カラの魔女
四天王2人の財布を質屋に納めたお金で、無事ギルド登録を済ませたパーティは早速依頼のボードを見ていた。
「何か良いのない?」
しかし、良い値段の依頼は条件がありパーティーでは受けられないものばかりだ。
そんな中、シャロンが見つける。
「あ!これどう?」
それはギルドのランク条件のない、割と高額な依頼だった。
しかし、そんな好条件が残り続けていたのには理由がある。
それは、依頼主が郊外に住む魔女だったのだ。
雲に覆われて薄暗く陰気な雰囲気の家の前で小柄な少年が腕を組んで不機嫌な様子でずうずうしくもやって来たパーティを見ている。
「君達は本当にギルドの依頼書見て来たの?」
「見たさ!ほら!」
アスタが紙を開いて見せると大きな溜息を吐いた。
「確かに魔女の依頼なんて恐れて来たがる人はいないからランクの指定はしなかったよ?だからって君達みたいなちんちくりんに来られても何の役にも立たないじゃないか!」
「おいおい、俺らはまだお前を魔女とは認めてないんだぞ?本当に魔女なの?そんなちんちくりんで?」
アスタの逆煽りにイラつく魔女にシャロンが追い討ちする。
「ぷー!シャロンの方が強そう!シャロンでも魔女なれるんじゃないの?」
更に更にキャメリアも追撃。
「ぷぷ!本当よね。魔女だっていうんならすっごい魔法見せなさいよ!!」
完全に頭に来た魔女が怒りの表情を見せ、軽く拳を握り力むと魔女の毛先が浮き上がった。
浮いた魔女の髪の下から雫型のピアスが光る。
「いいだろう。そこまで言うのなら見せてやる!!」
両手の平を開いて上に向けると地面やアスタ達の皮膚から水が玉となって宙に浮く。
「わ!体から水が!!」
「後悔するなよ?」と不敵な笑みを見せると、あっという間に雨雲が周辺を覆い更に暗くなった。
魔女は右手を前に突き出し、人差し指を下げるとにわか雨の如く一気に雨が降り注いだ。
「わー!!」と慌てふためくパーティに振り返り人差し指で頭上を指す。
「僕はカラの魔女!雨避けの姿が卵の殻に似てるからだって。ま、どうでもいいけど」
しかしパーティはあまり聞いてない様子で、魔女の殻の下に豪雨を避けるため3人で入った。
「こら!勝手に入るな!!」
「イテッ!!」
アスタが殴られた。
そこから少し離れた木の影で魔王軍のきしめんの部下が望遠鏡を使って魔女を見ていた。
「きしめんさん、カラの魔女、チキン・リトルの報告を致します。見た目は子どもで能力は聞いていた通り雨を降らす能力です」
「見た目が子どもだからって油断するな。そいつは俺らなんかより何倍も生きている。・・・さっきから雨の音すごいけど大丈夫か?」
「いえ、びしょ濡れです!耐水性の通信機にしていて良かったです!あと変な子どもが他に3人いてて、そいつらがいらん事言ったのかチキン・リトルが急に雨を降らせました!」
「変な子ども?」
きしめんが訝る。
「ええ、たぶん前にシンデレラとキャンドルの捜索で他の奴が捕えた3人ですね。俺があいつら呼びに行ったので覚えてます」
「そんな奴らいたか?まあ、いい。とにかく情報収集は奇襲において重要だ。引き続き頼む」
きしめんは直近で被害に遭った割にあまりパーティのことは気にしていなかった。
部下は「はい!」と返事して切った。
びしょ濡れのパーティに改めて自己紹介する。
「僕はカラの魔女。雨避けの姿が・・・」
改めて言いかけると、シャロンが口を挟んだ。
「卵の殻に似てるんでしょ?さっきも聞いたよ?」
赤くなって咳払いをし、仕切り直す。
「聞いてたのかよ?まあいい。ウィッチコードはチキン・リトルだ。能力は範囲を決めて水を奪い雲を作って雨を降らせる」
またシャロンが舐めた眼差しを向ける。
「雨なんて大して役に立たないよ!シャロンの氷の魔法の方が上だもんね!!」
「雨を舐めるな!地形を使えば街を水で埋めることだってできるんだぞ!それに、雨にする水に毒を入れへば大量虐殺だってできる!!」
