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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
東の大陸
21/218

ウェストポート

ウェストポートに到着したクルーザーから葵と魔王軍の制服を着た他3名が降りる。

その後、4人は港近くの魔王軍が所有する建物に入って行った。

建物の部屋で葵が3人に振り向く。

「これでいいだろ?そろそろ解放しろ!」

深く被った帽子を脱ぐと部下ではなくアスタ、キャメリア、シャロンの3人だった。

「ご協力どうも!」

「しかしシャロンも抜け目無い奴だな!」

アスタに言われて「えへへ!」とシャロンが照れた。


一体どうやってこのパーティがピンチを切り抜けたかというと、イーストポートにまで遡る。

シャロンが倉庫で葵の部下が拘束できているかの確認に行った時に、備品を全て回収し、魔法でビンに詰めて持っていたのだ。


「何でそうしようと思ったの?」

キャメリアに聞かれると自信満々に答えた。

「この先旅をするのにお金がいるでしょ?これ売ったらいいかなぁって思って!」

「それを俗に追剝ぎって言うんだよ!魔導師に倫理観は無いのか!?」

葵のツッコミにシャロンが「むー!!」と頬を膨らます。

「キャメリア!!」

怒りながら呼ぶと「わかったわ」と言ってキャメリアが張り子に手をかざした途端、葵が胸を押さえて苦しんだ。

「クソっ!悪かったよ!前言撤回する!」

手を離すと苦しみが収まり、葵が大きく溜息を吐いて椅子に座り込んだ。


さらに、何故葵が拘束され、形成が逆転したかというと、船の中でのことに由来する。

港で待ち伏せされていると知り、打つ手無く焦っているところにシャロンが一言言った。

「大丈夫だよ!」

2人が目を丸くしてシャロンを見る。

「え?」

「大丈夫じゃねーよ!打つ手がねーんだって!!」

「大丈夫!こっち来て!」

シャロンに連れられて船の中に入った。

「ふん。どうせガキの浅知恵だろ。せいぜい足掻けよ」

勝利を確信し、余裕な葵を残してカーテンや、ステファニアのツタで完全に船内を隠してからシャロンがビンを取り出した。

「なんだそれ?」

アスタが覗き込むと人形に着せるような小さな服や靴が中で浮いている。

シャロンはビンの蓋を取り、ひっくり返したら急に星のような光がこぼれ落ち、物が大きくなって現れた。

「うわ!なんだこれ!?」

アスタが驚いて出てきた物を手に取る。

「葵さんの部下の服だよ!さっき取っといて、小さくして魔法をかけたビンに入れといたの!」

「さすが魔導師ね!これを着て行けば港ではバレないわ!」

しかしアスタが疑問を持つ。

「でもよ、葵が黙ってねーだろ?」

キャメリアが自信満々に答えた。

「それなら大丈夫!私に良い方法があるから!」

3人で着替え、外へ出る。

「おい、葵!」

葵がパーティの格好を見て驚いていた。

「なんだその格好は!!」

それは、魔王軍の制服姿をしたアスタとシャロンが目の前に現れた。

「シャロン達を舐めてもらっちゃ困るよ!!葵さんに頼みがある!」

パーティに対し睨み付けて返す。

「港に着いたらお前らの事を黙ってろって言うのか?」

「わかってんじゃん!」「そのとーり!」とアスタとシャロンがそれぞれに答えた。

「頷くとでも思ったか?」

葵の返答にアスタが不適な笑みを見せる。

「いや、シャロン!」

「承知!」

シャロンが杖を振ると2人が一斉に退け、死角から予備のロープが飛んできた。

しかし葵はサーベルを瞬時に振ってロープを切った。

「ふん!こんなチープなトリックで俺を騙せると思うな!」

「いえ、こっちが本命よ!」

葵の足元からツタが這い上がって一気に服の下から伸びて体を締め付ける。

「何!?」

「陽動作戦大成功!!」

ステファニアが葵の背後から横をすり抜け、キャメリアの足下に戻ってきた。

ツタの締め付けで葵が苦しむ。

「これはもうお願いじゃないわね。交渉よ!」

苦しそうに葵がキャメリアを睨んではいたが諦めて承諾した。

「わかったから!!・・・そろそろ緩めろ!!」

パーティ達はニヤニヤとしながら苦しむ葵の申し出に応じた。


ホテルの部屋に入り、ジャケットを脱いでシャツのボタンを2つ外し、ツタを引っ張る。

「早くツタを取れ!」

「まだ大事な事を約束してないわ!」

イラ立つ葵は椅子に深く座り、長い足を組んで、机に片肘をついて頬杖しながらパーティに体を向ける。

「何が望みだ?」

キャメリアが答えようとした途端、ノック音がした。

ドアが開き、女性が入る。

「葵、入るわよ!」

「パルフェ!何でここに!!確か今ビスコッティ山脈にいるはずじゃ・・・」

女性を見た途端、葵の表情に嫌悪の色が宿る。

「山脈なんてしんどいし、視察だけだったからすぐに仕事を終わらせたの!それに葵が西の大陸に来るって知って急いで来たの!山どころじゃないわ!!」

アスタがキャメリアを突く。

「なぁ、めっちゃ美人じゃね?」

「嘘?あれがタイプなの?気が強そうよ!」

「そうだよ!あの人は止めときなよ!だってあの人・・・」

シャロンが話している途中でアスタが食い気味に言い返した。

「何だよ!俺はこの人って決めたんだよ!!邪魔すんな!」

パルフェと葵がパーティを見る。

「何?この子たち?そういえば誰なの?さっきからいるけど・・・」

「こいつらは・・・」

