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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
東の大陸
27/218

魔王軍勉強会

西の大陸の入り口、ウェストポート。

主要となる港なだけあり、かなり多くの物や店があり活気に溢れている。

栄えた港町の外れにある林に紛れて魔王軍の拠点が佇んでいた。

そこに四天王のきしめん、葵、パルフェが揃う。

3人は机を前にして、椅子に座っていた。

魔王は3人を見渡し、言葉をかける。

「あなた達は本当によく働いてくれてるわ。今回、そうめんには大きめの仕事を依頼したから今こちらに向かってる最中だけど、全員集合とはいかなくて残念ね」

一呼吸置くと、話を続けた。

「あなた達の実力は過去に私が作った組織の中でもかなりハイレベルなものよ。実力も整ってきたから、ここの大陸もそろそろ本腰を入れて征服していこうと思うの。この大陸には少し思い入れのある土地もあるし、期待しているからこそあなた達に任せたいの!」

四天王達は魔王の話を黙って聞く。

「そこで、事前に西の大陸ではパルフェとそうめんに依頼をして、土地の下調べや拠点探しを現在進行形でしてもらってるの!でも、都市に行く前に、私たちはもう一つ大きな仕事を抱えているわ。それは先日から四天王にわざわざ出向いてもらってる魔女狩り・・・」

この言葉をうんざりしたように言い捨てると、魔王は大きなため息を吐いた。

「東西の大陸に散らばってるから、さっさと片付けて大陸の平定に移行しちゃいたいのよね。で、今回集まってもらったのはみんなでお勉強会をしようと思うの!」

「勉強ですか・・・」とあから様にきしめんが嫌そうな顔をする。

「ええ。魔女を倒すにはまず、魔女を知らなくちゃね!今回講師を頼んだのはそうめんの部下であるドロップと、その助手を務めるギンジョー!」

紹介された男子隊員2人が入ってきた。

2人とも端正な顔をしている、いわゆるイケメンである。

ギンジョーは制服だが、説明担当のドロップは博士のような白衣を着て眼鏡をかけている。

「いつもそんな格好してたっけ?目悪かったか?」ときしめんに指摘された。

「今回講師ということなので、見た目を重視してみました!あとこれは伊達眼鏡です!白衣とかメガネとか先生っぽいでしょ?」

中性的な美男子スマイルで返されたが同性のきしめんは「はいはい」と呆れて返答する。

すると、隣のギンジョーが「俺はいいと思うよ!見た目って大事だよな!」と謎のフォローを入れるし、資料を手渡しするのに目を合わせて微笑み合い、まるでカップルのそれだった。

「何、あいつら?できてんのか?」とさすがに葵も呆れる。

「訓練生の時から異常に仲良かったよな?」と言うきしめんに同じく教官として接したことのある葵も頷く。

「まあ、見栄えも良い2人だし、どうでもいいんじゃない?」とパルフェ。

「お前興味無しかよ?」

きしめんが言うと、一部始終を聞いてた2人が赤くなる。

「もう、違いますよ!!変なこと言わないで下さい!!」

「そうですよ!確かに他の隊員より仲は良いですが、ただの仕事のバディーです!!きしめんさんにドロップがいじられたのでフォローくらい入れます!!」

2人に怒られて「俺のせいかよ」と不貞腐れて呟いた。

騒がしくなったので魔王が仕切り直す。

「仲が良い事は美しき事よ!いい、みんな!今回彼らを講師に選んだのは、間に合わなかったそうめんに同じ説明ができるようによ!この日の為に忙しい中、魔女について調べてまとめてくれたの!だからちゃんと聞いてじゃんじゃん魔女狩りしっちゃって!!きしめん!あまりいじめないように!!」

