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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
東の大陸
25/218

魔道具展示館

朝からパーティはウェストポートにある観光案内所で西の大陸の地図を広げていた。

「ここからからメリリーシャって・・・」

「意外と遠いわね」

「歩いてすぐいけると思ってた」

やっと大陸間を渡ったと言うのに、こんなところで世間知らずからの楽観主義に現実が厳しさを叩きつけてくる。

「ま、ホテルは葵と同じところに泊まらせてもらってるし、気長にメリリーシャまでの移動手段考えようぜ」

「最終手段は葵さん頼ればいいしね」

そうして再び楽観主義を振りかざしながら外へと出た哀れなパーティ。

ウェストポートは港町ともあって町中はお店も人も多く、様々な町や国から来た人も物もたくさんいる。

その中には魔王軍もちらほらといた。

「魔王軍・・・多いね」

「なーんかちらほら視界に入るわね」

「四天王がいるからじゃねぇか?葵とか」

シャロンとキャメリアが眺める先には制服を着た様々な魔王軍の隊員もさることながら、昨日対戦したイナリも張り切って葵から指示を仰いだりもしている。

それから、栄えた町並みに目を輝かせながら色々と散策していると、重たそうな荷物をおじいさんが運んでいた。

「おじいさん、手伝いましょうか?」

「ああ、ありがとう。助かるよ。重いよ」

アスタが箱を受け取る。

「大丈夫!土木作業で慣れてるから!これ、どこに運べばいいの?」

「頼もしいね。こっちについておいで」

そしてついて行くと、ウェストポートの魔道具展示館に着いた。

「ここの展示物の入れ替えをしていたんじゃよ」

「へぇ〜!」と感心していると、奥から女性が出てきた。

「おじいちゃん!また1人で運んで・・・って、あれ?こちらは?」

女性におじいさんが紹介する。

「さっき運んでいる最中に手伝ってくれてな。旅の方々じゃよ」

「こんにちは!勇者のアスタです!」

「召喚士のキャメリアです!」

「魔導師のシャロンです!」

「お手伝いありがとう!私はここの管理人をしているツルナです!あの、ついでにもう一つお願いできますか?」

箱をツルナに渡すともう一つ頼み事を言われたので、頷いて引き受けた。


3人が展示館の倉庫に案内され、辞書大の一冊の本を渡される。

「これね、ここの倉庫の物をまとめた本なんだけど、この中にある物はみんな展示物なの!ここにある芭蕉扇ばしょうせんっていう扇を探して欲しいの!」

「へぇ、いっぱいあるね」と3人がページをめくって見ていく。

「ここは港町で、貿易の拠点にもなっているから様々な国や町から魔道具が集まるわ!貴重な物から、文化を象徴するものまで!今度の展示で別大陸の特集をするからその搬入と、配置で猫の手も借りたいところなのよね・・・ほんと、助かるわ!お礼は後でさせてもらうから!!」

「な、なんだか物騒な説明のも多いわね・・・」

魔道具の説明を読んだキャメリアが冷や汗を垂らす。

「ええ、やっぱり危険な魔道具もあるのよ。例えばなんだけど、これとか!」

そう言って大人2人で持ち上げるほどの大きな箱を指す。

「これはその昔、絶対に開けてはいけないと言われていたけど、ある人物が好奇心に負けて開けてしまって、世界中に厄災が解き放たれたって伝説があるの!最後に残った希望が救ってくれたみたいだけど・・・」

「パンドラの箱じゃん!」

「アスタ知ってるの?」とシャロンが傾げて聞く。

「ああ、昔本で読んだよ!!実在してたんだ!!おとぎ話かと思ってた・・・」

「ええ、回り回ってここにあると言われてるけど、レプリカ説もあるの。でも開けちゃったら世界が終わっちゃうから確かめようがないんだけどね」

そしてもう一つ別の手で持てる程の大きさの箱を指差す。

「これも箱ものなんだけどね、羊脂玉ようしぎょくの箱っていうの。元はビンだったのを壊れたから箱に改造して魔力を込め直したって聞いてるわ」

「羊脂玉って白い玉というか石?というか、そんな素材よね?これ、普通の木じゃない?」

「よく知ってるわね!皇帝とかに献上されるような特上素材よ!」

キャメリアはかつて柊の実家にお呼ばれされた時に調度品などで目にしていたのだ。

「今回探してもらう芭蕉扇と同じ大陸の伝説なんだけど、羊脂玉でできた瓶があって、それを持った人に名前を呼ばれて返事をすると吸い込まれてしまうというものがあるの!それがどこかのタイミングで壊れたのか何なのか、箱に生まれ変わって貿易でここに来たってわけ!これも十分危険だから気をつけてね!」

