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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
メリリーシャの街
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セイレーンの涙

パーティは朝からカラの魔女、チキン・リトルの家を訪ねた。

だが、何度ノックや呼び鈴を鳴らしても出てこない。

「おーい!リトルー!!」

「ビストートの新作食べよー!!木の実のやつー!!」

しかし反応がない。

「おかしいわね。寝てるのかしら?・・・それにあれ」

3人が近くの盛られた土を見る。

「何これ?何か埋めたのかな?」

盛り土に近づくとラエビガータが反応して光が溢れ出てきた。

そこで3人の頭にリトルの記憶が流れ込んできた。


首都近郊の穏やかな農村で少年が虫や草花を観察したり採取している。

そのうち木登りをして木の実を食べ、鳥の巣を探していた。

少年はこうして自然と触れ合う日々を過ごしていて、木登りは鳥になれた気分がしてすごく好きだ。

特に村で1番大きな木に登ってはのどかな村を眺めるのがお気に入りだった。

いつものように村で1番大きな木を登っていると青い羽が落ちてきた。

それは満点の星空のように神秘的な深い青色で、吸い込まれる感覚を覚えるくらい見入ってしまうものだ。

居ても立っても居られなくて、羽の持ち主を見たくなり上を目指した。

はやる気持ちを抑えきれない様子でどんどん登っていくと、きれいな長い尾を垂らした鳥が頂上付近で止まっていた。

あまりにもきれいで見入っていると、鳥がこちらに気付き顔を近づける。

見つめ合たと思ったら頭から丸呑みにされた。

鳥が少年の姿に変わる。

そしてカラの魔女となった。

しばらくは少年として過ごした後、村を出て転々と居住を変えていた。

東の大陸でのどかな少年の住んでいた村に似た場所を見つけて静かに暮らしていたが、魔王軍の侵略により村が荒らされてしまったので、仕方なく西の大陸に向かい、首都郊外にある丘の一軒家に住んでいた。

