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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
メリリーシャの街
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願い事

盗賊団のリーダーは願い事を唱えてから、鐘をならした。

しかし、しばらくの間静寂が続いているばかりだ。

「リーダー、何も起きないよ?」

「おっかしーなぁ・・・。ちゃんと願ったはずなのに」

パーティは盗賊団のいる建物に向かっている途中、キャメリアとシャロンが疲れて足を止めた。

「待ってよー!」と息を切らす2人。

「早くしないと鐘鳴らされちゃうだろ!!」

アスタだけが突っ込んでいく。

息を荒げながら2人が顔を上げると空から建物に向かって落ちてゆく隕石が目に入った。

「待って!アスタ!!」とシャロンとキャメリアが大声で制止するも、アスタは止まらない。

「リーダー、なんか音しない?」

「そういえば・・・」

子分の1人が窓から外を見た。

「あのガキ!!取り返しに来ましたぜ!!」

「よーし、お前ら!迎え撃・・・」

リーダーの言葉が終わる前に巨大な音と衝撃と共に建物は跡形も無く消滅した。

薄れゆく意識の中、リーダーが見たものは吹き飛ばされる子分達と、ゆっくりと消えてゆく鐘であった。

そして、アスタは衝撃波で吹き飛ばされ、ボロ雑巾の様になりキャメリアとシャロンの足元へと転がった。

「アスタ大丈夫?」と聞くシャロンに「とりあえず回復してあげたら?」とキャメリアが言った。


「ははは!どうだい?見たか!今回の災いの力すごかったろ?」

「とてもよかったよ!最近人がたくさん来た上に憎しみの感情も増えていたからね!いいなぁ、君は思う存分発揮できて!こっちはまだ願われてないんだ」

白い妖精がお腹を抱えて笑うが、黒い妖精は羨ましそうに見る。

「あ、黒い鐘も拾われたよ!」

「おっと!行ってくるよ!」

そう言って黒い妖精は消えていった。


約束通り、葵が再び盗賊団を夕方に訪問すると、建物が跡形もなく更地と化していた。

「な、何事だ!?」と叫ぶ。

すると、瓦礫からリーダーが這い出てきた。

「おい、大丈夫か!?」

「うげ!葵!!・・・様」

葵が近寄る。

「一体何があった!?」

「あー、その・・・」

目線をそらす先にさっきからやたらと片付けをしたがるまじめな子分がいた。

葵に再び目線を戻すと「葵様に言われた通りお掃除をしておりました!!」とキメ顔で敬礼しながら言い放つ。

「掃除をしろとは言ったが・・・建物ごと掃除する奴があるかーーー!!!」

葵の珍しい怒鳴り声は広いメリリーシャの街に鳴り響いた。


「あーあ、黒い鐘は見つからなかったな・・・」

シスターが街をトボトボと項垂れて歩いていると葵の怒鳴り声が微かに轟いていた。

シスターが目をランランとさせ、耳に手を当て集音する。

「・・・は!なんて美しい音なの!?まるで賛美歌のよう!!」

シスターは手を組んで空に祈りだした。

「今日はなんて良い日なんでしょう!!鐘は見つからなかったけど、また次があるわ!!」

そしてスキップしながら帰っていった。


そして、肝心の黒い鐘を見つけたのは葵の部下だった。

夕方頃にベンチの上にある黒い鐘を見つけたのだ。

「あった!!」

「黒い鐘!!これだ!!」

自室でうなだれる葵のドアがノックされる。

葵が出ると部下の2人がいた。

「葵様!こちらをどうぞ!!」

「これは?」

差し出された鐘を手に取り観察する。

「メリリーシャの言い伝えで数ヶ月に一度妖精が願い事を叶えてくれるという鐘です!」

「最近、葵様が疲れてらっしゃるようなので、何か我々もお役に立ちたいのです!」

部下からの思いやりを聞き、葵の顔が一気に晴れた。

「ありがとう!すごく嬉しいよ!」

そして、早速目の前で鳴らす。

「俺の部下達に美味しい料理を食べさせたい」

そう言うと部下達は困ったように止めた。

「そんな!葵様!いけません!!」

「我々ではなく葵様ご自身でお使い下さい!!」

「俺は皆と一緒に食べられるなら、どんな料理でも美味しく食べられるし、それが俺のストレス解消にもなるよ!」

「・・・葵様!!」と目を潤ませる。

するとすぐに給仕が来た。

「葵様、日頃からのご贔屓ひいきありがとうございます。本日、団体の最上級のコース料理がキャンセルとなりましたので、皆様と共にいかがでしょうか?」

「ぜひ、頼むよ!!」と即答する。

「ありがとうございます。大部屋を一つ貸し切らせて頂きます!」

給仕が去った後、大部屋に向かった。


「今回も幸せは良いお願い事だね!」

「人の為に使えるのは良い事だね!・・・でも、この人の部下って結構多そうだけど、どれだろ?」

黒い妖精が悩む。

「わからないけど、一緒によくいるから匂いが似てる人じゃないかな?」

「なるほどね!メリリーシャで似てる匂いの人を集めようか!」

妖精は空から眺めて鐘を鳴らした。


葵の周りには大勢の部下に混じり、何故かパーティもいた。

「悪いな、葵!」

「私達まで御馳走になっちゃって悪いわね!」

「本当、葵さんは悪いね!」

シャロンはバカだった。

「何故お前らまでいる!?あとアスタはなんでボロボロなんだ!?そして、悪いと思うなら食うな!あとシャロンのは意味が違う!!」と、丁寧に一通りツッコむ葵に真っ直ぐ近づいてくる給仕が一言告げた。

「葵様、こちらのコースの料金は宿泊費に計上させて頂きます」

「え?」と呟き思考を巡らせる。

『はっ!確かにサービスとは一言も言ってなかった・・・』と気づいた時にはすでに領収書が切られていた。

アスタは口笛を鳴らす。

「またこいつらぁ〜・・・!!」とイナリは団体の端から出されたご飯をいやしくむさぼるパーティに対し怒っていた。


「あーあ、今回も終わっちゃった!次に街のエネルギーが溜まるまで待たなきゃだね!」

「でも次って・・・日蝕だね」

白い妖精が空を仰ぐ。

「日食なら、ぼくらの出番は無いね」

「皆、日食の時の事を覚えてるといいけど・・・」

クスクスと笑いながら妖精達は夜空へと消えていった。

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