グラディエーター
アスタと葵がコロシアムに戻ってきた時にはまだ試合は始まっていなかった。
「アスタ!葵さん!」
「間に合ったのね!まだ始まってないわよ!」
シャロンとキャメリアが安心したように出迎える。
「始まってないの?」
「さっき開始の花火が打ち上がっただろ?」
不思議そうにアスタと葵が質問をした。
「その花火の時に近くで爆発と火柱が上がったらしくて、さらに武器も窃盗があったから何かの事件かもってなったの!」
「安全確認の為に開始を延長していたのよ!」
事情を聞き、アスタが深く椅子に座る。
「そうか」
「まあ、間に合ったし、良かったよ」
場内のアナウンスが流れ、コロシアムはやっと始まった。
「大変長らくお待たせ致しました。ただ今の爆発及び火柱の安全確認が終わりましたので、試合を開始させていただきます!」
会場に歓声が湧く中、グラディエーター達が続々と入場した。
「ムキムキばっかだよ!キャメリア!」
「かっこいいわね!!」
シャロンもキャメリアもはしゃいでいると、アスタは本命のキャメロットのコールをしている。
「キャメロット!キャメロット!」
逞しい男性達の中に女性グラディエーターが周りに手を振りながら出てきた。
「来たーーーー!L・O・V・E!キャメロット!」
「うるさい!」
葵に一喝される。
女性のあとに小柄な選手が出てきた。
「すごく小柄な人が来たよ!まだ子どもじゃないの?」
「大丈夫かしら?」
シャロンとキャメリアの心配を他所に、会場はさらに沸き立つ。
「あの小柄な選手はブラックサレナだ。2年前突如現れ、コロシアムの優勝を根こそぎ奪っている超新星だ!」
選手6人が会場の真ん中に揃い、武器を構えた。
鐘が鳴り響き、試合が始まった。
開始早々にキャメロットが動き出し、大柄の男と対峙する。
男がハンマーを振りかざすと、キャメロットが素早く懐に潜り込み、下顎目掛けて拳を突き上げ、アッパーで相手をダウンさせた。
「す、すげー!」
「さすが、強いわね!」
また別の所では小柄なブラックサレナが大柄な男2人に襲いかかられていた。
「あそこのブラックサレナ、2人同時に襲ってくるよ!」
1人は棍棒、1人はアックスを振り下ろす。
ブラックサレナは慌てることなく後ろへ退き、ギリギリで避けるとジャンプして棍棒の男の頭を蹴り飛ばした。
そのまま着地し、さらにアックスの男の顎を右下から殴ってノックダウンさせる。
残るはブラックサレナと、キャメロットと、フィストという名の男だ。
フィストが先に動き、ブラックサレナに襲い掛かる。
紙一重で避け続けていると背後からキャメロットがブラックサレナに斬りかかった。
それを大きく退いて避ける。
キャメロットが追撃で片手剣で突くと避けたものの、頬をかすめて切った。
2人が対峙しているところに死角から近づいたフィストがブラックサレナを殴り飛ばす。
戦況に会場が大きく沸き立った。
キャメロットがフィストに剣を向ける。
フィストが突進して殴りかかった。
攻撃を避けていると、キャメロットの背後は壁しか無くなってしまった。
逃げ場がない。
それでも勇ましく剣を構えて相手に向けている。
フィストが余裕の笑みで拳を構えると、急に前屈みに悶絶しだした。
ブラックサレナが背後から股間を蹴り上げたのだ。
フィストは激痛のあまり、膝から崩れ落ちていく。
アスタと葵はその光景に鳥肌を立てていたし、自然と膝を閉じていた。
「今のはちょっと・・・」
「嚙みつき、目潰し、金的もありだからな。・・・とはいえ見るに耐え難い」
残る2人が対峙するとキャメロットが攻め、ブラックサレナが避けた。
「ブラックサレナの避け方には無駄が無いな」
「どういうこと?」
アスタが尋ねると目線でブラックサレナを追いながら答える。
「ギリギリでかわしているから体力の消耗が少ないんだ。俺も勉強になるよ!」
「へー、なるほど!」
話していると大きく展開が変わった。
キャメロットが剣を振り下ろすと、ブラックサレナは高く飛び上がり、ポケットに入れていた麻ヒモを首に掛けて背中に背負い、締める。
キャメロットの意識が次第に失せて動かなくなった。
「わー!!俺のキャメロット!!」
アスタが立ち上がり、会場内に飛び込む。
「アスタ!?」
「人口呼吸!行っきまーーーす!!!」
「ウソ!ここ超高いわよ!?」
アスタ、コロシアムの片隅で着地失敗。
「ぅぐう!!!」
コロシアムのみんなは黙ってアスタを見つめていた。
キャメロットはブラックサレナによってすでに起こされていた。
「キャメロットさん、もう救助されちゃったよ・・・」
「当たり前だ。呼吸をしなくなって3分経つと人は死ぬ」
「哀れね」
拳を高らかに天に掲げる優勝者に会場全員が歓喜に渦巻いた。
その片隅でひっそりとアスタは担架で運ばれていった。
四姉妹がパルフェの元へ行く。
「あのチビがいないじゃないの!まさか仕留め損ねたの?」
「パルフェ様、ご報告申し上げます」「我ら3人は情報通りと思われるチビを発見致しました」「しかし人違いだったらしく、葵様が情報源とされている町人だったようで、攻撃をやめるように言われました。なので何もしておりません」
その報告に怒るどころか大いに喜んだ。
「葵がこの近くにいるの!?」
「ええ、そのようです」
それからパルフェが憔悴し切るマンゴーを心配そうに見る。
「で、マンゴーはどうしたの?」
問いかけると両手を大きく左右に振って泣きながら強く拒否をした。
「あの者はいけません!とても恐ろしい奴です!!手を出していい相手ではありません!!」
「い、一体何が・・・」
マンゴーが今までに見たことないくらい震えているので、これ以上問いただすのをやめた。
「まあいいわ、ご苦労様。マンゴーもこんな状態だし、あとはゆっくりしてあなた達はこのまま魔王様に報告に行きなさい。私はこれから葵と合流するわ!」
パルフェが双眼鏡を覗くとコロシアムにいる葵の姿が見えた。
「あ!本当にいた!コロシアムに行ってくるぅー!!」
パルフェは嬉しそうに走っていった。
そしてパルフェは完全なる私情で千里眼の回数を一度無駄にした。




