イナリ
朝食を食べるために商店街を歩くパーティ。
その後ろを郵便配達の若い男性が配達のために歩いていたら、前を行くシャロンを見て気づいた。
なんと、シャロンのスカートがパンツに挟まってもろ見えだったのだ。
『うわ!あの子パンツがもろ見えだ!でも直接言うのもな・・・』
どうしようかと悩んでいたが動いた。
シャロンの肩を叩いて耳元でこっそりと教える。
「お嬢ちゃん、お嬢ちゃん!スカートがパンツに挟まっててもろ見えよ!!気をつけなさいね!」
それを聞いたシャロンが顔を赤くして、慌てて下ろした。
「ありがとう!おに・・・お姉さん郵便屋さん!」
「いいのいいの!それじゃあね!」
それっぽい動きをしながら路地を曲がった。
「ふう・・・何とかなったな。しかし、お姉さん郵便屋さんか・・・。ま、いっか!」
振り返ると目の前に背の低いキツネ色の髪色の少年がいた。
年齢は先程もろ見え事件のあったシャロンくらいだろうか。
「ん?どうしたの?迷子かな?」
少年はニコニコと笑顔で見上げていた。
首を傾げて見つめ合う。
「あれ?その腕章・・・」
少年の腕に気を取られていたら、一瞬の内に顎を下から殴られて配達員は倒れ、身ぐるみを剥がされてしまった。
「俺をガキ扱いするな」
少年が配達員の制服を着る。
「うわっ!大分デカイな・・・そうだ!」
少年が生地を落とした。
「仕立て完了!」
落ちた生地には鍵穴の様なものがついている。
少年は魔王軍の腕章を鞄にしまって、歩き出した。
朝市で買ったモノを食べ歩きしていたら、シャロンがもぞもぞと足を動かしだした。
「おしっこしてくる!」
そう言い残すと回れ右をして小走りする。
「もー、お手洗いでしょ!」
「またトイレ?シャロン多くないか?」
キャメリアもアスタも呆れるが、なり振り構わず仲間を置いて走った。
「我慢できない!行ってきます!!」
シャロン待ちの間、アスタが道端に捨てられた雑誌の山を見る。
「うお!!」
「どうしたの?」
顔を真っ赤にして、鼻血を垂らしたアスタが慌てて服の下に本を隠した。
「いや、何も!」
「・・・何も無いわけないじゃない。鼻血出てるけど大丈夫?」
キャメリアが半分呆れながらも心配してくれる中、鼻血を拭いた。
「大丈夫大丈夫!!朝一でチョコレート食べすぎたからかも!!」
「ふーん・・・それにしても、シャロンまだかしら?」
しばらくしてシャロンが帰ってきた。
「お待たせ!」
「おし、行くぞー!」
アスタが去ったあと、見ていた本の山が少し崩れ、下からグラビアの写真集が出てきた。
歩いていたらアスタが肩を叩かれた。
振り返ると背の低いキツネ色の髪のシャロンほどの年齢の少年配達員が財布を持っていた。
「これ、落としましたよ!」
「うわ!気づかなかった!ありがとう!」
「いえいえ、お気を付け下さい」とニコッと笑う。
「もー、アスタ気をつけてよね!」
「財布なんて大切なものを・・・何かお礼しないと!」
女子2人に言われて腰のカバンを漁る。
「それもそうだな!えーと、何かないかな?」
「そんな、いいですよ!お礼なんて!!」
少年配達員が断るとアスタ達も被せて言う。
「いや、これは俺らの唯一の資金だからな!」
「これ無かったら旅が出来ないもんね!」
「だから何かお礼をさせて!」
食い下がられて少し悩む。
「そんなに言うのなら・・・そうだ!手を下さい!」
アスタが手を広げて傾げる。
「は?手?」
シャロンとキャメリアも不思議そうに返した。
「どういうこと?」
「仕事を手伝えってこと?」
ニコニコと笑いながら少年配達員がまた答える。
「いえいえ、そのままの意味です!」
みんなの頭にまた?が浮かんでいる中、配達員がアスタの右肩に長い鍵を差した。
「え!?」
その鍵をひねるとアスタの腕が肩から外れて地面に落ちる。
「きゃっ!!」
「何者だ!?」
腕を失った肩を押さえていると、キャメリアがアスタを下がらせ妖精を召喚しようと手を腰に持っていく。
「ステファニア!」
すると手は空を掴み、から振る。
見ると、ステファニアの張り子がどこにも無い。
「な、無い!!」
「これのことかな?」
声の方向を見ると、2つとも少年配達員の手の中にあった。
「あ!いつの間に!!」
「さっきそこのアスタに声をかける前にスらせてもらったよ!」
少年は張り子を見る。
「これで葵様とパルフェ様を追い詰めたのか。でも、召喚士の妖精さえ奪ってしまえばこのパーティなんてそこまで大したことないだろ?」