「え!?俺ですか!?」

突然の名指しに目を丸くする。

「それじゃ、頼むわね!」と魔王は去った。

「早速、魔女についての勉強会を行います!」

ドロップから顔を外らせてきしめんは「けっ!」と言い捨てて拗ねていた。

ギンジョーが黒板を運ぶと、そこには葵がこの前討伐したキャンドルとシンデレラの心臓の写真と、魔女のイラストが貼られていた。

「こちらは先日、葵様が討伐されたキャンドルとシンデレラの心臓の写真です!」

「あれ?回収したのか?」

葵の質問に「はい!」と爽やかな笑顔で返す。

「実は今回の魔女狩りの最重要ポイントはここなんです!こちらを見て下さい!」

そう言ってイラストの胸の部分を指し棒で指す。

「魔女は心臓と核の2種類から構成されています!知っての通り、魔女とは魔力の強大な魔獣が突然変異で知性を持ったものですよね!ほとんどの魔女は人の形をしてますが、たまにキャンドルのように人以外の形をしていることもあります!」

「そうだな・・・確かにキャンドルは液状で家と同化していたよ。全然人の形はしていなかった」

葵の証言にパルフェもきしめんも「へー」と興味がある様子で聞く。

「心臓は魔獣として生まれた時から持つ物なので、主な魔力の貯蔵はここでされてます!それと対になるのが核です!こちらは我々で言う脳に当たります!つまり知性を司る場所ですね!」

そう言うとドロップはイラストの頭の部分を指した。

「魔女狩りはただ肉体を倒すだけではいけません!この核と心臓があれば魔女は別の動物なり人なりの体を乗っ取って復活してしまいます!!キャンドルのような人形ひとがたでない例外もありますが、魔女になるには魔獣が人や生物の体を乗っ取って知性を得ているのです!!」

「はい!質問!」と手を上げる葵をドロップが「どうぞ!」と指す。

「俺は魔女狩りで脊椎から脳を焼いて再起不能にしたはずだ!だから結果的には討伐できたのでは?その証拠に復活できてなかったよな?」

「ご質問ありがとうございます!葵様のおっしゃる通り、核は電撃の熱で焼失しておりました。なので僕とギンジョーが回収に向かった際にはキャンドルもシンデレラもただの蠢く細胞になっていたし、隣接して置かれていた燃え盛るシンデレラの心臓は、キャンドルのロウでできた細胞が自分の心臓目掛けて集まるのを永遠に溶かし続けるという凄惨極まりない状況でした!」

「どんな残虐ファイトしてんだよ?」

きしめんが呆れた様に言うと、葵が両サイドの四天王に見られながら汗を垂らしていた。

「余談ですが、近隣の住人に話を伺ったところ、魔女がいなくなって安心したが、あまりにも現場が気持ち悪いし、ずっとキャンドルが呻いているからなんとかしてほしいとの声が上がっています。回収の際に聞いたら、どうやら葵様の名前を呼び続けていました。呻き声程度なので外からは何を言ってるのかまでは聞こえませんが」

さらに葵の汗が増えるのを両サイドの2人が見ていた。

「しかも、討伐時に同行された隊員からは葵様の残虐ファイトの報告を聞いて・・・」

「もういい!俺の戦い方も回収時のこととかもどうでもいいだろ!本題に入れ!!」

途中で立ち上がって遮る葵を横目できしめんとパルフェに見られる。

「葵ってたまに俺でも引くような残酷な事をするよな」

「うんうん」とパルフェも頷き、「でも仕事を正確にこなすできる男のあたりがかっこいいけどね!」とうっとりして葵を見た。

「お前、今の話聞いてよくそんな事言えるよな。お前もどうかしてるよ」

パルフェの異常さにもきしめんが引く。

「あれは引くわ」

「僕も報告聞いてこの上司無いなって思ったよ」とギンジョーとドロップが小声で話す。

「おい!!聞こえてんぞ!!」と睨みを利かせ威嚇した。

「本題に戻ります!!」

慌てて次に進める。

「この魔女の心臓と核ですが、どうやら我々魔法を使う者が取り込むと魔女の魔力分が増えるようです!!心臓は魔力のパワーアップ、核は魔法による技の威力をレベルアップをしてくれます!!」

