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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
メリリーシャの街
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アスタの魔法!?

アスタはきしめんに肩をキリで刺され、血が滴りながらも逃げたせいで痕跡を残してしまっていた。

きしめんが血が滴った跡を追うとケーキ屋の“knot”の文字の書かれた扉を見つけた。

「見つけたぞ!」

扉を勢いよく開けると冷気が漏れるただの冷凍庫で、中には誰もいない。

「おい、こっちだ!」

きしめんが振り向くとペットボトルを投げ渡された。

それを受け取るとパンパンに膨れている。

「俺には空気を膨張させる魔法がある!!」

慌てて手放したが、すぐに空中で爆ぜた。

ペットボトルから粉が散布する。

「ただのドライアイスだろうが!また粉塵爆発か?芸のない奴だな!!」

アスタを見るとすでにいなかった。

「逃げ足の速い奴め!腕じゃなく足を狙えば良かった!!」

すぐに追いかけると、ある路地に入って行くのが見えた。

アスタが入った路地へ進むと、アスタが井戸の前に立っている。

「散々おちょくってくれたな!たっぷりとツケは返させてもらうぞ!!」

きしめんは踏み込んでハンマーを振り上げた。

振り下ろそうとすると空中で止まり、柄が手をすり抜ける。

唖然として上を見ると、巨大な蜘蛛の巣のような透明な網に引っかかっていた。

「何だ!?」

「この狭い路地じゃ上下にしかハンマーは振れないだろうから、上にトラップを仕掛けさせてもらった!」


ノーティーエッグズ【蜘蛛の糸】

蜘蛛の糸の粘着性と強度をさらに強化して、人間用に改良されたいたずら用の網だよ!

これでガミガミオヤジの杖も、いじめっ子のバットも取り上げられるぞ!


「どこまでもなめたまねをしやがって!!」

きしめんがさらに怒る。

走ってアスタを素手で殴りにかかると足元のワイヤーに気づかず躓いた。

アスタが横に避けるときしめんが井戸の手前で突っ込むのを片足で堪えたので、背中を蹴ってとどめを刺す。

“ドボン”という大きな音と共にきしめんは井戸に落ちた。

「やったね、アスタ!」

「シャロンも仕掛ける位置が完璧だ!」

シャロンが陰から出てくる。

「生きてる?」

アスタとシャロンが覗くときしめんが顔を水面に出していたが身動きが取れなさそうにしていた。

「くそ!何だこれは!?動けん!!」

「俺さ、炎以外にも氷の魔法が使えんだよね!しかも同時に!!」

きしめんが睨む

「んな事できるわけないだろ!」

「でも現にしてるだろ?」

体の周りから水が固まっていくが、何故か熱を帯びている。

『水が氷の様に固まりはするが、温度は熱い!』

「これが俺の魔法だ!!お前の炎のみよりよっぽど強いだろ!」

上から指差すアスタを悔しそうに睨みつけた。

『確かに、恐ろしい奴だ・・・。この魔法、特殊すぎる。こいつはただのガキじゃない。一体何者だ?』

考えているとアスタが何かをちらつかせていた。

「それはさて置き、これは戦利品として有難く頂くわ!」

「わ!財布!」というシャロンの声に見上げると、自分の財布をアスタに奪われていた。

「あ!こら!!返せ!!」

「わ!めっちゃ入ってる!!」

「流石四天王!潤ってるね!」

次第にアスタ達の声は遠くなっていった。

「ふざけんな!お前ら!!」

すでにアスタ達の声は聞こえなくなっていったが別の方向から足音が近づいてきた。

「誰かいるのか!?パルフェか?葵か?助けてくれ!」

逆光で見えないが、フードを被った人物が覗いている。

「・・・誰だ?」

しばらく見ていると瓶を取り出し、中身をひっくり返した。

中身が降ってきて初めて何が入っていたのかを知る。

「うわ!!ちょっ!何だこれ!?」

落ちて来たのはムカデやゴキブリ、いわゆる害虫だった。

「誰なんだお前!?」

再び上を見るとすでに誰もいない。

「あのガキといい、今の奴といい、何だったんだ?」

きしめんは遠い空を見上げていた。


「ねぇ、アスタ。さっきの魔法ってどうやったの?シャロンにも使える?」

「魔法じゃねーよ。てか俺魔法使えねーし!」

あっけらかんとして両手を挙げるアスタを不思議そうに見る。

「井戸に行く前に蹴られて革細工の店の荷物に突っ込んだんだよ。その時に革の加工に使う薬を手に入れてな、それをペットボトルを爆発させてあいつにぶっかけてやったんだ!」

