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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
東の大陸
24/218

廃品回収は隠蔽日和

とうとう全員の腕をイナリの能力で取られてしまったパーティたち。

反撃の術を失くし絶体絶命の中、アスタが突然挑発しだした。

「へいへい!急にシャロンばっか狙いやがって!好きなの?」

「は?」

イラついたイナリがまたアスタに切りかかる。

イナリからの攻撃を避けていたが、アスタは腹を切られた。

「ぐぁぁあああ!!」

イナリが口角を上げて笑う。

しかし、血は出ていない。

「あっはっはっはー!!」

笑い出すアスタが少し離れて尻もちをついた。

その時に腹に入れていた拾ったグラビア雑誌が落ちた。

「おーっと、いけね、いけね!」

シャロンとキャメリアが赤くなる。

それどころか、アスタも耳まで赤くなり、なんなら鼻血まで垂らしていた。

「さっき拾った男の教科書が落ちちゃった!!本当は後でゆっくりと見ようと思ってたんだけどなぁ!!」

イナリも真っ赤になる。

「なな、何拾ってんだよ!!エロ野郎!!」

シャロンも恥ずかしそうに背を向けた。

向けられた背中を見てさらに赤くなるイナリ。

アスタがそれを見てニヤリとした。

「は、早く片付けろ!」

「えー!腕無いから出来なーい!」

足で雑誌をめくるとさらに刺激的な写真が現れて動揺する。

「や、やめろよ!!」

アスタが立ち上がったがよろける。

「おっとっと!」

よろけたフリをして近くの本の山をわざと蹴って崩したら、グラビアやら18禁ものが普通の雑誌の下からこれでもかというくらい出て来た。

「わー!!やめろって言ってんだろ!!」

「とどめだ!!」

そしてキャメリアのスカートを蹴り上げてめくる。

めくれ上がったスカートの下からパンツがもろ見えした。

イナリが鼻血を噴いて尻もちをつく。

イナリを動けなくしたが、アスタはキャメリアに蹴られまくっていた。

ボコボコになって倒れ込んだアスタがイナリを見上げる。

「お前、純粋すぎんだろ!女がいない環境で育った俺でさえコイツら程度のパンツにそこまで興奮しねーぞ!!思春期って奴?」

悔しそうにするが、必死に鼻血を押さえて動けない。

「お前が追いかけて来なかったのは何でかって考えたらよ、シャロンがパンツもろ見えで、お前が真っ赤になってたからすぐにわかったよ!」

それを聞いてシャロンが恥ずかしそうにする。

「え!うそ!?また!?」

「本当だ、めくれてる!!」

キャメリアは今シャロンのパンツがめくれている事に気づいた。

「更に!今日はあちこちの家先に本が積まれている!廃品回収の日のようだな。この辺の男共がこぞって見られたくない本を隠蔽する日でもある!まともな本に隠してな!!」

アスタがイナリの鞄を蹴ると腕が落ちてきた。

「今パニックだからどれを優先すべきかわかんねーだろ?」

イナリに顔を近づける。

「俺が教えてやるよ。まずは俺らの腕を戻しな!そしたらシャロンのパンツも本も片付けられる!」

アスタを睨みながら黙る。

言う事を聞かないイナリをさらに追い詰めた。

「シャロン!」

「はいよ!」と背中を向けてパンツを見せる。

「お前女だろ!恥は無いのか!?」

「だって、手が無いままだとスカート直せないもん!」

お尻を左右に振ってアピールする。

「そうよね。私も直してあげたいけど手がね・・・」とキャメリアも便乗する。

アスタがグラビア誌を蹴って寄こした。

「あーあー!早くしまいたいんだけどなー!あとでこっそり見たかったのになー!」

すると、イナリがアスタを押し返した。

「うっせー!バーカ!何があっても能力は解除しない!!例え殺される間際でもな!!」

まさかの反抗にアスタが気圧され、一瞬体を引く。

「良く言った、イナリ!」

パーティの後方より葵がやってきた。

「あ、葵様!!」

