接待
そうめんを抜いた四天王3人は魔王に招集されていた。
「魔王様・・・その少女は?」
恐る恐るきしめんが尋ねる。
魔王の前には頭から二本の角と、口元には牙、つり上がった目の凛々しいシャロンがいた。
「この子は鬼の一族族長の愛娘よ!」
「シャルロットだ!」
凛々しいシャロンではなかった。
パルフェが質問する。
「つまり鬼の一族のお姫様・・・という事ですか?」
「そうなるわね!今日1日預かる事になったの!四天王に接待をしてもらいたいわ!」
「はぁ!?」と3人が口を揃えて言う。
「どう言う事です!?」「嘘でしょ!?」「今色々立て込んでて!!」
口々に言う四天王を無視してシャルロットに本を渡す魔王。
「ほら、これでも読んで少し待っててね」
シャルロットが黙って読む間に魔王が3人に近寄る。
葵が親指でシャルロットを指した。
「あの、何故俺たちなのです?メリリーシャ攻略の為、我々も色々と動いております。部下じゃダメですか?」
「貴方達はね、私の育てた中では最高傑作の幹部達なの。今までに無い様な目覚ましい結果だって出てる。・・・まだまだ若いから、細かい事はわからないかもしれないけれどね」
四天王達が黙って聞く。
「だからこそ常々思うの!貴方達がもっと連携を取れれば、今の何倍ものスピードで躍進するんじゃないかって!」
魔王が笑顔を向けた。
「本当はそうめんも含めたら良かったけど、急ぎの要件を頼んだから、今日は3人で協力し合ってあの子を喜ばして!そしたら、世界中に散らばる鬼の一族からの協力が得られるわ!!」
嬉しそうな魔王とは裏腹に葵が呟く。
「完全にシフト制にしようかと思ってた・・・」
「俺も」
きしめんも同意見だった。
「シフト制なんてダメよ!3人でするの!あの子にもしもの事があれば、鬼達を敵に回すことになるわ!」
「しかし、我々の業務は?」
パルフェが尋ねると魔王が笑顔で返す。
「そんなの、私から貴方達の部下にやるように伝えてあるわ!だから心置きなく接待してあげて!!」
「えー!!」と3人が魔王の背中で不満を漏らす。
「さぁ、シャルロットちゃん!今からお兄さんとお姉さん達が遊んでくれるって!楽しんできて!」
「わかった」
シャルロットは本を返すと3人の元に歩を進めた。
魔王が受け取った本を見る。
「あら?これ、児童文庫じゃなくて四天王の記録じゃない。ま、いっか」
「よろしくね!」と消えた魔王に、3人は目を合わせて拗ねた。
改めて少女を見る。
「うーん・・・どう見てもあの下衆パーティのアホ魔導師シャロンだな」
腕を組んで観察するきしめん。
「下衆パーティ?・・・ああ、葵ときしめんがいじめられてる奴らね」
「違う!!てかお前もだろ!!・・・しかし、本当にシャロンをポニーテールにしただけだな」
パルフェの言葉を葵が否定してからシャルロットの後ろに回る。
「シャロ・・・シャルロット様、少しよろしいでしょうか?」
「ん?」
葵が髪を解いて結び直す。
「ほら、こうして、こうして、こうすると・・・シャロンじゃないか!!」
葵が見事にシャロン風にヘアアレンジしてみせる。
「本当だ!!シャロンだ!!」
「パッツン気味で頭が良さそうなシャロンだわ!!」
きしめんもパルフェも驚く。
シャルロットがくくり直して、振り向いた。
「この街の近くでは酪農や小麦が特産品だと聞いた。美味しいケーキを食べたい!」
葵ときしめんが目を合わす。
「あー、ケーキ・・・ですか?じゃあカフェとかだな」
「それなら俺らなんかより、女子の方が向いてるよな」
すかさずパルフェが反論。
「何よ!あんた達行かない気!?サボる気満々ね!!」
「いやいや!まさか!!こんなんは向き不向きがあるだろ?役割分担と行こうじゃないか!」
「そうそう!俺らはその間パルフェの部下達が押しつけられた仕事の手伝いでもしようかと思ってるよ!」
葵ときしめんが言い訳に務めるが何とも白々しい。
「そんなのずるいわよ!何で私だけに押し付けるのよ!!」
言い合っているとシャルロットがきしめんに呼びかけた。
「お前、きしめんだな」
「あ、あぁ・・・そうだが」
四天王が醜い口喧嘩を止めてシャルロットを見る。
「お前、2年前は筋骨隆々だったみたいだな。何故そうなったんだ?」
「・・・え?何故2年前をご存知で?」
皆もその少女に注目する。
「お前は四天王の中で一番頭が悪いらしいな。過去にテストで10点を90点に書き変えて魔王に見せたそうだな」
きしめんがその時の情景を思い出した。
四天王だけの知能テストが実施され、きしめんは10点だった。
その結果に驚愕と畏怖をする。
きしめんが赤ペンを取ってチェックを丸に偽造し、点数も書き足して90点にする。
それを持って魔王の元へ行った。
「魔王様!見て下さい!四天王の知能指数テスト90点取りました!!」
「それ私が採点したのよ」
まさかの言葉に開いた口が塞がらなかった。
「貴方以外皆95点以上よ」
もっと口が塞がらなかった。
「あら、全部丸ついてるのに90点と書いたの?」と魔王が偽造テストを見ながら呟いた。
「しかもバレていた上に満点にしたテストで90点と書く致命的なミスもしたそうだな」
「もうやめろ!!」
きしめんが真っ赤になって大声を出す。
葵、パルフェも冷ややかな目できしめんを見ていた。
「バカね」
「バカだな」
パルフェと葵から罵られるが、次は葵が呼びかけられる。
「葵、お前は先ほどヘアアレンジが得意だったが・・・この先を言おうか?」
「い、いえ!勘弁して下さい・・・」
葵が両手を振るとシャルロットは口角を上げた。
「良かろう。3人とも来るよな?」
「・・・はい」
3人は渋々行く事になった。
「とりあえず着替えよう。こんな仰々しい格好じゃ目立つ」
「そうね。もっとラフなのにね」
葵の提案にパルフェも頷く。
「武器はどうする?」
「隠せる分だけね」
きしめんがハンマーを持ち上げる。
「俺と葵の武器は置いて行くか。いざという時は素手だな」
「それじゃあ、10分後。着替えてからここへ」
葵の言葉で散った。
こうして3人の四天王は鬼の一族の姫の接待兼護衛という重要任務を行うこととなった。