「そんな悪いことするなよ。悪に憧れる年頃?」
『ムカつく・・・』
アスタの言葉による怒りを鎮めるために一旦黙る。
「それで依頼内容だけど、コレ」とチキン・リトルが雲を指した。
「この雲ここ3日ほどいるんだ。僕がいくら降らそうとしても雨にならない。ここはあまり風も吹かないからずっと滞在してる」
パーティが雲を見上げる。
「へー、ずっとあるのかと思ってた」
「違う。3日前に変な鳥みたいな空を飛ぶ機械が大きな音を立てて飛んだあとに雲ができてさ、この辺を飛び回って雲で覆ったらどっか行っちゃったんだ。また何日かしたらその轟音が聞こえて雨が降る。こんなことが何回も続いてる」
アスタに答えるとキャメリアも質問した。
「変な鳥みたいな機械って?」
「わからない。羽ばたかないで前には風車みたいなのが付いていたよ。初めて見たんだ」
チキン・リトルが悩む。
「このままじゃこの辺の草花が太陽を浴びれなくて枯れちゃうし、僕もこの暗さが鬱陶しいんだ」
「なるほどね。俺らも依頼書を見て事前に調べて来たんだ!雨を降らせる方法!1つずつ試してみるか!!」
アスタの後にキャメリアが手を挙げて続く。
「はい!まず私から!」
4人でチキン・リトルの家に入った。
布と綿と紐とペンをそれぞれ用意する。
「私の親戚筋の異国の風習なんだけど、てるてる坊主っていう人形を逆さに吊すと雨が降るんだって!」
3人がキャメリアの真似をして、てるてる坊主を作り軒先に逆さに吊した。
「・・・で、いつまで待てばいいの?」
「さぁ?いつでしょうね?即効性は無いかも!」
てるてる坊主を吊るす4人を見た部下が報告する。
「きしめんさん、あいつら謎の人形を逆さに首吊りしてます」
「は?意味わからん。何してるんだ?」
「俺もわかりません・・・」
部下も報告を受けたきしめんも困惑していた。
キャメリアを押し除けてアスタが前に出る。
「キャメリアのおまじないの相乗効果として俺も持って来たぜ!!さ!皆着替えろ!!」
そう言って渡された物を着た。
全身に茶・白・赤を使って体や顔に模様を描く。
男子は上半身裸、女子はタンクトップ型に草で作った服を着る。
「皆で雨乞いダンスだ!!」
火を焚いて女子が太鼓を叩き、周りでアスタが踊る。
チキン・リトルはついていけずに佇んでいた。
「ま、待って・・・。正気?」と片手で頭を押さえて、もう片手はパーティに向けて問いかける。
「お前な、自分の能力で降らせられなかったんだろ?なら他の出来る事全部試すしかないだろ!!今やれることやろうぜ!!」
言い返せなくて黙って踊った。
「きしめんさん!次はあいつら儀式し始めました!!火を囲んでボディペイントと民族衣装着てめっちゃ踊ってる!!」
部下が驚愕しながら報告する。
「儀式だと?何が目的なんだ?」
「全く読めません!!逆さの首吊りと謎の踊り・・・呪いの儀式かもしれません!!」
「大丈夫かよ、おい・・・。お前まさか監視がバレて呪われかけてる?」
きしめんは部下が呪われるのかと心配し始めた。
結局降らなかった。
「降らなかったな。いけると思ったのに・・・」
「馬鹿なの?雨乞いって雨が降るまでやるもんなんだよ!必要とあらば何日もかけてすんの!!」
しかし女子達が満足そうに返す。
「でもいい運動になったわね!」
「ご飯美味しく食べれそう!」
『脳内お花畑共め!!』
さすがに女子には強くは言えず、ぐっと言葉を飲み込んだが拳は強く握った。
チキン・リトルが呆れながらボディペイントを落とし、着替えるとアスタの腹が鳴る。
「そろそろ飯の時間か・・・。サンスベリア行くか!!」
「そうしよー!」
「いいわね!」
能天気なパーティに溜息を吐いていると、シャロンに手を引っ張られた。
「ほら、行くよ!!」
「え?僕も?」
強引に引っ張り連れて行かれた。
残すはシャロンの方法のみとなった。
チキン・リトルは一抹の不安を残してパーティに連れて行かれたのであった。




