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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
メリリーシャの街
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勇者の伝説

港へ着くと葵は既に乗船していた。

「葵!!」

アスタの声に振り返り勝ち誇ったように笑ってから出航した。

「クソ!逃げられた!!」

「これは完璧に僕らの負けだね・・・」

船の上ではきしめんの部下が心配していた。

「あいつらが来ましたね。まさかきしめんさん・・・」

「負けたとは限らない。足止めをされたか、まかれた可能性もある。島に着いたら連絡を取ろう」

港ではアスタ達に諦めの空気が流れる。

すると、近くの漁村で暴れまわる暴徒がいた。

手当たり次第壊して回る暴徒から逃げてきた村民の1人に話しかけた。

「あれは一体何なんだ?」

「貴方は・・・メリリーシャの方ですか?」

アスタが首を横に振る。

「ならば、旅の方ですか?」

「そうだ!俺は勇者をしているアスタだ!!」

村民が目を輝かせた。

「勇者!?良かった!助けて下さい!!」

懇願され、困った様子の村民をチョコが背中を摩ってあげる。

「あいつらは魔王軍に土地を追われ、ウチの敷地まで来た奴らが、占領せんと日夜暴れまわっているんです!!しかも近くを通る船をお構い無しに襲って・・・」

「えー!それは大変!!」

チョコが慰めるが、アスタは腕組みをして考えていた。

「お願いします!あいつらを倒してくれたらお礼は沢山致します!!」

アスタにはすがる村民の話がほぼ頭に入っていなかった。

『魔王に土地を追い出された暴徒か・・・。使えるな!』

アスタがその人の手を握る。

「暴徒討伐、引き受けよう!!」

「ありがとうございます!!」

「本当に大丈夫!?」

心配するチョコを他所に不敵に笑い歩を進める。

安請け合いをするアスタに心配しつつもついていった。


颯爽と暴徒の前に現れ、喧嘩腰でいきなり話しかける。

「おい!クズ共!!暴れ足りないなら相手してやるよ!!」

荒らして回る暴徒が手を止めてアスタを一斉に睨む。

「あ!?」「何だ、あのチビ?」「言ってくれんじゃねーかよ!!」

アスタが鼻で笑い、チョコを向く。

「行け!チョコ!!」

「えぇ!?僕!?」

予想外な言葉に戸惑うチョコに小声でお願いする。

「まあまあ、ちょちょいとやってやってよ!グラディエーターだろ?」

「うーん・・・まあ、いいけどさ・・・」

チョコが前に出て構えると暴徒達が一斉に飛びかかった。

そして、一瞬で片付ける。

「終わったよ!」

「うぅ・・・」「強い・・・」と呻く暴徒を横にチョコを労った。

「よくやった!チョコ!!ま、俺の足元にも及ばんがな!!」

その言葉に暴徒達が恐れおののく。

「何!?今の奴より強いというのか!!」「や、やべぇ!!」「四天王並みだ!!」

アスタが近寄ると暴徒達はさらにビビり萎縮した。

「すいません!」「もうしないので許して!!」

「お前ら、この辺を通る船を襲ってるってことは装備と船を持ってんだな?」

暴徒が顔を上げる。

「は、はい!俺らは元々近海で海賊をしてたんです!」

「魔王軍に追われたんだって?」

その質問に海賊が悔しそうに、右手で拳を握り怒りを露わにする。

「そうです!!」「俺達の土地をよくも!!」

アスタが地図を広げて見せた。

「今、四天王の葵が魔王の元へ行く前にこの島で休憩をしている」

数ある諸島の内、点滅する島を指す。

「ここは・・・確か無人島じゃ」

「ここで思う存分暴れてこい!できるだけの人手を手配してな!!」

顔を上げた暴徒の表情には戸惑いがあった。

「え・・・でも暴れちゃダメなんじゃ・・・」

「あそこは無人島だぞ?誰に迷惑が掛る?それに憎き魔王軍四天王を無人島で袋叩きにできるんだぞ?そこには葵と雑魚の2人しかいない!!チャンスだと思わないか?」

暴徒達が目を輝かせる。

「い、いいんですか!?」

「許可しよう!」

暴徒が振り返り大声を張る。

「お前ら!!今こそ我々の恨みを晴らす時だ!」

「おー!!」

「ありったけの準備で行くぞ!!」

「おー!!」

チョコが唖然とする中、アスタが主人公とは思えないほど下衆く笑った。


「ここは無人島か・・・。丁度良い。人目につかないここできしめんと連絡を取っておこう」

「はい!」と返事をして部下が無線を取ろうと船に戻る途中、何かが飛んできて船が爆破した。

その音に葵が駆けつける。

「どうした!?大丈夫か!?」

腰を抜かすきしめんの部下の先には燃え上がる船があった。

「これは・・・一体・・・」

「あ、葵様!アレを!!」

部下が指す先には黒い布に「アスタ」の赤文字を掲げた帆を翻す船が何隻も迫ってきていた。

「な、何だこれは!?」

「ここは危険です!逃げましょう!」

部下と島の奥へ逃げ、身を隠した。


「いや〜、海賊ってのは良い装備持ってるもんだな〜!電撃対応の装甲船なんてあるんだな!」

「で、でもあんなので島に一斉攻撃をしたら死んじゃうよ!流石にやり過ぎなんじゃ・・・」

戸惑うチョコにアスタが呼びかける。

「チョコ、宝石は死なないだろ?」

「え、えぇ〜!」『最低だ、こいつ!!』

アスタの目はマジだったという。


その後、暴徒達による攻撃は続いた。

それは反撃の術を持たない葵を追い込むのに造作はなかった。

【無人島1日目。今日アスタからセイレーンの涙を奪い返したばかりに、あいつによる砲撃が止まない。サーベルを海につけて一斉に電撃で退治してやろうかと思ったが、船の装甲が頑丈で効かない。どうにかきしめんに応援を呼びたいが通信機を船ごとやられた今、手段が無い。どうしたものか。】

