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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
メリリーシャの街
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友の敵討ち

葵がホテルのロビーで落としてしまったセイレーンの涙という宝石をたまたま拾い、アイリスにプレゼントしようとしたところを奪い返された上に魔王軍四天王葵ときしめんという強敵に阻まれたアスタとチョコ。

ビビるチョコに反し、アスタはきしめんに指差し息巻く。

「おい、きしめん!!お前にはリトルの仇をここで返してやる!!」

きしめんが片眉を下げピンときてないようだった。

「はぁ?リトル?」

葵が部下から宝石を受け取り労う。

「ご苦労!流石お前の部下だな」

「当たり前だ!俺の部下は優秀な奴しかいないんだよ!」

アスタが葵の持つ宝石を指差し、強気に吠えた。

「それを返せ!(アイリスさんへのプレゼントに)それが必要なんだよ!!」

アスタの言葉にしかめながら聞き返す。

「・・・なんだ?それ程真剣に言うとは、さっきのはフェイク、まさかお前もこの石の力を知っているというのか?」

そんなもの知る由もないアスタは変な勘違いをし始めた。

『力・・・?まさかイケメンの葵が欲しがる程、あの宝石には女子から好感度を得る魔法の力があるのか!!ハーレムを作るという夢も叶わなくはないというのか!?尚更欲しい!!魔法って最高!!』

そんなわけはない。

2人は相容れない会話を繰り広げていた。

「いいから返せって言ってんだよ!!」

葵が宝石をポケットにしまうと、アスタが先制攻撃を仕掛けた。

ボールを投げるが、きしめんに簡単にキャッチされる。

「何だ?キャッチボールでもするか?」

相変わらず、まさかの強敵2人の相手にチョコが慌てふためく。

「わー!どうする、どうする!?こんな強い人らになんて敵わないよ!!」

すると突然ボールが膨らみ、重たくなった。

「な、何だこれは!?」

「都会の玩具なめんな!!」

突然の変化に驚くきしめんに対して強気に指差して吠える。


ノーティーエッグズ【こなき球】

投げて、キャッチすると膨らんで重たくなるよ!

これで嫌な大人や友達の動きを封じよう!


「しかも離れねえ!!」

きしめんが手を一生懸命に振るが全く離れそうにない。

「片手を封じてやったぜ!!」

得意気に指差してアスタは勝ち誇った。


【こなき球】は粘着して離れなくなるから相手が動けない内に逃げろ逃げろ〜!


「姑息な!」

きしめんが踏み込んで封じられた右手を球ごと振る。

「なめんなぁぁあ!!」

2人が避けると、地面が大きく凹んだ。

「ウソだろ!?振れるの!?」

「とんでもないバカ力だよ!!」

だが、きしめんの息も上がる。

「きしめんさん!一時撤退しましょう!!」

部下が煙幕を地面に投げつけ、煙に巻いて3人が逃げた。

「あ!逃げやがった!!」

「アスタ、これを見て!」

チョコが指す先の地面を見ると、きしめんがこなき球を引きずった跡があった。

「バカめ!!行くぞ、チョコ!」

「うん!」

2人も後を追った。


魔王軍の3人で走って逃げる。

「玩具とは言え・・・重いな・・・」

ハンデを負ったきしめんは息を切らせながら路地へと逃げ込む途中、球の効果が切れて手から外れ、小さくなった。

「外れた!」

「このまま港まで行こう!魔王軍の本拠地に向かって出航さえできればこちらの勝ちだ!」

しかしきしめんは頷かない。

「お前達は先に行け。それを魔王様の元まで届ければいいんだろ?葵さえ行けば俺らの勝ちということだ!それなら・・・」

ハンマーを構え不敵に笑う。

「俺がここであいつらを仕留める!」

葵が一瞬考えたがすぐに頷いた。

「・・・わかった。だが、あいつは抜け目無い。気をつけろよ」

「わかってるよ。さっきとこの前の借りを返してやる!!」

葵ときしめんの部下の2人が港へ向かった。


アスタとチョコが球の跡を追って路地へ入る。

「ここで球が外れたのか・・・」

アスタが球を拾った。

「見失っちゃったね。どうする?」

チョコが見渡していると、アスタがポケットから地図を出して開げる。

「こんな事もあろうかと、俺は事前に宝石にノーティーエッグズを仕掛けさせて貰った!!」

「本当!?凄い!」


ノーティーエッグズ【チートかくれんぼ】

アンテナとなる粘土、針、シールの専用道具付きのセットだよ!

この道具をつけた相手の居場所が地図でわかるよ!

これでかくれんぼは制したものさ!

【とん図ら】は逃げる時用、【チートかくれんぼ】は追う時用で使い分けよう!