「ひゃー!それ怖いね!偽名で呼び合う?」

シャロンが謎の対策を思いつく。

「偽名なんか使わなくても、それに触らなければいいだけなんだから!それに吸い込まれても、もう一度開けたら出てこれるの!」

ツルナがクスクスと笑っていた。

「あとね」と続けてページをめくる。

「色んな魔力のこもった鏡もたくさんあるの!物を小さく写したり、上下逆さに写したり、幽霊系で言うと守護霊が見えたりする鏡もあるのよ!」

「へぇ!それ面白い!!」

「結構似た見た目の魔道具が多いから、触る時は十分気を付けてから触ってね!触る時は絶対に写真と見比べてから触ってね!!」

そして最後にツルナが「それじゃ、みんなよろしくね!」と言って去った。

「はーい!」と返事をしてからみんなで探しに出る。

アスタはしっかりと本を読んでから倉庫に探しに行った。


倉庫の中は電気が無く、日光のみが光源なので薄暗かったが、晴天の内はそれなりに見えていた。

「ねえねえ、見て見て!!この鏡!さっき本で見たんだけど・・・ほら!」

シャロンが近くにあった過去の雑誌の写真を写すと写真の中の人物が動いた。

「たしか写真とか絵が写されたり描かれた時の前後の様子が見えるんだっけ?」

アスタが近寄って感心しながら見る。

「やっぱ魔法ってすげーな!!こんなことできるなんて!!」

「この鏡なんて被写体が大きくなるだけだって!」

キャメリアが鏡いっぱいに大きく写っていた。

「すげー!」とアスタも写って背の高くなった自分を楽しむ。

他にも止めない限り永遠と回り続けるコマや、差すと内側にどこかの空を映し出す傘など様々あった。

そんな中、アスタがある鏡の前を通り過ぎると、自分以外の人も写った気がしたのでもう一度戻って確かめる。

鏡の中には自分の両隣と真後ろにアスタと同じ真っ赤な髪色の男女3人が立っていた。

背後に立つ男性は1人だけかなり昔の服装をしている。

その3人が鏡越しにアスタを優しく見守っていた。

もちろん隣、後ろには誰もいない。

「誰・・・なんだろ?」

この鏡はさっきツルナの言っていた守護霊の見える鏡だった。

「アスター!!」と奥でキャメリアに呼ばれたので別れ惜しそうにその場を離れた。

「ねぇ、頼まれてた芭蕉扇ってこの辺じゃない?なんだかこっちの大陸には無さそうなデザインが多いの!」

「あ、ほんとだ!」

陶器や絵一つにしても独特のデザインをしている。

「見て!アスタ!これかっこいい!!」

そう言ってシャロンが見せたのは龍の描かれた大皿だ。

「かっけーーー!!」

そうやって楽しんでいると、背後から声をかけられた。

「こんにちは!」

振り返るとアスタくらいの年齢の少年がいた。

少年は肩ほどまである髪をリボンで後ろで束ねていて、服装や姿勢からして品を感じる。

「こんにちは!あの、俺たち不審者じゃなくて管理人のツルナさんに頼まれて展示物を探しに来ただけなんです!アスタと言います!!」

「キャメリアです!」「シャロンです!」とみんなつい続いてかしこまる。

少年は口元に手を当ててクスクスと笑った。

「ふふっ!別に怪しいから声を掛けたんじゃないよ!僕もツルナさんにお願いされて来たんだ!」

早とちりをしたと気づき、みんなで顔を赤くした。

「手伝うよ!一緒に探そう!!えーっと、何探すんだっけ?」

「芭蕉扇だよ!こーんな大きな扇!!」

シャロンが両手を広げて表現すると、アスタが本を見せて指差し教えた。

「見た目はこんなん!」

「ありがとう!そんなに大きなものなんだね・・・。他にも色んな道具がたくさんあるね!」と感心しながら本を見る。

「たぶんこの辺がデザイン的に似てるから、近くにあると思うの!」

そう言ってキャメリアが指差す。

