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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
メリリーシャの街
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四天王きしめん

葵はコロシアムを目指して路地を歩いていると名前を呼ばれた。

振り向くと声の主はきしめんだった。

「きしめん!もうメリリーシャに来ていたのか・・・」『よりにもよって厄介な奴に・・・』

平静を装いつつきしめんを見ると、相手は不思議そうな顔を向ける。

「昨日電話しただろ?今から連れていこうと思っていたが、コロシアムの偵察依頼が入ってな。悪いが夕方からにしてくれ」

葵はピンときていない様子だったが、構わず続ける。

「それよりお前、今一瞬嫌そうな顔しただろ?」

一瞬の反応を逃さなかったきしめんに対して、体を硬らせたがすぐに否定した。

「そ、そんなことないよ」

「ふーん、まあいい。それより、どこ行くんだ?」

腕を組んで訝りながら聞くきしめんに「コロシアムにちょっとな・・・」と答えた。

「コロシアム?お前も仕事か?」

「俺はホテルの支配人からチケットを貰ったんだ」

内ポケットからチケットを出して見せる。

「そうか。今コロシアムで目立っている奴がいるそうだな」

「そいつを見に行くんだよ」

きしめんがまた不機嫌そうな顔する。

「そいつを拉致らちして魔王様に献上するのか?」

「何でもいいだろ。俺は行くからな」

葵が背を向けると別の方向から呼びかけられた。

「葵?」

声の方向に振り返るとアスタがいた。

「知り合いか?」

きしめんが覗くとアスタも「誰かいるのか?」と覗こうとする。

『きしめんと出会うのはまずい!』

しかし何も知らないアスタが近寄ってくる。

「早くしないと始まるぞ!」

葵に近づき、初めてきしめんの存在に気づいた。

「き、きしめん!」と目を丸くして驚く。

「誰だ、お前?葵の知り合いなのか?」

きしめんがアスタを睨みながら観察した。

「人違いだろう」

「会話を聞かれた可能性もある。始末するか」

きしめんの申し出に葵が前に出る。

「いや、俺がしよう」

アスタをサーベルで峰打した瞬間に電撃を軽く走らせて、失神させた。

「内臓を焼いた。この辺ならスライムの孤児が餓死で片付けられるだろう。誰かが来る前に行こう」

きしめんは倒れるアスタを一瞥いちべつし、その場を去った。


足音が消え、アスタはすぐに目を覚ました。

「いてて・・・まさかきしめんがいたとは・・・」

体を起こし、路地を出ようとしたら目の前にきしめんが立っていた。

「あ・・・」と思わず声を漏らす。

「やっぱり葵の奴は甘いなぁ。峰打か」

アスタが大きな足で蹴り飛ばされた。

あまりの速さにいつ蹴られたのか認識できず、気づいたら既に路地の奥にある壁にぶつかっていた。

「ちゃんと始末しねぇとな!」

顔を上げるとすでに間合いを詰められ、拳が振り下ろされている。

アスタは足を開いてギリギリかわすと、地面に拳がめり込んだ。

『や、やべぇ!!女の子になっちゃう!!』

急いで起き上がり路地へと逃走する。

『刀は置いて来たし・・・いや、そもそもの戦力差が桁違いだ!!素人が刃物持ったところで牽制にすらならねぇ!!本気で殺される!!どうする!?』

きしめんがハンマーを構えて追いかける。

かなり大きなハンマーにも関わらず、スピードが早くすぐに間を詰められた。

振り下ろされたハンマーは炎を纏いながら襲いかかり、飛び散る火の粉がアスタにダメージを与える。

「あっつ!!炎!?」

ポケットを探ると今朝ホテルで貰ったマッチがあった。

「俺の火力じゃ敵わなさそう・・・」

「どうした?マッチで俺に対抗するのか?」

ハンマーがまた頭上から下りてきた。


葵がコロシアムに戻ると、アスタがまだ戻っていなかった。

「アスタはまだか?」

「葵さん!」

「一緒に来たけど、どっか行ったっきりよ」

女子2人の証言に顎に手を当てて考える。

『電撃が強すぎたか?』

葵はアスタの刀が置いてある隣の席に座った。

『それか最悪きしめんとまた出会ってしまったか・・・』


アスタがハンマーを横に避けて再び走り出す。

「あの図体で足速えんだよ!」

また追いつかれ、蹴りを繰り出そうとするが、横道に入り間一髪回避した。

きしめんが勢いで荷物に突っ込む。

「へっへーんだ!ざまみろ!」

しかし前を向き立ち止まった。

なんと、目の前はパン屋の倉庫があるだけの行き止まりではないか!