葵が言おうとしたらアスタがキャメリアの腰に下がっているステファニアに手を突き出した。

「ステファニア!花束!!」

花束をステファニアに出させ、受け取る。

「ちょっと!人の妖精勝手に使わないでよ!!」

パルフェの前で跪いて花束を差し出す。

「一目見た時から僕の運命の人はあなただと感じていました!!僕とお付き合いして下さ・・・」

「お断りよ!私は!」

アスタの告白を最後まで聞かずに断り、そして葵の腕にひっつく。

「葵一筋だもの!!」

葵が青ざめ、アスタが真っ赤になって怒り震える。

「あーおーいー!!またお前かぁぁああ!!」

「だから言おうとしたのに!」

「あーあ」

女子からは呆れた声が上がるがアスタは聞いていない。

そうして叫んでいるとパルフェに頬を叩かれた。

「うるさい!」

頬を押さえて仲間の2人を振り返る。

「やっぱ違ったわ・・・」

「・・・うん」「そう思う」とそれぞれに返された。

「何よ!あんた達!!失礼ね!」

パーティの言葉にパルフェが髪をかきあげ睨みつける。

「魔王軍幹部の四天王が1人、パルフェ様をよくも侮辱したわね!覚悟なさい!!」

「あ・・・」

「あーあ、四天王だった・・・」

「とんだハズレを引いたわね」

3人がため息混じりに呟き、キャメリアが葵を見た。

「葵さんは入って来ないでね」

相変わらず冷静な様子で座り、腕を組んでいる。

「当たり前だ。俺が入るまでも無い」

「葵・・・私の事そんなに理解してくれてるのね!!好き!!」

パルフェがうっとりした目で葵を見つめる。

「いや、違・・・」

葵に気が向いているうちにキャメリアがツタを伸ばすがナイフですぐに切られた。

「焦っちゃダメよ。召喚士さん!」

不意打ちが外れ、悔しそうにする。

シャロンが続いて呪文を唱えた。

「グランク!」と杖を振るが飛ばした氷を簡単に避けられる。

間髪入れずにアスタが刀を振るうがナイフで止められた。

「ふふっ!あなた達じゃ無理ね!レベルが低すぎるわ!皆凡人以下じゃない!!葵の言う通り、私1人で事足りるわね!!」

葵はただ黙って見ていた。

そしたら、アスタが見上げて呟く。

「パルフェ、葵とお似合いだぞ」

たちまち赤くなり、パルフェが離れた。

「そ、そんな!急に何を!!」

気づいたキャメリアが構えを解いた。

「よく見たら美男美女でお似合いじゃない!」

パーティの戦闘の方向転換に葵が焦り始める。

「お前ら何言って・・・!!」

「バカっ!よく見なくっても私達はお似合いよ!!葵も照れないの!!」

見るからにはしゃぎ始めたパルフェにシャロンが畳み掛ける。

「わー!本当だー!恋人みたいに並んでみたら?」

「え?こ、こう?」

葵にひっつくとシャツの胸元からツタが伸び、パルフェに絡みつき行動を不能にした。

「あ!この!!騙したわね!!せめて葵と引っ付けて絡ませなさいよ!!」

アスタが指をさす。

「んなことするかよ!バーカ!」

「葵さんは大切なシャロン達の人質だよ!」

「まだ交渉しなきゃいけないこと山ほどあるのよ!!」

アスタは中指を立て、シャロンは舌を出して見せ、キャメリアは腕を組んで見下ろしていた。

猿轡をしたパルフェを置いて葵を引き連れたパーティは部屋を去る。

部屋から離れると葵がボソッと呟いた。

「お前ら・・・ありがとな」

「え?」と意外な感謝の言葉にパーティが驚く。

「まさか行動不能にできるとは思わなかったがな。あいつ・・・俺のストーカーなんだ」

「あー・・・山脈にいるはずって言ってたものね」

キャメリアが言葉を探りながら憐れみの目を向ける。

「それだけじゃない。港に配置した部下以外に言ってないんだ。俺が今日、西の大陸に来ること・・・」

それを聞いて全員に寒気が走った。

「四天王の俺があんな小さな船を使うのはパルフェのこともある。魔王軍の船は確かに大きいものが多いが、それを敢えて使わないのは俺の所在地が他の四天王にバレるのを防ぐ為というのも一応兼ねていたんだ」

シャロンも憐れんで返す。

「葵さんも大変だね。それにしても、アスタもあの人と付き合う前に気付けて良かったね!」

「あぁ!本当、告白だけで済んで良かったよ!!」

『普通告白の失敗って痛手なんだけど・・・無知って幸せだな』

アスタの無知加減に葵も呆れてきていた。

4人で建物の外へ出る。

「腹減ったし、飯食いに行こうぜ!」

葵が町を指した。

「ここを出て北へ行くと飲屋街がある。そこへでも行くといい。ただ、ここは治安は決して良くは無いからな。自分の身は自分で守れ」

キャメリアが呟くように葵に言う。

「ところでなんだけど、泊まる所無いのよね・・・葵さん」

「優しいもんな、葵って」

両人差し指をくっつけたり離したりして見上げ、厚かましく要求してくるキャメリアとアスタにムカつきはしたが、承諾した。

「うるさいな!わかったよ!泊めてやるよ!!」

葵がキャメリアを睨みつける。

「ただし、キャメリア!わかってるだろうな?」

「ええ、葵さんのツタは解除する!」

葵はさらに条件を出した。

「それだけじゃない!!パルフェのツタは絶対に解除するな!その代わり、俺と同じホテルに泊めてやる!この町一番のランクだ!!」

「わかったわ!パルフェのツタは何があっても解かない。交換条件ってやつね!」

3人はウェストポートのホテルに葵の金で滞在することに成功した。

喜ぶパーティを背に葵はホテルへと向かって行った。

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