【無人島2日目。今日も深夜から朝に掛けて砲撃が来た。それどころか矢まで降ってくる始末。いつかこの島は更地になるんじゃないだろうか・・・】

【無人島3日目。まだきしめんは来ない。どうにか助かる道を探したいが、今は見えない。また砲撃が降り注いできた。】

【無人島4日目。今日は常に攻撃が仕掛けられてきた。俺は本気でアスタという男を見くびっていたようだ。】

【無人島9日目。非常食が底をついた。非常食と言ってもポケットに忍ばせていたビスケットだ。2人で食いつなぐには足りない。】

【無人島10日目。死を覚悟し始めた。もうダメだ。食料も無く、希望も無い。頼みのきしめんが数ある諸島から俺らを見つけられるとは思えない。俺もここまでか。短い人生だった。】


孤島に来てから10日目の夜中、きしめんが葵と部下を発見した。

「おい!葵・・・なのか?」

葵は憔悴しきっていて、頬もコケて髭も生え別人のようだった。

「・・・俺は幻覚でも見ているのか?きしめんが見える・・・」

弱々しい仲間にきしめんが頬を叩く。

「しっかりしろ!!本物だ!幻覚じゃない!!」

「葵様!本物のきしめんさんですよ!!幻じゃない!!助かった!!」

「しっ!!」と周囲に注意を向ける。

「まだ上陸してきてないようだな。今の内に出よう!」

衰退しきった葵を抱えて島の端まで移動した。

「葵様!ご無事ですか!?」

ソルベインレットの人魚達が心配そうに葵に呼びかける。

「ダメだ!弱りきっている!すぐに脱出するぞ!!」

葵と部下を小船に乗せ、3人が乗った船を人魚達に引いてもらう。

葵は意識が朦朧としていたが、まだギリギリあった。

「遅れてすまんな。ここの位置は把握していたが、中々連中の攻撃が止まなくて島へ入れなかったんだ・・・。連中は今、補給をしていて警戒が緩んだ状態だ」

人魚達が警戒しながら慎重に泳ぎ進める。

「葵の泊まってるホテルへ行って、人魚達と連絡が取れるという貝殻で応援を頼んだんだ。人魚には島の包囲網の隙を見つける以外に、こうして船を引いてもらった。モーターがあると音でバレるからな」

葵が目を潤ませる。

「助・・・かった!!死ぬかと思った・・・!!」

「きしめんさん・・・本当にありがとうございます!!」

部下も葵につられて泣く。

「俺がお前を見捨てるわけないだろ!必ず来るさ!」

きしめんは泣く部下の背を摩ってやった。

「船は手配している!まずはメリリーシャに戻り、それから魔王軍の本拠地の島まで行こう!!」

「この海賊達はどうするんですか?放っておくんですか?」

部下が心配そうにする。

「気にはなるが、葵もお前もこの状態だし、戦えるだけの準備が揃っていない。今は見送ろう」

3人は身をかがめて暗い海をゆっくりと進んで行った。


準備を揃えたアスタ軍達は一気に叩くため、より激しい一斉射撃を再開。

その内の一発が島の向こうにいた仲間の船に直撃した。

「うわぁ!」「くそ!魔王軍め!やりやがったな!!」「やり返せ!!」

やり返すと反対の岸にいる二隻当たる。

「やられた!!」「もういい!上陸だ!!」

ついにお互いに上陸した。

煙幕やら、土埃やらで視界が悪い中戦い続ける。

そしていつしかその島は焦土と化した。

この戦いにより、海賊達は同士討ちでほぼ壊滅。

そんな事情を知らないアスタとチョコは別の日に波止場近くを歩いていた。

「あーあ、そういえば結局宝石持っていかれたな」

「寧ろ良かったよ。パンツに入れた宝石を姉さんに渡されなくて済んだんだから!」

すると、この前の漁村の人々が集まってきて囲まれた。

「え?何なに?」「ど、どうしました?」と2人が焦っていると、皆揃って頭を下げた。

「ありがとうございます!」

呆気に取られる2人を置いて村人達は続ける。

「あなた方のお陰で我々の平和は守られました!!」「こちらは約束のものです!!」

アスタが袋一杯に入った金貨、銀貨を受け取った。

『え?何で俺こんなに金貰ってんの?』「あ、ああ。いえいえ」

お爺さんがアスタの手を握る。

「貴方様こそが、真の勇者だ!」

そして周囲の人が盛り上がる。

『何これ?・・・ま、いっか!』

こうしてアスタは私利私欲によって起こした行動がメリリーシャ郊外の漁村で伝説として残った。

そして銅像も建った。


葵達はというと、逃亡の後メリリーシャで船を乗り換え、魔王の元まで無事にセイレーンの涙を届けることができた。

「綺麗ねぇ!葵、きしめん、よくやったわ!!」

魔王がセイレーンの涙を頬擦りする。

その姿に葵ときしめんの顔が引きつった。

「あらどうしたの、2人共?変な顔して・・・」

「あ、いや・・・」

「何でも無いです・・・」

魔王がセイレーンの涙がパンツの前部に入れられた事実を知り、気絶するのはまた別の話である。

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