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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
メリリーシャの街
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福音の祝福

シスターが嬉しそうに早朝の朝市を歩いていた。

「シスター、おはよう!」

「あら、シャロン!おはようございます!」

シャロンが声をかけるとシスターはニコニコとご機嫌だった。

「何だか嬉しそうだけど、何かあったの?」

「実は、今日数ヶ月に一度の福音の祝福の日なんです!」

嬉しそうに答えるシスターにシャロンが傾げる。

「福音の祝福?シスターの宗派のイベント的なの?」

「いえいえ!これはメリリーシャに古くから伝わるものなの!妖精から祝福を受けられる日よ!」

シスターの説明を聞いてさらに聞き返す。

「へー、祝福ってどんなの?」

「日の出頃に土地の妖精が魔法を掛けた鐘をこの街のどこかに置いておいてくれるの!それを手にした人は小さな願い事を一つ叶えてもらえるのよ!」

「へー!」と感心する。

「鐘を手にした時は音は鳴らないけど、日没頃になると鳴るようになるの!その音を鳴らした人が祝福を受けられるのよ!宝くじが当たったスラムの子や、不治の病が治った人もいるわ!!」

「すごーい!それってシャロン達みたいなよそ者でもいけるの!?」

シャロンが前のめりで興味津々に尋ねる。

「大丈夫よ!過去には旅商人が祝福を受けた事もあるの!」

「へぇー!!」

それを聞いて一層目を輝かせた。

「だけど気をつけないといけないのは偽物もあるのよ!」

「そんなのあるの?誰かの悪戯とか?」

シャロンが目を丸くする。

「人のする悪戯ならいいんだけど、悪戯好きな妖精のものよ!福音は2人の妖精が作ってて、毎回2つの似たような鐘が置かれるの!一つは幸せを、もう一つは災いをもたらすの!見た目も同じような小さな鐘だけど、白くて淡く光るのと、黒くてはっきり光る2種類があるのよ!・・・って、シャロン!!」

「シスターありがとう!!2人にも言ってくるー!!」

シャロンは最後まで聞かずにシスターを置いて走って行った。

ホテルに行く途中、色々な人の会話が聞こえてくる。

「今日は黒が幸せだって」「白は災い」「前は白が幸せで」「黒が災い!」

「白と黒で災いと幸せ!!」

シャロンが走っていると、まだ眠そうな2人に遭遇した。

「シャロン!」

「あ!いた!!」

一度通り過ぎたが、キャメリアに呼び止められて戻る。

「朝ごはんの時間よ!ホテルに戻りましょう!」

「そんな事より大変だよ!前は今日と違って黒が白で災いが幸せなの!!」

気怠そうに欠伸あくびをするアスタは半分聞き流し、興味なさそうに答えた。

「はぁ?意味わかんねえ。何寝ぼけてんの?」

「アスタには言われたくない!!」

そんな態度のアスタに大きな声を出して怒る。

「シャロン、一体何の話?」

「さっき朝市でシスターから聞いたんだけど、今日数ヶ月に一度の福音の祝福の日なんだって!」

「へぇ、何それ?」

やっとアスタが興味を持った。

「鐘を夕方に鳴らすと小さな幸せの願い事を叶えてくれるんだって!でも妖精は2人いて、もう1人が作る鐘は災いの願い事を叶えてくれるんだって!」

「そんなのあるんだ!気になるわね!」

「たしか、白い鐘が・・・」

さっきまでの道のりで聞いたことを思い出す。

「白い鐘が幸せで、黒い鐘が災いだから気をつけてって!!そのはず!白のが幸せっぽいし!」

「そうか!飯食ったら早速探しに行こうぜ!!」

「おー!!」と全員がノリノリになった。


朝食後パーティが街中を探す。

「何してんだ?」

顔を上げると声の主は葵だった。

「葵さん!おはよう!」

「今ね、小さな幸せを探してるの!」

キャメリアが挨拶をし、シャロンが答える。

「小さな幸せ?まるで学校の宿題か何かだな」

聞き返す葵にシャロンは自信満々に答えた。

「そう!白が黒で災いは幸せで、今日は前とは違う妖精なんだよ!」

「何かのなぞなぞか?」

葵があからさまに戸惑うのを見てパーティがニヤける。

「ま、何でもいいけど、がんばれ」

それだけ言い残すと、すぐの角を曲がって行った。

「ナイス、シャロン!!」

「葵さんみたいな生まれつき恵まれた容姿と高収入、高地位の人には小さな幸せなんて不要よ!」

「えっへん!」とシャロンが威張るがアスタが思いついたように駆け寄る。

「いや、待て!葵!!」

呼び止められて振り返った。

「何だ?」

「シャロンの説明じゃわからなかったろ?実は今日は福音の祝福って言って妖精が街のどこかに鐘を置いてくれるんだ!それを夕方に鳴らすと小さな願い事を叶えてくれるらしい!」

