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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
メリリーシャの街
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我らの信仰奪取戦

シスターが午後のお祈りの準備をしようと額縁を持ち礼拝堂に入ると、魔王軍の制服を着た男の集団が壇上を荒らしていた。

そして祭壇の真ん中に堂々と魔王の写真を飾っている。

「あなた達・・・何故こんな事をするの?」

腕組みをしたきしめんが不敵に笑いながらシスターを見た。

「ここのシスターか?悪いが、ここは我が魔王様を崇め奉る場とさせてもらう!そしてこの教会は魔王軍の拠点の一つとする!!」

シスターが歩いて近寄る。

「承諾できないわね」

「ふん、残念だがもう遅い。それとも、そんな細腕のお前が力付くで俺たちから奪い取るか?」

きしめんは見下して嘲笑しながら聞き返した。

「そう・・・力付くなら文句無いという事ね?」

「いいだろう、俺も魔王軍機動隊の1人だ。力には自信がある。負ければ潔く引こう。ま、できたらの話だがな」

シスターが持っていた写真を伏せて台に置く。

「相手はか弱い女だ。俺が行くまでもない。お前、行け!」

「はい!」と指名された部下の1人が前に出た。

「約束よ?その人に勝ったら片付けて出てってね」

「勝てたらな」

シスターが首に提げていたチャームを取り、キスをすると持ち主よりも大きくなった。

「さあ、来なさい!」

瞬殺?

そんな言葉では片付けさせてはくれなかった。

華奢な体型に似合わない、あんな大きな武器を振り回していたにも関わらず、その速度が異常に速く射程に入ったと思ったら既に打たれていた。

その後は武器を置き、近くにあった聖書を手にすると平然と角で部下の頭を無言で打ち始めた。

その異様な光景に、きしめんでさえとっくに動かなくなった部下が殴打される様子を唖然と見守るしかできなかった。

気が済むまで打つと、シスターは振り向いた。

その返り血に塗れた顔は笑顔だった。

きっといつも教会に訪れる人々にこの笑顔を向けているのであろうそんな表情だ。

するとシスターはおもむろに口を開き、

「私の勝ちのようですね!」

そう言った。

シスターは立ち上がり、祭壇の写真を退けると自分の持ってきた写真を置いた。

その場にいた誰もが目を疑った。

そこにいたのは我が魔王様に同じく仕える同胞だったのだ。

「誰祀ってんだ!!」

つい心の叫びが表に出てしまった。

「いや、言ってる場合じゃない!この女はやばい!!」

そう直感で感じ、慌てて撤退を命ずる。

「おい、お前ら!撤退するぞ!!」

きしめんは仲間に声をかけると肩を掴まれた。

「あら、お片付けがまだのようよ。このゴミ、片付けて下さらない?」

「・・・はい」

片付けをしてからそそくさと去った。


「ってなことがあったのよ・・・」

サンスベリアで席に着き、シスターの話を聞いた皆の頭は混乱していた。

「え?シスターが退治したの?」

「きしめん達を?1人で?」

「怖いね。シスター怪我とか・・・無さそうだね」

シャロンが気にするが要らぬ心配だとすぐに理解する。

「ええ、相手の方が女だからきっと手加減して下さったのよ!なにより、きしめん本人ではなく部下の方との戦闘でしたから!」

「だけど無事で何よりです、シスター!」

チョコが言うとすぐにビストートが茶々を入れる。

「相手が手加減してもお前は容赦して無いんだろ?」

「ふん!」と腕を組んでそっぽを向いた。

アスタが不思議そうに尋ねる。

「あれ?ここよく使うんじゃないの?ビストートと仲悪いの?」

「俺はシスター好きだよ!」

恥ずかしがらず平然と答えるのに周りが驚いていた。

「この聖女まがい、お前ら貧乏人と違ってアラカルトで頼んでくれるから金払い良いんだよ!」

その回答にシスターが睨みつけるが、すぐに余裕の笑みを見せる。

「私もビストートのこと好きよ。料理の腕が良いんですもの!」

しかしビストートはシスターの言葉に取り乱すなんてことは全くしないので、そこに付け加える言葉を黙って待つ。

「あら、失礼。言い間違えました。料理の腕しかよろしくありませんの間違えでした。・・・ほんと、喋んなきゃいいのに」

シスターの訂正後、2人が睨み合う。

かなり険悪な模様だ。

「本当、シスターって可愛いよな。信仰捨てて男を崇拝したくせに、稼いだ金は飯食いに来て俺に貢いでるあたり最高だわ。聖職者が祭壇に盗撮写真飾っちゃまずいでしょ」

「何でアラカルト頼むかわからないの?あなた腕前は良くても食の組み合わせのセンス無いのよね。あなたの選んだ組み合わせに納得してないからいちいちアラカルトにしてるのよ」

その様子に「怖いよぉ!」とシャロンが怯える。

ビストートから目を逸らせ、胸に手を当てる。

「でも、何だか嫌な感じがするわ」

「嫌な感じ?」とチョコが聞き返す。

「近く世界的に治安が不安定になるかもしれないわね」

「治安なんてお前に関係無いだろ、暴力女」

すかさずビストートが口を出した。

「早く治安が悪化して口の悪いシェフが刺されないかしら?」

その一言に更にイラ立ち、床に落ちたゴミを指差す。

「おい、そこにゴミが落ちてんぞ。食うだろ?ゴミ食うって本当地球に優しい体してんな」

「この店は掃除もロクに出来ないの?ゴミが落ちてるなんて、衛生管理に問題があるわ。近々潰れるんでしょうね」

シスターも負けじと言い返した。

「自分の落としたゴミを棚に上げやがって。これだから聖女まがいのクズは」

「口の悪いシェフは頭も悪いようね。料理しか出来なさそうだから、きっと店が潰れたら生活できないんでしょうね。せいぜい潰れないように足掻きなさい!」

『この人らは治安が悪化しても喧嘩してそうだな・・・』と思う4人であった。


一方、片付けを終えた部下を率いるきしめんは、教会を出てから見上げてシスターを思い出し冷や汗を垂らした。

「きしめんさん、この教会はいいんですか?一応今のは仮拠点だから新しい拠点は探さないといけないんじゃないんですか?」

心配そうにする部下を見て答える。

「・・・葵が占拠してたからいいだろ。しかし、ここを魔王様に差し出すわけにはいかないからな。西の大陸一の大都会だ!建物ならたくさんある!他を探すぞ!!」

「はい!」と元気な返事をしてきしめんについて行った。

きしめん達が撤退している時、魔王軍の仮拠点では葵が部下を呼び出していた。

「先日行われたコロシアムの優勝者、チョコレート・リリーの情報をある組織から奪う作戦内容の共有を行う!!」

葵の手元にはチョコの写真があった。

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