出す。
「じゃーん!ロケット弾!!ふふん!これも僕が改造した、ロケット弾スーパーだ!」
「何それ!?」とまた声を揃えて聞く。
「いつものロケット弾の爆薬を詰めれるだけ詰めた!」
「それもう爆弾だろ!」
「でも、すごい!」
もうアスタとチョコにとっては何が来ても感動の対象なのであった。
ロマが自慢の改造したノーティーエッグズことネスリングを見せびらかしていると、通り過ぎた路地から声が聞こえてきた。
ロマが2人を引き止めて戻る。
「何?」
「あれ!」と指したロマの指のさらに先を見ると魔王軍の隊員2人がいた。
「魔王軍だ!誰の部下だろう?」
「しっ!何か話してる!」
3人が耳を澄ませる。
「そっちもダメだったか・・・」
「全然。・・・俺さ、もうこの街にいないんじゃないかと思うんだよ」
その言葉を聞いた相方が目を丸くする。
「どういうことだよ?」
「だって、魔王軍の四天王に手を出したんだぞ!そんなの、目を付けられるに決まってるだろ!しかも、一番戦闘能力の高いきしめんさんだぞ?最悪、本人が直接復讐に来るかもしれないだろ!それに時間も結構経ったし・・・」
それを聞き相手も頷く。
「一理あるな。でも、それはそれとして、出て行ったっていう証拠を入手しないと・・・」
「そうなんだよなぁ・・・」
2人してため息を吐く。
「だけどさ、お前の所の葵様も優しいよな」
笑いながらきしめんの部下が言った。
「何が?」
「だって、仕事とは言え普段あんなに仲の悪いウチのきしめんさんに危害を加えた奴を探す為に部下を出してくれるなんて!しかも、遠征に来たほとんどの部下だぞ!!」
それを聞いて葵の部下が誇らしそうにする。
「当たり前だ!葵様が仲間を放っておくわけないだろ!それに、なんやかんやあの2人は仲が良いからな。メリリーシャでだって、他の四天王よりも割と2人で協力し合っていること多いし」
「そうだな。俺たち部下同士も仲良くやってるしな!」
「よし!我々の上司の為に!」
「今日も頑張ろう!」
2人が歩いて行った。
それを陰から見た3人。
「葵ときしめんの部下がほぼ総出で人を探しているみたいだね」
「誰を探してるんだろう?」
ロマとチョコが考察する中、アスタは黙って汗を大量にかき、焦りながら考えていた。
『まさか俺じゃないだろうな?コロシアムの時か?それともセイレーンの涙?・・・って、結構色々やってるな!!だからって軍総出で探さなくてもよくないか?』
そんなことを考えていると、チョコが声をかけてきた。
「まさか僕らじゃないよね、アスタ?」
「ふぁ!?ババババ、バカ言うなし!!」
「すごい慌てよう。何したのさ?」
ロマに聞かれてチョコが答える。
「実はこの前、僕とアスタで四天王のきしめんと葵を撃退したんだ。ほとんどアスタがやったけどね」
「おい、こら!責任転嫁する気か!?言っとくけど、セイレーンの涙の時きしめんの頭にレンガ落としたのはチョコだぞ!!」
「アスタなんて、孤島にいる葵を海賊達に集中放火させただろ!それに、シャロンから聞いたよ!きしめんを井戸に沈めたんでしょ?」
「シャロンの奴!言いやがったな!!」
「この前もシャルロットとシャロンの入れ替わりで四天王達を酷い目に合わせてたじゃないか!」
「あれはチョコだって一緒にやっただろ!!しかもあの後ちゃんと奴らに罰も受けたってのに!!」
2人が睨み合っていると、ロマが興奮しながら割って入る。
「すごいじゃないか!!あの四天王2人を!しかも1人はあのきしめんだろ!!」
「え?そ、そう?」「それほどでも!」と2人が照れながら言ったかと思うと、再び睨み合った。
「俺だろ!」
「違うよ!僕!」
「俺!」「僕!」と言い合う。
「そんなことより!あいつら追いかけてみない?」
「そんなことって・・・」
ロマが2人の間に入り、いたずらっ子のように笑う。
「きしめんも葵も倒せたんだろ?その部下なんて怖くないさ!それに・・・」
ロマが鋼鉄こだまを取り出した。
「僕のネスリングも試したいしね!」
2人の目が輝く。
「いいね!」
「楽しそう!」
3人は魔王軍の隊員を追いかけて行った。