葵が手に持つ宝石にはシールが貼られていた。

「ちょっと待って!アスタ、それ何のために貼ったの?こういうこと予測してなかったよね?」

チョコがそこに気付いてしまった。

「あ!いや・・・いつもアイリスさん探すとこから始めるからちょうど良いかなーって思って・・・」

チョコが嫌悪の色を示す。

「絶対に今後アイリス姉さんにプレゼントしないでね!!てか今回のもやめてよ!!」

「おい!それじゃあ今の追跡が意味なくなるだろ!!・・・チョコ、これ見ろ!!」

地図には葵の足取りが描かれている。

「ここを真っ直ぐだ!」

「行こう!」

アスタが路地を真っ直ぐに走ると、数m先に角を曲がって行く人影が見えた。

「あれじゃない!?」

「いくぞ!」

人影を追いかけ走ると、曲がり角できしめんがハンマーを構えていた。

アスタが気づくがきしめんは既に振り下ろしにかかっていた。

『や、やば!!』

「アスタ危ない!!」

チョコがタックルをしてアスタごと回避する。

「助かった、チョコ!」

きしめんが舌打ちをする。

「よく避けたな!」

「さっきの影は!?」

きしめんが小さな粘土を見せる。

「お前らが追っていたのはこれだよ。さっき適当に買った玩具だが、お前らを誘き寄せるには十分だったな!」

きしめんが持っていたのは【安価分身様】だったのだ。

いつもの手法を逆に使われて悔しそうにする。

「今日はこの前の魔導師のガキはいないようだな。勘は良いが、腕の細いガキが2人か・・・」

「余裕、とでも言いたいんだな」

アスタが余裕の笑みを見せる。

「逆に言わせてもらおう!お前なんか俺一人でも余裕だ!!」

指を差されてきしめんが眉間に皺を寄せる。

「アスタかっこいい!でも!」

生まれたての子鹿くらいアスタの足は震えていた。

「足がめっちゃ震えてる!!」

その様子にきしめんが鼻で笑う。

「ふん!無理すんなよ!」

「むむむむ、無理とかしてねーし!!」

「へぇ、そうかよ」と足を一歩出すとアスタがビビりまくって叫びながらやたらめったらに【こなき球】を投げつけた。

しかし、全て簡単に避けられ背後の積み上がった荷物に当たる。

「全然当たんねーぞ!ちゃんと狙えよ!!」

アスタが一球ど真ん中を狙って投げるときしめんが手で受けようとして、とっさに引っ込めて避けた。

「危な!」

「やっぱお前馬鹿だろ!」

最後の一言にキレたきしめんがハンマーを握り直す。

「また俺のことを馬鹿呼ばわりしやがったな!!ぶっ潰してやる!!」

怒ったきしめんもボールを出した。

「こなき球!?」

振りかぶって思いっきりアスタに投げつける。

きしめんの手を離れたボールは直接アスタめがけて飛んでいった。

アスタが必死に避けるも、風圧で頬を掠めて切る。

その後ボールは後方のレンガの壁を4枚抜いていった。

衝撃と膨らんだボールの重さに耐えられず、5枚目の壁が崩壊した。

「な、なんだ今のは!?同じこなき球の威力かよ!?」

「お前程度の力と比べるな!本気を出せば掠るだけで顔面剥げるんだよ!!」

アスタが顔を押さえて青ざめる。

圧倒されるアスタに一歩踏み込んで横薙ぎにハンマーを振った。

「おわっ!!」

アスタがしゃがんで避けると、続けて二撃目を振る。

それもギリギリで避け、ハンマーは壁に当たって止まった。

「当たったら危ないだろ!」

「当てに行ってんだよ!!馬鹿め!」

しかし、アスタがニヤリと笑う。

「いや、やっぱり馬鹿はお前だよ!」

「あ!?」

怒りに任せてハンマーを上から振り下ろしたら、ハンマーが地面にめり込んだ。

「こんなに狭くて荷物が積み上げられた場所でそんなに震動を与えたら落ちるに決まってんだろ?」

きしめんが音に振り返ると後ろの荷物が、先程アスタが投げた球の重さと、ハンマーの震動に耐えきれず倒れてきた。

見事にきしめんの巨体は荷物の下敷きとなった。

「俺が最初にやたらめったらに投げたのはこの為よ!ビビったフリだっての!!」

「この野郎!!そこで待ってろ!絶対潰してやるからな!!」

這い出ようとするきしめんの頭上にレンガが落ちてきた。

レンガは見事にヒットし、そのまま気絶させた。

「ナイスチョコ!!」

それはチョコが建物の上から投げたのであった。

「僕らでも何とか倒せるもんだね!」

「こいつは脳筋単純馬鹿だったから良かったよ。今まで読んできた冒険物語の知恵が功を奏したけど、葵だともう少し手こずっただろうな」

アスタが地図を広げる。

「チョコ急ぐぞ!奴らは港に向かっている!船に乗られたら追えなくなる!」

「え!でもここに瀕死の四天王がいるんだよ!今が完全に倒すチャンスだよ!!賞金首だよ!!」

チョコ、まさかの渾身のクズ発想が炸裂する。

「それより宝石だ!!」と走り出すのでチョコも仕方なくアスタを追いかけた。

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