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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
開拓の島 アンティパスト島
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蠢く

校庭で木材を運んだり、草抜きをしていると、魔王軍のリーダーが視察に来た。

「おい、お前ら!サボらずに作業をしているのか?午後の進捗を話せ!!」

全員が手を止め立ち上がり、気をつけをしたらソバカスが報告する。

「はい!ただ今中継地点の木材をこちらに運んでおりました!進捗は順調、本日のノルマは達成予定です!」

「そうか。引き続き作業をするように」

リーダーが伝えて去ろうとしたらアカガミが腕のほつれを指摘した。

「あ!リーダー!腕がほつれてますよ!」

指差す先を見て本人が気づく。

「今朝のか・・・」と呟くリーダーに「俺が縫いましょうか?」と素早く提案するアカガミ。

目ざとさが見え隠れする様子を横目で睨む。

「そういえばお前、報告で聞いてるぞ。また今日も遅刻したんだって?俺への好感度稼ぎか?」

そう言われて分の悪そうな表情をした。

「あ、いや!それは〜・・・えへへ」

「ふん!笑って誤魔化すな!・・・まあいい。確かに、ほつれたままじゃ仲間に示しがつかん。綺麗に仕立てろよ!」

そう言うとジャケットを脱いで渡した。

「ありがとうございます!全力で縫わせて頂きます!!」

頭を下げて受け取る。

すると、すかさずソバカスが前に出た。

「あ!リーダー、少し顔を上げて下さい!!」

「は?何でだ?」

疑うリーダーに「早く!!」と慌てた様子で言うと、黙って顔を上に上げた。

「動かないで下さいよ・・・」

「な、何だよ?何なんだ?」

慎重に襟元を指先で触るソバカスはアカガミにアイコンタクトを送ると、リーダーの背後からズボンのポケットに手を伸ばし、隊員から没収したおもちゃを抜き取ろうとする。

「おい!何なんだよ!?言えよ!!」

痺れを切らしたリーダーが顔を下げると、「あ!!」と大きな声を上げて思い切り襟元を払った。

足元を見ると、黒いカメ虫のような甲虫が地面に転がっていた。

「虫・・・か?」

首元を押さえ、唖然と足元を見るリーダーの奥にいるアカガミを見ると、頷いて返した。

「危なかったですよ、リーダー!これ前に図鑑で見ましたが、サシガメというカメ虫の仲間です!名前の通り人を刺して、恐ろしい伝染病を媒介するやつです!!」

「ひゃー!危なかったですね、リーダー!!この島じゃ見かけないから、きっと荷物とかに付いて来たのかも・・・」

ソバカスが指差して言うと、アカガミがすぐに恐怖を露わに口を出した。

固唾を飲んで冷や汗を垂らしながら背を向けて歩いていく。

「あ、ありがとう、助かったよ。アカガミ、ジャケットは至急で頼む」

足音が遠ざかってから頭を上げる。

2人がニヤニヤと笑いながら見送っていると、陰からクセゲとガリも出てきた。

「ふん!教養はあっても、虫図鑑はあまり見てないようだな!!」

「どう見てもただのカメ虫だっての!!」

ミッションを達成したアカガミとソバカスは自信満々にリーダーの背を見送っていた。

「おい、アカガミ!それが言ってたおもちゃか?」

クセゲが指を指して聞くと、アカガミはおもちゃをみんなに見せた。

「ああ!お外で流行ってて、見た目が入れ替われるやつだ!!」

花弁を一枚剥く。

「取れた!」

取れた花弁を更に観察して押すと、膨らみが凹んだ時にスイッチを押した時のような触り心地がした。

「なんかスイッチになってる」

「どれどれ?」とソバカスが受け取ると周りの反応が変わった。

「ソ、ソバカス!?」

「アカガミと入れ替わってる!!」

クセゲとガリに言われて互いを見ると目の前にソバカスの姿をしたアカガミがいた。