そこに轟音の羽ばたかない鳥が来る。

雲を産んでは降らしを続けるので魔法で降らそうと試みたがそれも叶わない。

仕方なくメリリーシャのギルドに依頼書を出したが魔女の依頼など引き受けてくれる者はおらず。

困っていたところにパーティが来た。

ポンコツで気ままで脳天気だが、物怖じせずに接してくれる初めての友達だった。

みんなで美味しいご飯も食べた。

この胸の奥から暖かくなる感覚は、体の持ち主である少年がかつて家族と分かち合ったものだろう。

いつもより美味しく、何より楽しく感じた。

また会う約束をした直後、魔王軍のきしめんが来た。

善戦したものの相性の悪さで負け、首を掴まれた。

そのシーンでついアスタが「リトル!!」と叫んでしまう。

胸を裂かれながら思い出すのは少年の心にあるのどかな村の光景と、魔女になって初めてできた友達との思い出。

心臓を抜かれてついに体が死に、核である鳥の姿で体から這い出る。

きしめんに捕まりそうになったが、寸前のところで霧となり消えて逃れた。

「アスタ!キャメリア!シャロン!!」

必死に羽ばたいて街を目指す。

街の前でやっと見つけ、アスタにぶつかった。

「綺麗な鳥だね」「すごく弱ってる」

救い上げられた時に自分を覗くキャメリアが持つラエビガータを見つけた。

最後の力を振り絞ってラエビガータを突き、自分を吸収させた。


そこで映像が消えた。

しばらく3人が黙る。

「・・・もしかして、昨日のラエビガータって」

キャメリアが金魚の張子を手に取る。

「あなた、リトルなの?」

シャロンは思わず泣いてしまった。

アスタが背をさすってやる。

「リトル・・・お前の仇は取ってやるからな」

アスタはまっすぐにリトルの墓を見つめた。


葵は昼すぎにホテルのロビーで青く輝く宝石を手に取って眺める。

『人魚からもらったセイレーンの涙。水系の妖精の能力を高める宝石か』

「俺には関係無いな。 魔王様に献上するには丁度いいか」

葵に給仕が近寄る。

「葵様、支配人がお呼びです」

「わかった。今行く」

そう答えて立ち上がり、ポケットにセイレーンの涙を入れたが、入りきらず横から落ちてしまった。

葵は気づかずにその場を去った。

そのすぐ後、小腹を空かせたアスタがロビーへ出る。

「あーあ、シャロンがまだ泣いてるからな・・・」

シャロンはあれからホテルの部屋に戻っても、まだ泣いていた。

昼食もみんなでサンドイッチを買ってきて部屋で食べたがそれでも泣き止まず、今もキャメリアがシャロンを慰めてあげているので、アスタは1人行動となった。

「昼飯食ったけど、何か腹減ってきたな。・・・ん?何だコレ?」

ソファに落ちている宝石を見つけて拾った。

「綺麗な石だな・・・。これが噂の宝石というやつか!!」

宝石をしっかりと握りしめる。

「そうだ!アイリスさんにプレゼントしてポイント稼ごっと!!」

アスタはそのままホテルを飛び出してあすなろ荘を目指した。

半分今日のできごとから逃げるような気持ちだった。


あすなろ荘に行くとチョコが出てきた。

「やあ!アスタ!どうしたの?」

「アイリスさんいる?」

チョコが首を横に振る。

「買い物に出てる!一緒に探すよ!」

「助かるわ!」

2人で街中へと出て行った。


「サービスについての話とは、ここの支配人もよく気を使ってくれるな。有難い限りだ」

葵は支配人との話を終えて、宝石を入れたはずのポケットに手を入れた。

「無い!?落としたか!?」

再びロビーに戻って探すが見つからない。

「誰かが持って行ったか?」

ホテルを飛び出し、街を探す。

「時間はあまり経ってない!まだこの近くにいるはずだ!どこだ!?」

質屋街付近に向かう途中、アスタとチョコを見かけ、とっさに隠れた。

『今は一刻も早く宝石を見つけなければ!アスタ達に構ってる暇は無い!やり過ごそう!』

過ぎ去るのを待っていると、チョコがアスタの手にある宝石を尋ねた。

「それ綺麗だね!その宝石どうしたの?」

「これか?ホテルのロビーで拾ったんだよ!アイリスさんにプレゼントしようと思ってな!」

アスタが自慢気に見せびらかす宝石に葵は目を疑った。

『セイレーンの涙!!あいつ!他人の物をプレゼントしようとするな!!』

しかし、チョコも同意見だ。

「拾い物なの?ダメだよ!絶対落とした人が困ってるよ!フロントに預けないと!!」

『いいぞ!ブラックサレナ!!お前が正しい!!』

だが、世間知らずのアスタが切り返す。

「大丈夫だって!ソファに捨てられてたもん!それに、アイリスさんに似合うと思わないか?」

「確かに似合いそう!僕らのせいで色々我慢させてるしね。それに捨てられてたならいっか!」

『良くない!捨ててないわ!!』

アスタがポケットにしまおうとしたら、穴が開いていたことに気づいた。

「あ、穴開いてる!これじゃあ落とすな・・・。そうだ!ここに入れとこっと!」

そう言って、おもむろにパンツに入れるアスタ。

『何故そこへ入れる!?』

葵が目を見開くと同時にチョコも驚いた。

「何でパンツに入れるの!?しかも前なんて!!」

「だって後ろに入れたら・・・穴に入ると痛いだろ?大丈夫だよ!トランクスじゃなくてボクサータイプだから落ちにくいよ!」

チョコも納得するが戸惑いは隠せない。

「そっかぁ・・・。別にいいけど、アイリス姉さんには絶対渡さないでね」

「何でだよ!今から探す意味無くなるだろ!!」

一部始終を見てしまった葵がもどかしくしていると後ろから肩を掴まれた。

振り返るときしめんだった。

「何してんだ?」

「きしめん!」『こいつに協力を・・・しかし、献上品があんなことになっていると魔王様信者のこいつに言ったらどうなるか・・・』

最近も東の大陸で献上品を盗んだ盗賊団が隠れ住む山を更地にしている実績のある男、きしめん。

『ダメだ!・・・でも協力は欲しい!!』

意を決してきしめんに伝えることにした。

「事情を聞かずに協力してほしい!」

切迫する葵にきしめんも事の重大さを察する。

「あそこにこの前のチビがいるだろ?」

「あいつは!!」

きしめんも覗いて確認する。

「あいつのパンツの中のモノが欲しい!!」

「パンツの・・・中のモノ?」

きしめんの頭の中でモザイクがかかる。

「何を想像している!違う!!あー、もう!わかった!言うよ!!冷静に聞けよ!!」

葵が仕方なく一通り説明した。

「と、いうわけでセイレーンの涙が今あいつのパンツの中に入っているんだ!」

「あぁ、そういうことか。そんな大切な物を落とすお前もお前だが、パンツに入れるのもどうかと思うな・・・」

「これは俺のミスだ。どうか協力してほしい。だが、冷静にいけよ?この大都会を前みたいに更地にしたりするなよ!」

念を押して確認する。

「分かってるよ!俺もさすがにその辺の常識くらいはあるって!それに、あの時は部下がやられたというのが大きいからな。何より今回は盗賊団のような多人数でなしにガキ2人が相手だし、そんなにする必要はないだろう」

きしめんがケータイを出す。

「だが、あのアスタとか言うガキは油断できん。俺の部下にスリが得意な奴がいる。そいつに頼もう」

「助かるよ!」

連絡をして協力を要請するとすぐに来てくれた。

「あそこの奴だ」

2人の姿を確認し「わかりました」と言い、移動した。

アスタ達が歩いているところに角から飛び出してぶつかり、倒した瞬間にセイレーンの涙をパンツの中から引き抜いた。

「痛たた・・・」

「す、すいません!急いでたもので!!失礼します!!」

そのまま急いで走り去る。

「アスタ大丈夫?」

チョコに立たせてもらうと、股間の違和感に気づいて股を押さえる。

「大丈・・・ん!?あいつスリだ!!」

「え!?」

言うなりアスタが追いかける。

「宝石を奪われた!!」

「パンツの中なのに!?」

チョコもアスタを追いかけた。

「アスタ!それおかしいよ!絶対スリ目的というより痴漢だよ!」

「そんなことどうでもいい!!今は宝石だ!!」

スリをした部下も騒がしさから2人に気づく。

『気づかれた!!』

部下とアスタ達の間に葵ときしめんが立ち塞がる。

アスタ達が足を止めた。

「葵ときしめん!!」

「え!ええー!!それって四天王の!?」

チョコは思わずアスタの後ろに隠れて様子を見る。

強敵2人を前にただならぬ緊張感がその場に流れた。

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