荷物から飛び出す音を聞き、仕方なく急いで中に入る。

きしめんがアスタが避けた横道に入り、半開きになった倉庫の扉を見るとニヤリと笑った。

「袋小路とは正にこの事だな!」

中に入り、電気を点ける。

明かりを点けたにも関わらずとても暗い。

「倉庫か」

きしめんがハンマーを背中にしまい、奥へと進んだ。

「狭い場所ではハンマーを振れんから封じたつもりか?俺は格闘術も得意なんだよ!」

荷物の間から見える影に「見つけた!!」と叫んで拳を打ち込んだ。

すると小麦粉が勢いよく宙を舞う。

「ダミー人形!?」

「ヘイ!脳筋野郎!」

アスタは扉の向こうにいた。

「粉塵爆発って知ってるか?」

ポケットにあったマッチを擦ったら、一気に引火し、爆発が起きた。


コロシアム開始の合図として花火が打ち上がる中、異質な“ドン”という重低音が響いた。

葵が反応する。

『花火とは別の爆発音!まさか本当にきしめんと遭遇したのか!!』

「アスタを探してくる!」

葵は立ち上がり走って行った。

「え!葵さん!?」

「始まるわよ!?」

2人が声をかけた時には既に姿が見えなくなっていた。

「早〜」とシャロンが呆気に取られる。

葵が向かう途中、廊下でスタッフの会話が聞こえた。

「ボウガンと矢が足りないぞ」「ちゃんと探したのか?」

一瞬気にしたがすぐに前を向いた。


「熱っ!熱っ!」

アスタは手で体を払いながら走る。

「ふぅ・・・。なんとかやれたか・・・」

服についた火を消しながら大通りまでやって来た。

「追ってきても流石に人が多けりゃ何も出来んだろ!ま、あの爆発じゃ追えんだろうがな!」

高笑いをしてコロシアムまでゆっくり向かおうとするアスタを、炎が背後から迫りあっという間に取り囲む。

「炎!?まさか!」

振り返るときしめんが炎を纏って追ってきていた。

「あの爆発だぞ!?化物かよ!!」

「普段から炎を扱ってる分、耐性もあんだよ!」

「だとしてもだろ!!」と言うが怒りに満ちたきしめんはハンマーを構えて殺気をありありと放つ。

「なめやがって・・・ぶっ殺してやる!!」

『ひぃぃ!こいつとタイマンは死ぬ!』

絶体絶命のアスタにハンマーを振り上げた。

辺りは炎で囲まれ逃げ場が無い。

『俺もここまでか!!』と覚悟を決めていると、炎の中から矢が一本飛んできてきしめんの腿の外側に刺さった。

「ぐっ!!・・・誰だ!?」

きしめんが振り返り、その場で片膝をつく。

その隙にアスタがきしめんを踏台にして炎の外へ出た。

「じゃーな!火が低くて助かったわ!!」

「あ!クソ!」

悔しがっているとパルフェが建物の屋根から炎の中に飛び込む。

「パルフェ!何故ここに!!」

「派手な爆発と火柱立ってりゃ気になって来るわよ!それより、何があったの?」

きしめんが足に刺さった矢を抜く。

「赤髪のチビを始末しようとしたら矢が飛んで来た!」

パルフェが腹立たしそうな表情を見せた。

「そのチビなら心当たりがあるわ。部下に情報を伝えて始末するよう命令を出しましょう」

そして辺りを見渡たす。

「それと、これだけ人の多い場所で目立ちすぎたわ!行くわよ!」

「そうだな」

2人は炎と共に消えた。


葵が現場に行くとすでに誰もいなくなっていた。

人混みから会話が聞こえる。

「炎から少年が出て来たわ!」「女性が屋根から飛び込んだのも見たぞ!」「炎が消えたと思ったら、誰もいないし・・・」