イナリの顔が一気に晴れ、救世主の登場に涙を溜める。

イナリの元へ行く前に、葵がシャロンのスカートを直してやった。

「こいつらを追い詰めただけでなく、どんな状況でも能力を解除しなかったお前の判断は正しい!」

葵がイナリに近寄り、振り返る。

「あとは俺に任せろ!」

すごく爽やかなその笑顔はまるで主人公のそれだった。

「葵かっこいい!」

「頼れる上司みたい!」

「かっこいいけど私達ピンチじゃない!?」

思わぬ葵の登場にパーティが口々に言う。

「葵様は元から頼れる上司なんだよ!!」

葵が一変して怪しい笑顔に変わり、サーベルを抜いた。

「もう前のような失態は犯さない。思う存分、今までの借りを返させてもらう!!」

そう言って、楽しそうにサーベルを振って足元に雷撃を放った。

「踊れ踊れ!!」と笑い声を高らかにパーティを弄ぶ。

「っぶね!!」

「きゃー!!」

「今までやりすぎた!!ごめんなさーい!!」

パーティが葵の雷を必死に避ける様は下手くそが無様にタップダンスを踊っている姿に似ている。

文字通り踊り狂わされていた。

「今更反省しても遅い!!」

高笑いをしながら楽しそうにサーベルを振っていたが、突然振り返って全く違う場所に雷を放った。

「誰だ!?」

全員が呆然と葵を見る。

「葵・・・様?」と心配してイナリが見上げて聞いた。

「殺気を感じたが・・・」

葵がため息をついて髪をかきあげる。

「まあいい。お前ら、今日はこの辺で許してやる。今後、俺の大事な部下に手を出したら、容赦無く始末する!覚えておけ!!」

サーベルを一振りして鞘に収め、イナリにハンカチを渡してから、雷を放った方へと体を向けた。

「イナリ、腕は返してやれ。またシャロンのパンツが丸見えになったら困るからな」

「は、はい!」と答えるイナリはハンカチで鼻血を拭いた。

『ふぁ!?ああ、葵様の良い匂ひ!!』

鼻血を出しているので匂いは感じず、脳内で勝手に作り上げて勝手に興奮しているにすぎない。

「あいつまた鼻血出してね?」

「ハンカチ真っ赤」

「何か興奮してる?」

パーティは恍惚としながら葵の真っ白なハンカチから滴る程の鼻を出すイナリに引いていた。

葵はイナリを置いて歩を進めて路地を曲がっていく。

「葵様のご慈悲だ!返してやる!!」

全員の腕を返してやった。

「やーっと腕が戻った!!」とアスタが手を握ったり開いたりして動きを確認する。

「おい、イナリ!ちょっといいか?」

アスタがイナリの肩を組んで女子たちに背を向ける。

「何だよ?」

「俺はよ、こいつで島の仲間と女に慣れていった。だが、俺はここに来るまでに色んなのを見てきた。それこそ、写真から実物まで何もかも・・・」

いまいち理解できない話に疑問符を浮かべて聞き続ける。

そして怪しい笑みを浮かべながらアスタはイナリにエロ本(保健体育の教科書)を渡した。

「教科書?」

「俺はもうこいつを卒業するよ」

そう言って例のページを捲って見せる。

「へへ・・・ほら、このページ!!ぐへへへ!!」

興奮を抑えて本を見るアスタに反し、イナリには高尚すぎてわからなかった。

「え?何?何なの?体のつくり?」

「お、おいおい!お前声に出して読むのか?なかなかやるなぁ!!」

肘で突かれるが反応に困る。

よくわからないままイナリはアスタを置いて渡された教科書を手に葵を追いかけて行った。

「葵様!!」

その姿を見送るパーティ。

「葵のこと好きな奴って皆盲信してるよな」

「ある種の宗教よね」

アスタの言葉にキャメリアが答える。

「実際に教会でプロの聖職者が祀ってたから立派な宗教なんじゃないのかな?」

シャロンの言葉に少し考え、アスタが「・・・たしかに」と一言答えた。

つい、『こいつ案外頭悪くないのかも?』とか思ってしまった。


葵が壁を触る。

「少し温度が高い。ここで観察されていたのか?誰を?俺か?イナリか?」

そこへイナリが来た。

「葵様!いかがなされましたか!?」