アスタが睨みつける。
「お前、魔王軍か。誰の部下なんだ?葵か?それともパルフェ?いや、もしかしてきしめん?」
「きしめんだと?誰があんな男の下に付くか!!」
異常なまでに嫌悪感を出す。
「それじゃあ、葵か?」
「葵様を気安く呼び捨てするな!!」
上司を呼び捨てにするアスタを険しい表情で睨む。
「どうやら葵さんの部下のようね」
「なるほど、それでこっちの情報が詳しいわけだ」
キャメリアもアスタもお互いに近寄って身構えていた。
「俺は魔王軍四天王葵様の部下、隠密班のイナリだ!葵様を苦しめるお前らに制裁を下しに来た!」
イナリが不敵に笑う。
「お前らを解体するのなんか簡単なんだ!大人しく降参した方が身の為だぞ!」
「もし、俺らが降参したらどうなるんだよ?」
アスタも負けじと不敵に笑う。
「勿論、葵様にお前らの身柄を突き出す!そして、俺は葵様に褒めてもらうのだ!!」
予想外の言葉に一瞬全員が黙る。
「葵に?」
「褒めてもらう?」
「それだけ?」
アスタ、キャメリア、シャロンが傾げる。
「な、なんだよ!悪いか!」と吠えるイナリにアスタが戸惑いながら返す。
「悪かないけど、もっとあるだろ?金とか、地位とか、金とか・・・」
「あとお金とかね」
アスタとシャロンの言葉に強気に答える。
「金?地位?そんなものどうでもいいね!葵様に褒めてもらえれば何もいらない!葵様からの賞賛こそが喜びの全てだ!!」
両手を広げて恍惚と天を見上げる。
「葵さんの何がそんなにいいの?」
シャロンの質問にうっとりとするイナリ。
「葵様は背が高くて剣術の天才で魔王軍一のスピード、さらに頭も良く、美男子で優しくて背が高い!」
「背が高い2回目だぞ」
「完全にコンプレックスね」
アスタとキャメリアが呆れる。
「葵さんってそんなにいいものだっけ?お金は沢山あるみたいだけどね」
イナリがシャロンを睨みつけた。
「うるさい!葵様のことを侮辱したな!!それに財布としか見てないその態度!!もう許さん!」
素早い動きで間を詰めると、シャロンの左腕に鍵を差して一捻り、あっという間に腕が落ちた。
「きゃあ!!」
アスタとシャロンの腕を鍵で貫通して捻ると引っ付いた。
そしてそれを配達鞄にしまう。
「あ!」
「さあ、どんどんお前らを解体してやるよ!!」
不敵に笑うイナリにパーティが萎縮する。
「ど、どうしよ・・・」
「くっ・・・」
「まだ足があるうちに逃げましょう!」
キャメリアの提案で3人が背を向けて走り出すと、イナリも追いかけようとしたが一瞬止まった。
「待て!・・・あ」
耳まで赤くして、全く動かないでいる。
「あれ?来ないぞ?」
「とにかく今のうちに!」
遠ざかって行くパーティにイナリは慌てはしなかった。
「ま、まあいい。トラップは仕掛けてある!」
アスタ達が走っているとイナリが追いついてきた。
「来た!」
すると突然、足が重くなる。
下を見ると足元にトリモチのような粘着物質が付いていて、足取りが重くなってしまった。
「なんだこれ!」
「ねちゃねちゃするー!」
「足が重い!!・・・きゃっ!!」
バランスを崩したキャメリアが前に転けて手をつく。
「我が軍の開発したトラップだ!足を完全に止めるよりも、重くするだけだから引っかかった敵が悪足掻きをする!そうして体力を消耗させ、疲弊したところを狙う!一種の軽い拷問器具だよ!」
キャメリアの両腕を手際よく鍵を差して外した。
「四肢を解体してやる!!」
「グランク!」
シャロンが魔法を使ってトリモチを凍らせ、破壊する。
相手が怯んだウチにキャメリアが逃げた。
「魔導師め!」
シャロンとイナリが睨み合う。
アスタが残っている左手で剣を掴んで構えた。
「片手で勝てると思ってんのかよ?」
アスタが真っ直ぐ突くと簡単に避けられて左手首を掴まれてしまう。
そのまま左腕を解体された。
イナリがアスタの左手から剣を奪い、構えた。
「お前、全然剣術習ったことないだろ?動きでわかるんだよ!素人!!」
逆にアスタに切りかかる。
その剣先を必死に避けていると、イナリは突然方向転換をして近くにいたシャロンを攻撃した。
シャロンは咄嗟に杖で刀を防いだら腕に鍵を差された。
「きゃっ!」
ついにパーティ全員の腕を取られてしまった。
「ど、どうしよ!?」
不適に笑うイナリがパーティににじり寄る。
全員が両腕を取られてしまい反撃の術を失った今、絶体絶命となった。