葵はその情報から考察した。

『炎・・・やはりきしめんと戦ったのか。少年はアスタだろう。じゃあ屋根から飛び込んだ女は?パルフェが応援に来たか?』


アスタが走って逃げる。

「ここまで来りゃ大丈夫だろ!」

振り返って確認していると、声をかけられた。

「チビで赤髪」「パルフェ様の情報通り」「あなたね」

声に振り返ると3人の魔王軍の制服を着た女がいた。

「誰だ!パルフェの仲間か?」

「私はいちご」「私はショコラ」「私は抹茶」

「パルフェ様の部下パフェー四姉妹よ!!」

いちごは赤、ショコラは茶色、抹茶は緑とそれぞれ髪色が違ったよく似た3人組だ。

「3人じゃん」と指差す。

「あとの1人、マンゴーはあなたの仲間できしめん様を狙撃した奴を始末しに行ったわ!」

『誰か知らんが分散したのは有り難い!とはいえ3人相手か・・・』

すると、アスタは不適に笑みを浮かべながらポケットからマッチを取り出した。

「さっきの火柱あったろ?あれ、俺の魔法だ!」

自信満々に言うがすぐにバレる。

「嘘よ」「マッチじゃ無理よ」「あれはきしめん様の能力よ」

「う・・・」『バレてる。どうしよ・・・』

しかし、負けじと再びキメ顔を作る。

「火を使えるのがきしめんだけとは限らないんだぜ!!」

マッチを擦って点火してみせた。

「ふふふ!さあ、どうする?」

にじり寄るアスタの異様な雰囲気に3人が怯んだ。

だが、マッチが徐々に燃え、指先を焼く。

「あっつ!」と慌ててマッチを捨てた。

「使えてないじゃん!」と3人の声が揃ったツッコミ。

そこに葵が間に割って入った。

「待て!そいつは俺が情報源としている一般人の1人だ!」

「あっつ!」

アスタは葵の後ろでまだマッチを燃やしている。

葵の言葉を聞いて3人が驚き相談し合う。

「え?」「どうする?」「でもパルフェ様が・・・」

そこへ葵が口を挟んだ。

「たしかに似ているが人違いじゃないか?とにかく、こいつを傷つけられると困る」

戸惑いながらも3人が了承する。

「わかりました」「しかしこちらとしましても報告が必要です」「そのまま伝えさせていただきます」

「わかった」

3人は去っていってくれた。

「葵サンキューな!」

「お前は無茶をして・・・。怪我は無いか?」

指先を見せる。

「指先を火傷しちゃったよ」

「きしめん相手に指先の火傷だけで済むとはすごいじゃないか!!」

葵が感心する。

「いや、さっき自分のマッチで・・・」

「・・・そうか」

2人はコロシアムに戻った。


三姉妹は葵と分かれてから話し合っていた。

「パルフェ様への報告の前にマンゴーと合流しましょう!」「そうね!」「でも連絡が来ないわ!」

抹茶が手元のケータイを見て傾げる。

「おかしいわね・・・」「マンゴーは四姉妹の中でも最強だから1人で向かわせたのに」「何かあったのかも!行きましょう!」

3人が駆けつけるとマンゴーが虫まみれの姿で倒れていた。

「きゃー!」

3人とも悲鳴を上げる。

「マンゴー!?」「とっても近寄りたくない状況ね」「大丈夫?」

「・・・ダメ」との呟きを最後に気絶した。

3人はがんばって虫を時間を掛けて払っていた。

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