「誰かにつけられていたみたいだ。いつからなのか、俺にもわからん・・・」

不安気な表情を浮かべるイナリに優しく微笑んで頭を撫でた。

「大丈夫だよ、そう不安がるな。イナリ、今日はよくやったな!ご飯でも食べに行こうか!俺の奢りだ!」

そう褒めると嬉しそうに喜んだ。

『一体誰だ?いつからつけられていた?・・・スーツの男が言っていた存在か?』

葵は壁を睨んだ。

「あ、あの・・・葵様」

言いづらそうに見上げるイナリに「どうした?」と聞いてやる。

「これをアスタにもらったのですが、よくわからなくて・・・」

そう言ってポップな内臓もろ見えの女体イラストのページを開いて見せた。

「イナリ、それは捨てなさい。・・・いや、俺が処分してやる」

葵の目は据わっていたという。


その夜、葵が泊まるホテルのレストランでディナーをすることになったが、その席にはさっきのパーティもいた。

「何でお前らもいるんだよ!?」

イナリが怒るとニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながらあの3人が答える。

「うへへへ!俺らも葵の名前でホテル泊まってるから、支配人が声をかけてくれたんだよ!」

「葵さん達がディナーするから、その人数確認で聞かれたのよ!くふふふふ!」

「ほんと、できた支配人だね!うけけけ!」

下衆く笑うパーティにイナリが動揺する。

「は!?同じホテル?・・・同じホテル!?葵様どういうことです!?」

葵は浮気がバレた修羅場に立ち会ったかのように、頭を抱えていると支配人がやってきた。

「葵様、本日は当ホテルのレストランで隊員の方々とディナーをして頂き、ありがとうございます!腕によりをかけて料理を振る舞わせて頂きます!」

支配人の気遣いを無下に断れない葵は「は、はい・・・」と気乗りしない返事をした。

そんな事は全く気にしないパーティは口々に注文をし始める。

「はい!はい!俺ステーキ!!」

「私はキャビア、フォアグラ、トリュフの入った料理食べてみたい!!」

「ここにあるデザートぜーんぶ持ってきて!!」

ハイエナの如く貪るパーティとは真逆に、葵とイナリは静かにコース料理を食べる。

「イナリはコース料理は初めてだよな?テーブルマナーもしっかりできてて偉いじゃないか!」

「は、はい!日頃から勉強しておりました!」『いつか葵様とコース料理を食べる為に!!なのに・・・』

相変わらず意地汚く食べるパーティに軽蔑の眼差しを向ける。

『・・・くっ!葵様との念願のディナーが・・・!!』

「すまん・・・イナリ」

「いえ・・・仕方ない?ですよ。それに、こちらこそ葵様の綺麗なハンカチを汚してしまい、すいません」

流石にパーティの同席やその他色々と疑問が残るイナリ。

そのイナリのポケットから出て来たかつて白かったハンカチは鼻血が塊り、どす黒く変色している。

そのハンカチの変わり果てた姿を見て、魔女に対しての残虐ファイトを披露した葵すら仰天とする。

「ま、また今度改めてディナーをしよう!そのハンカチも返さなくていいよ!後で捨ててくれ!」『流石にそこまで汚れては廃棄かな・・・』

その言葉で一気にイナリの顔が晴れる。

「え!?いいんですか!?」

「え?・・・あ、あぁ」『え?そんなに洗って返したくなかったのか?』

部下の思わぬ反応に傷つく葵とは正反対に、イナリはかなり喜んでいた。

『葵様のハンカチ!!常に葵様が俺のポケットに!!洗わないぞ!!俺は絶対洗わないからな!!』

後日、すっかりドス黒くなったハンカチだが、イナリはチャック付きのビニール袋に入れて肌身離さず持っていたという。

「それ捨てたら?」と仲間に言われたが「嫌だ!これは絶対捨てないからな!!捨てたところを拾うつもりだろ!!」と頑なに持ち威嚇する犬の如く「ガルルルルルルル・・・」と唸る。

「い、いらねーよ、そんな汚いの!」

仲間達からはしばらく距離を置かれたという。

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