「これがお外のおもちゃか・・・」と驚きと感動が入り混じった様子でソバカスが呟く。

その言葉に3人が息を飲んだ。

「そうだ!これが俺らの知らない世界だ!!これを使ってリーダーになりすまして、船の中から制服を盗みだし、ここから脱出する!!俺らならいける!!」

リーダーのジャケットを天高くアカガミが持ち上げた。


しばらくして、アカガミがリーダーに繕い終えたジャケットを返す。

「リーダー!できました!!」

「ああ、ありがとう」

リーダーは縫製の出来具合を確認すると何も疑うことなく着る。

そして去ろうとしたところをソバカスが声をかけた。

「リーダー、こっち見て頂けますか?」

「何だ?」

ソバカスが連れ去ると、アカガミはスイッチをオンにしてリーダーになりすました。

そのまま急ぎ足で港へ向かう。

「リーダー、お疲れ様です!」

他の隊員が何も疑うことなくアカガミに挨拶をした。

「ご苦労。少し船に戻る」

偽リーダーの言葉に「はい!」と元気良く返事をする魔王軍達。

難無く入り、アカガミが制服を探す。

「あれ?リーダー、何されてるんですか?探し物ですか?」

近くにいた隊員が声をかけてきた。

慌てて振り向き答える。

「あ、ああ。さっき制服を汚してしまってな。替えってどこだっけ?」

「制服なら、ロッカールームの端にある鍵の付いたロッカーですよ!」

場所を聞き、思い出したように返答する。

「あー!そうだった、そうだった!!・・・ところで、誰が鍵持ってたんだっけ?」

「何言ってるんですか?リーダーが持ってるんでしょ?」

それを聞いた瞬間、アカガミは嫌な汗をたくさんかいた。

「そ、そうか・・・そうだったな!すまん、変なこと聞いて」

隊員は「では」と一礼して去っていった。

「おいおい、嘘だろ!?てことはあのリーダーが持ってんのか!!・・・こうなったら!!」

アカガミはロッカーを前に針金を取り出して鍵穴に差し込んだ。

「ピッキングだ!!!」

これも手品同様過去に本で読み、こっそりと練習していた技術の使い所が来た。

「開いた!!」

幸い、ロッカー程度の鍵は今までの練習の成果で開けることができ、ドアを開けると数着の新しい制服が掛かってあった。

それを急いで麻袋に詰め込む。

袋の紐を引っ張って口を閉じた時、ふと懸念がよぎる。

「あれ?このままこれを持って出ると怪しまれないか?」

リーダーの姿で大きな麻袋を持って外へ出た時のことを想像する。

他の隊員達に「あれ?リーダー何持ってるんですか?」の質問に対し「いや、ちょっと・・・」としどろもどろに答える自分。

「おい、なんか様子がおかしいぞ!!偽物だ!!」となりかねない。

この窮地を脱するのに何か良い策がないかと見渡すと、蛍光色のオレンジ色の空気を入れて膨らますゴム製の救命ボートを見つけた。

「救命ボートか・・・。何か使えるか?」

アカガミは今までに読んだ冒険モノの本を思い出したが、主人公の脱出くらいにしか使われていない。

「これを船から落として漕いで脱出・・・いやいや!そっちの方が怪しい!!」

なんとかそのまま制服を抱えて外に出られないかと船の影から周囲を見たが、なかなか人が多くて出られそうにない。

「人が多いな・・・。どうしようか・・・」

悩みながら再び上の階に戻り、デッキから海を見る。

「そうか!さっきのボートの防水性を使って濡れないように海から袋を落とせばいいのか!!」

再びボートを取り出して制服を包み、蛍光色を隠すため、麻布をさらに被せてロープをつけて海へとゆっくり下ろした。

「これで良し!」

「リーダー、何されてるんですか?」

慌てて振り向くと隊員がいた。

『まずい!見られたか!?』

アカガミは大粒の汗を垂らした。


ソバカスはアカガミの姿をしたリーダーを校舎裏に連れて来た。

「ここ、全く手付かずで草木が荒れ放題なんですよ!」

「これは酷いな・・・。今朝もジャケットを木で引っ掛けたし、ここの整地を頼む!」