シャロンが首を傾げた。

「掛けたらどうなるの?」

「革の加工に使う薬を水に溶かすと一気に固まるって昔聞いたことがあるんだよ!モノは試しだよな。本当にあんなに固まるとはな!」

シャロンが感心する。

「へぇー!じゃあ何で熱くなるの?」

「詳しくは知らんけど、話を聞いた時には40〜50度にはなるって言ってたな!」

アスタの知識に手を叩いて褒める。

「すごい!アスタ物知りだね!」

「まあ、それ程でもあるかな!」

得意気にしてから、ファルシから貰ったバッグを見た。

「・・・この知識はファルシからなんだけどな」

「ファルシに感謝だね!」

アスタ達はホテルへと戻った。


きしめんが叫ぶことを諦めて大人しくしていたら、葵が井戸を覗いた。

「きしめん!」

「葵!!」

仲間の声を聞いて思わず嬉しさを表に出して呼びかける。

「何だ、これは?一体何が・・・」

「コロシアムの前にいた赤髪のチビと謎のフードにやられた!!」

『赤髪のチビ・・・アスタか』

葵が少し考えていると、また呼びかけられた。

「悪いが、ハンマーを取ってくれないか?氷?のような物で体を固められたんだ!」

葵が空中にぶら下がるハンマーを見る。

電撃で網を焼き、ハンマーを下ろした。

「よくこんなのを振りまわせるな・・・」

ハンマーがとても重く地面を引きずりながら井戸まで運ぶ。

「きしめん、これを下ろそうか?」

「頼む」

葵はハンマーにワイヤーを通して慎重に下ろした。

顔の近くまで来たが手が使えないのでハンマーの端を咥えると炎を纏わせ、みるみるうちに体の周りが溶けていった。

動けるようになったきしめんがやっと井戸から這い上がった。

「助かったよ、葵!」

「この近くを通ったらお前のハンマーが宙に浮いていて驚いたよ」

きしめんが苦いものでも食べたかのように表情を歪める。

「あのチビはただのガキじゃなさそうだ。変な能力を使ってきやがる!」

「変な能力?」

葵も眉をひそめて聞き返す。

「氷と炎を同時に使ってきた!」

「何だそれは?そんなことが可能なのか?」

「俺も信じ難いが実際に今、あいつが井戸の水を氷のように固まらせたが、その氷が熱を持っていたんだ!」

「そんな能力が、・・」

葵も半信半疑だが、きしめんの真剣な言葉と実際に目にした事を信じることにした。

「しかし、無事でよかったよ。俺は用事があるのでこれで失礼する」

「え?今からメリリーシャでの拠点に行くんだろ?電話しただろ、昨日」

記憶を巡らすが、葵は身に覚えがなかった。

「電話?」

とりあえずケータイを開いて履歴を見ると、確かに通話履歴があった。

「あれ?応答している。」

「ほら、昨日俺が電話しただろ?」

きしめんが不思議そうに昨日を思い出す。

「それにしても、チビと一緒にいた魔導師のガキが第一声で「お待たせ」とか言ったんだよ」

葵が引っかかり、ゆっくりと聞き返した。

「・・・お待たせ?」

「そう。しかもその後の口ぶりがあたかも俺たちの電話の内容を知っているかのようだったんだ」

葵は昨日部屋にケータイを忘れて、シャロンを自室で待機させたことをやっと思い出した。

『シャロンのヤツ!電話に出たな!!』

謎が解けた途端、大量の汗をかきはじめた。

「あいつは「夕方まで待っててくれたんだ」とか言ったんだ。確かに電話で昼頃にと俺は言ったが・・・」

葵の表情が歪み、どんどん青ざめる。

「へ、へぇ〜。変な奴だなぁ」『シャロンめ・・・余計なことをベラベラと!!』

きしめんが葵に向き直る。

「まあ、ガキの戯言は取るに足らん事か。で、これからどうする?お前のは急ぎの用なのか?」

『別に急いじゃないが、これ以上こいつといるとボロが出そうだ』

「そうそう、少し急いでいてな。メリリーシャの拠点はまた別の機会に行かせてもらうよ。悪いな!」

「そうか。お前も来た今、この街に四天王が揃った状態だ。他の奴に案内をしてもらうこともできるから好きにしろ。それに仮拠点だからな。また変わるかもしれん」

そう言ってきしめんは去った。

それから真っ先に葵はシャロンの元へと走る。

「シャロン!!何故勝手に電話に出た!?しかもご丁寧に会いに行きやがって!!」

シャロンのこめかみを拳で挟んでグリグリと回す。

「やーーん!ごめんなさーーい!!」

「会う前にまずは!俺に!報告!だろうがーーー!!」

「やぁぁーーーーーん!!!!」

この後シャロンは沢山説教を食らった。

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