「何でアスタ教えるの?」と聞いていたシャロンは不満そうだ。

「へぇ、そんなのがあるのか!」

「ああ!メリリーシャの伝統らしい!ただし!」

強調してから小声で言う。

「悪戯好きな妖精2人がしてることだ!白と黒の鐘があって、片方が幸せを叶えてくれて、片方は災いを叶えるらしい!しかも毎回どっちの色がどっちを叶えるか違うらしいんだ!今年は黒が幸せらしいぞ!色には気をつけろよ!!」

「ご丁寧にありがとう。見つけた時用に何か考えとくよ!」

シャロンとキャメリアがいたずらっぽく笑って見合わせる。

「葵にはホテル代とか、ご飯代でいつも世話になってるからな!」

「それはどうも。俺はこれから仕事だからそろそろ行くよ」

葵は去っていった。

「葵さん、何だか疲れてる?」

「さあ?仕事だからじゃない?」

「葵はどうでもいいから、鐘探しに行こうぜ!」

アスタの掛け声で3人は駆けていった。


葵はある建物の前で深呼吸をしてから勢いよくドアを開けて入った。

「全員集合しろ!点呼を取る!」

人相の悪い男達がしぶしぶ集まり、順番に数字を1〜10まで言う。

「よし、全員いるな」

葵が見渡した後、近くの机を見た。

「昼間から酒にギャンブルか?」

葵が机を蹴ると大きな音を立てて倒れる。

「何だこの気の抜け様は!!」

さらにリーダーの胸倉を掴んで殴り飛ばした。

「もうじきこの街に四天王が揃い、魔王様もすでにこの土地に来ている!!このメリリーシャという街は都市部で人も情報も多い!よって重要な拠点となる!!」

葵の説教を男達は黙って聞く。

「魔王様がお前達にここを任せたのは、言うまでもなくその特攻力だ!一気にこの街の周辺を攻めたいと考えておられる!お前達をここに配置した意味をよく考えて行動をしろ!」

男達は何も言わなかった。

「おい、返事をしろ!!」

「・・・はい」

葵は背を向けてドアを開ける。

建物を出る前に振り返り、リーダーを見下すと、男達はずっと睨んでいた。

「今日の夕方にまた来る。それまでに全て片付けておけ!」

葵が去った後、部下達はリーダーを立たせた。

「大丈夫か、リーダー?」

「ちっ。葵の奴め・・・」

仲間が心配そうに近寄ると、葵が出て行ったドアを睨みつける。

「リーダー!いつまでもこんな奴らに付き合ってらんねぇよ!」

「そうだ!俺達で団結して葵を取り押さえようぜ!!」

仲間の肩を借りながら立ち上がる。

「お前らの気持ちはよくわかるよ。だが、あの惨劇を忘れたのか?俺らの仲間を次々と目の前でやられたあの日を」

リーダー率いる一味はかつては西の大陸では力を持った盗賊だった。

しかし、ある日葵率いる魔王軍の侵略によってあっという間に壊滅させられた。

「100を超える子分達はものの数分でたったの10人以下にされた。魔王軍は前から力のある組織だが、今の四天王は最高傑作の幹部だと言われている。俺らだけじゃ到底無理だ」

「くそ!!魔王軍に何か一矢報いてやりたい!!」

悔しがる子分の背を撫でる。

「大丈夫だ。諦めなければ必ずチャンスはある。とりあえず、こいつらは片付けるか」

皆で片付け、子分の1人がゴミを出しに行くと裏に3人の少年少女が物の下やゴミを漁っていた。

「何だ?ここはスラムじゃないのにあんなゴミを漁る子どもがいるのか?・・・しかしスラムの子にしては服が綺麗だな」

気にせずゴミを置くと会話が聞こえてきた。

「全然!何も無いよ!!」「諦めんな!必ずある!!」「もう結構探したわよ?」

ショートカットの黒髪の少女がうんざりしながら聞く。

「本当にあるの?願い事を叶えてくれる白い鐘なんて」

少年少女達の口から出てきた言葉に子分が反応する。

「願い事が叶う白い鐘だと?」

子分はその会話に耳を澄ませた。

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