リーダーが困った様な表情を浮かべ、命令をしてから去ろうとしたところを別の場所からガリが呼び止める。

「あ!リーダー!こちらもお願いします!!」

「何だ?またか?」

ソバカスもついて行くと困ったようにボロボロのナタを持ったガリが木を指差す。

「この刃ではここの伸びきった草木を刈れません!!」

「これも酷いな・・・。新調する許可を出そう。それじゃあ・・・」

また去ろうとした所を今度はクセゲに呼び止められた。

「リーダー!」

「今度は何だ!?一気に済ませろ!!」

頭を掻いて申し訳なさそうにクセゲが近寄る。

「すいません、お忙しいところを!あっちに大きな岩がありまして、このツルハシではどうにもならなくて」

またボロボロのツルハシを見せた。

「またボロボロなのか?使い方が悪いんじゃないのか?」

「いえいえ!かなり古いツルハシなので劣化かと!!」

不機嫌にツルハシを確認する。

「わかった。新調の許可をしよう」

「ありがとうございます!!」

クセゲが頭を下げる。

『どうしよう!アカガミがまだだ!時間稼ぎしないと!!』

そこへ足音が近づいて来た。

一つ年上のチョウシンだ。

その名の通り身長が高い彼が見下げるようにやってきた。

「よ!お前ら何してんの?」

「うげ!チョウシン!」

クセゲがバツが悪そうにする。

「何だよ、4人揃ってサボりかよ?俺も混ぜろよ!」

チョウシンがクセゲに肩を組む。

「いやいや、俺らはそんなんじゃないよ・・・」

「何言ってんだよ?どう見てもサボりだろ?」

見かねたリーダーが腕組みしてチョウシンに注意する。

「おい、貴様。ここは持ち場ではないよな?誰の許可を得てここへ来た?」

「あ?」と振り返るがアカガミにしか見えないリーダーにいつもの調子で話しかける。

「どうしたんだよ?いつもと違うな!何か変な物でも食った?」

近寄りリーダーの肩に手を置いた瞬間、掌底を顎に喰らわされた。

そのまま気絶してノックダウンする。

「その男を縛っておけ。もう俺は行くからな。これ以上何かあるのなら別の者に言え」

リーダーはアカガミの姿のまま立ち去った。

「ど、どうしよう!アカガミの姿のまま行っちゃった!!」

「他の団員に見られたらバレる!!」

ガリとクセゲが慌てる中、ソバカスだけが冷静だった。

「あとはアカガミに任せるしかない・・・。あいつなら何とかするさ!!」

3人で固唾を飲んだ。


アカガミは船に残っていた隊員に声をかけられていた。

深呼吸をしてから笑顔で振り向く。

「よ、よお!ちょっと船にハンカチを忘れてな!」

「そんなの言ってくれれば届けたのに!」

隊員が笑って言った。

「そのくらい、自分でするよ!皆忙しいんだから!引き続き頼む!」

「はい!」と返事をしてアカガミを見送った。

『セ、セーフ!!見られてなかった!!早く戻ろう!!』

急ぎ足で船を出て、物陰に隠れてから花弁のスイッチを押し、姿を元に戻した。

「おい、そこで何をしてる?」

振り返るとリーダーがいる。

「リーダー!すいません、この辺に家の鍵を落としたみたいで探してました!」とポケットから鍵を出して見せた。

「見つかったのなら早く持ち場へ戻れ!」

「はい!」と返してから走った。

「あっぶねー!!間一髪だったな!」

リーダーがいなくなったのを確認したら、制服を海から回収して皆の場所に戻る。

「アカガミ!!」

手に持つ袋を見て皆が喜んだ。

「お前ならやれると思ったよ!」

「一時は冷や冷やしたけどな!」

「流石だね!」

ソバカス、クセゲ、ガリがそれぞれに称える。

「あとは魔王軍の帰り際に潜り込むだけだな!」

喜ぶ4人を木陰から、先程目覚めたチョウシンが見ていた。

そして腕を縛られたままどこかへと立ち去った。

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