『あれ?それってつまり・・・』

その説明を聞き、葵が黙って何かに気づく。

「なので今回の魔女狩りはただ倒すのではなく、この核と心臓を回収して頂きたいのです!」

『あ・・・やっぱり』

滝のような汗をかく葵がまたきしめんとパルフェに凝視されていた。

「その通りです!皆様お察しの通り、核を焼き殺しちゃった葵様はやらかしたのです!!」

「改めて言うな!それを!!」

肘をついて両手を組み、額に当てて俯く葵にパルフェが「そのちょっとうっかりなところが人間臭くていいのよ!」と愛おしそうに覗き込んで言う。

もうきしめんは横の2人には何も触れなかった。

「おい、その核はもうどうにもならないんだろ?それはどうするんだ?」

きしめんに聞かれてドロップがまた笑顔になる。

「その質問を待っていました!!魔女レベルの魔力が自分に加算されるとなると、我々魔王軍以外にも欲しがる人がいると思いませんか?」

「・・・確かに」と葵が顔を上げる。

「この件はここが重要となっています!この強大な魔力を受け入れる器が必要なんです!それは僕ら程度のちょっと強い魔力を使う者では体が耐えきれずに破裂してしまいます!」

「破裂!?」とパルフェがワードに驚く。

「その点、他とは違い強力な妖精を直接体に入れてる四天王の皆様なら器は十分にあるということが計算でわかりました!」

葵が腹を押さえてその手元を見た。

「本当に大丈夫かよ?」ときしめんが心配そうに呟く。

「さらになんと!魔王軍の開発部隊による最新技術を駆使して通常サーロインステーキ並みにある大きな魔女の心臓を一口サイズに圧縮することに成功しました!!食べやすい!!」

「いらんことしやがって!サーロインステーキなら食べ応えあっていいだろ!!」

きしめんの野次にギンジョーがまたフォローを入れる。

「サーロインは大きさの例えだし、心臓とか生の臓器なら一口の方がいいよな。食べやすいしさ」

「おい、ギンジョー!お前さっきからフォローの仕方がやらしいんだよ!ドロップだけに語りかけやがって!!こっちに直接言えや!!」

きしめんが立ち上って吠えるのを葵が止める。

「落ち着けって!きしめん!!」

「俺の役目の一つです!初めての講師で四天王達にドロップがメンタルを挫かれないようにと魔王様から仰せつかりましたから!!」

葵に抑えられて仕方なく座る。

「ギンジョー、ありがとう!」と涙目でドロップが礼を言うとまたきしめんに睨まれた。

「で、その核がなくなった件はどう大丈夫なの?」

パルフェが促すとドロップが取り戻して続ける。

「心臓と違って核は誰でも使える分、パワーアップとしては正直弱いのです!それに、ただ取り入れるだけだと大したパワーアップにはならないんです!我が魔王軍の技術を持ってやっと、その力を100%使えるのです!」

「魔王軍って改めてすげーんだな」ときしめんが感心した。

「魔女狩りでは絶対に手に入れて欲しいのが心臓で、核はできれば手に入れて頂きたいのです!!葵様の様に戦闘上の理由等で最悪無くなっても構いません!」

ドロップのまとめを聞いて安心する葵にきしめんが話しかける。

「お前、この説明聞く前に潰したのが核で助かったな。心臓だと任務失敗だったところだぞ」

「本当に・・・命拾いしたよ」と一息ついた。

「説明は以上になります!これからすぐに僕たちはそうめん様を迎えに行って、この内容を話してくるのでご質問等はメールでお願いします!あと、感想文を魔王様までお願いします!!」

最後にギンジョーが「今まで受けた授業のどの教官よりわかりやすかったよ!グッジョブ!!」とまたフォローを投げかけ、ドロップが照れる様を見させられるが、その教官とは目の前の四天王達もその1人だった。

「では!」と2人がさっさと退散する。

「ほぅ・・・今までのどの教官よりも、だって?感想文を魔王様まで提出しろと言っていたな?」

葵は2人が退出したドアを見て言う。

「最低評価つけてボロクソに言ってやろうぜ」

「二度と教壇に立たせないわよ」

3人の目は荒んでいたという。

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