「そうだね!じゃあみんなで手分けして探そうか!」

そうして各々で探していると、シャロンに少年が近寄ってきた。

「ねえねえ、シャロン!」

「何?」と振り返ると少年の手には可愛いリボンがあった。

「僕ね、普段は裁縫の仕事をしているんだ!外国や他の町から来た布で装飾品を作ってるの!まだまだ半人前だからお店には置いてもらえないんだけど、これさ、僕が作ったリボン!よかったらつけてくれない?」

「かわいい!!いいの?つけたい!!」

シャロンが喜んで今付けている髪飾りを外した。

「シャロンは2つぐくりだからリボンがもう1ついるね」と言って、ポケットから同じデザインのリボンを取り出し、髪に結んであげる。

シャロンは少しだが年上のお兄さんに髪を触られてドキドキしながら待っていた。

「できた?」と聞くと「ちょっと待ってね!」と言ってリボンを触っている。

そこにキャメリアが通りがかった。

「2人とも何してるの?」

「あ!キャメリア見て見て!!お手製リボンをくれたの!すっごくかわいいの!!」

「あらほんとね!あなたが作ったの?上手ね!」

「うん!僕、いつも装飾品の仕事をしてるんだ!習作なんだけど、よかったらキャメリアもどうかな?」

そう言ってまたポケットからリボンを出した。

「かわいい!私も付けたいけど、髪短いから・・・」

「これは長いから大丈夫だよ!」

ポケットから出てきたリボンはさっきのものより長く、頭を一周して結ぶことができた。

そして頭の上でリボンを結んでもらう。

最後にリボンに何かをペンで書いていた。

「何書いてるの?」とシャロンが聞くと「キレイになるおまじないだよ!」と笑顔で返された。

「ねぇ、鏡で見てみましょうよ!」

「そうしよ!!」

張り切って2人が鏡のある部屋に行き、鏡の前に立つ。

アスタは探すのに飽きたのか、昨日ツルナのおじいさんが置いて行ったであろう新聞を近くで読んでいた。

「何やってんの?」

「アスタこそ」

「これね、リボンもらったから付けてみたんだ!」

嬉しそうにシャロンが指差す。

そして2人して鏡を見ると、体は人間、顔だけ狐と猫がリボンを付けて立っていた。

その鏡は顔だけ動物になる鏡だったのだ。

「ここの鏡で見ちゃだめだね」

「なんかこれじゃあマヌケね」

「遊んでないで早く見つけようぜ」

アスタが新聞を持ったまま、奥の部屋に行くと少年がシャロンとキャメリアに近づいた。

「なんか、ここの鏡じゃ私たち狐と猫になっちゃって見れないの・・・。また後で見るわね!」

「うーん、じゃあさ、誰かに見てもらうってのはどうかな?僕としても作品を見てもらう方が嬉しいかも!」

「それもそうだね!でも誰に見せる?ツルナさん?」

シャロンが傾げると、少年は首を横に振った。

「ううん、今この町にいる四天王のパルフェ様とか!」

笑顔で様付けでパルフェの名を言う彼にキャメリアもシャロンも警戒して身構える。

「パルフェ様って・・・あなた一体何者なの!?」

「ま、魔王軍!?」

2人の言葉に怪しく笑い、指を差した。

「シャロン、キャメリアをパルフェ様に記念品として贈る!!」

すると、体が勝手に動き出し、「わ!体が勝手に!!」「どこ行くのよ!?」と言いながら外に出ていく。

アスタはその光景を陰から見ていた。

「あいつ!魔王軍だったのか!!しかもパルフェの部下か?」

ゆっくりと振り返り、少年がアスタを見る。

「はっ!!」

「あとは君だけだね、アスタ」

名を呼ばれて、慌てて奥へと身を隠した。

少年が笑いながら追いかけてゆく。

そして、シャロンとキャメリアはパルフェの元へと向かって行った。

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