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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
メリリーシャの街
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ヒーローの在り方

首を絞められ「ぐぁ!!」と嗚咽が漏れる。

荊姫いばらひめが姿を現し、苦しむきしめんに顔を近づけた。

「パルフェのサポートは厄介だけど、あなたは遅いわね。噂通りなら葵は私のスピードについてこれたんじゃない?」

葵と聞き意地になってハンマーを振り燃やし切る。

すぐにきしめんを放し、荊に点いた火を吐息で消す。

「葵、葵、葵・・・どいつもこいつも!!」

ハンマーを握り直して辺りかまわず振り回し、炎を出す。

荊が燃え広がり、室内の温度が急上昇した。

「スピードで敵わないから熱で殺すことにしたよ!!どっちが先に根を上げるかサウナ対決といこうや!!」

きしめんが汗を垂らしながら更に荊を燃やして回る。

ついに荊姫が熱のダメージを受けて膝をついた。

「パルフェ!できるだけ早く離れろ!今館を熱してる!!その内壁も焼ける!!」

「うぐっ・・・了解!おかげで荊の締め付けが弱まったわ!」

パルフェは壁から伝わった熱で火傷を負いながらも荊をナイフで切って館から離れた。

きしめんと対峙する荊姫がかなりの量の汗を垂らし、頬を火照らす。

「へへへっ!そろそろ限界か?」と顎から垂れる汗を拭いて聞くと荊姫は口角を上げた。

「限界なのはあなたなんじゃない?」

「何を馬鹿げたことを・・・」

言ってる最中に周りを見て気がついた。

「あれ?火が・・・火力が落ちてるだと!?」

「当たり前じゃない。密室でこんなに火を使えば酸素なんてあっという間よ!!」

両手を挙げてきしめんの驚いた顔を見て笑う。

「密室?こんな廃墟に穴が無いわけ無いだろ!!」

そう言って見渡すと荊で全て塞がれていた。

さらに天井の穴までご丁寧に埋められている。

次第に呼吸が苦しくなり、ハンマーの柄を杖の様に持って体を預け、肩で大きく呼吸をして少ない酸素を必死に取り入れようとする。

「あらあら。サウナ対決はどうしたの?先に酸欠で死にそうね」

言い返す力も無く黙って相手を睨み返す。

「怖い怖い。でも喋る気力さえ無いのなら時期に死ぬわね」

次第に、きしめんも意識が朦朧もうろうとし、足元に視線が落ちた。

荊姫は荊に包まれ身を天井に隠す。

「さぁ、そろそろ終わりね」

不敵に笑うときしめんの足元に静かに荊を這わせた。

そして背後から心臓目掛けてとげを伸ばす。

「死ね!!」

きしめんは少し左に避けて肩に突き刺さった。

「あら・・・ギリギリで避けたのね。さすがは四天王。認めてあげるわ」

するときしめんは左肩から鋭く伸びる棘を右手で掴んだ。

そして歯を食いしばって精一杯力む。

口から漏れるように出た呼吸から炎が溢れる。

その異変に気づき、すぐにきしめんの肩から棘を抜こうとしたが握る力が強くて抜けない。

「抜けない!!まだこんな力が!?」

きしめんは棘に噛みついて炎を吐き出した。

さっきまで酸欠で炎が少なくなっていたというのに、きしめんの大きな躯体くたいを炎が激しくまとう。

「まさか!!!」

叫ぶや否や荊姫は炎に包まれた。

断末魔を上げながら天井から荊姫が落ちた。


「ハァ・・・ハァ・・・おかしいと思ったんだよ。これだけ密閉された中で・・・お前だけ酸欠にならない・・・」

きしめんが天井を見上げたら荊は燃え落ちて開いていた。

「荊で・・・外気を取り入れてたな、お前・・・」

力を振り絞ってハンマーを引きずり壁に近づく。

「燃え尽きろ!!!」

ハンマーを担いで思い切り壁を壊した。

酸素が大量に入り、急激に燃え上がるバックドラフト現象が起きた。

その勢いできしめんは外に転がり出た。

負傷したパルフェが近寄り肩を貸す。

「よくこの爆発で平気ね。ほんと、体力お化け」

パルフェに助けられながら弱々しく立ち上がった。

「どこ見て言ってんだ?満身創痍だよ」

荊姫の館から離れた場所できしめんを座らせる。

「私が核と心臓を回収するわ。あなたの部下に救助要請しましょうか?」

「いや・・・いい。こんな格好悪い所、あいつらに見せれるかよ・・・」

きしめんは横たわり目を瞑る。

「男子ってほんと格好つけね。部下は上に頼られると嬉しいものよ」

「わかってるよ・・・。でもな、ヒーローは絶対的に無敵じゃないといけねーんだよ」

パルフェはため息を吐いた。

「何がヒーローよ。そんな格好で・・・」

「少し寝たら治る。・・・後は頼んだ」

そう言い残すときしめんは眠りについた。

パルフェは背を向けて荊姫に近寄る。

完全に灰となった荊姫の頭だった部分から真っ黒なトカゲが這い出てきた。

それを手で捕まえ、瓶に入れる。

次に胸だった部分をナイフで探ると真っ黒な荊が巻きついた心臓が動いていた。

「禍々しいわね・・・」

魔法を掛けた木製の宝箱に入れて回収する。

そしてきしめんの隣に戻った時、パルフェも一気に疲れが出てきて横になった。

「私も無理・・・能力を使いすぎたかも。救助要請を・・・」

ケータイを見て少し止まる。

「葵にお願いしよ。もし、私の部下からきしめんの部下に話が回ったら悪いし。それに・・・」

きしめんに顔を向ける。

「あなたの教え子だったからかな?私もあなたみたいな部下のヒーローになりたいって思っちゃう・・・」

パルフェは救助要請を葵に送ってから目を瞑った。

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