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月桂樹の冠,  作者: 叶笑美
東の大陸
11/215

仲間の無事

3人はシスターの目撃情報を元にアラビアータにある革加工の店を訪ねた。

「こんにちは・・・」とアスタが恐る恐る扉を開いて覗くと、いかにも職人といった風格の中年男性が革のなめし作業に集中していた。

もう一度声を掛けようかと悩んでいたら、後ろからハツラツとした男子の声が聞こえた。

「いらっしゃい!革製品が欲しいの?」

その声にアスタが振り向くと職人のような繋とシャツ、腕には頭に巻く用のバンダナを巻いたファルシが立っていた。

アスタが満面の笑みをこぼして抱きつく。

「ファルシ!!」

「アスタじゃないか!!」

すぐに離れて腕を組み合う。

「探したんだぞ、バカ!!」

「アスタこそ無事で良かった!!」

仲間と再会できた事にキャメリアとシャロンも安心した。

「よかった、仲間だったみたいで!」

「アスタ嬉しそうだね!」

少し体を離してさらに聞く。

「そういえば他の2人は知ってるか?」

「ああ、あとの2人も無事だよ!アスタだけ違う海流に乗ったみたいで、俺たち3人はここらの浜辺に打ち上げられたのを漁師に助けてもらったんだよ!みんなもアスタのことは気にしてたから、あとで顔を見せに行くといいよ!」

他の2人の無事も確認できてアスタは安心した。

「そうだ!紹介するよ!今、西の大陸を一緒に目指してる仲間だ!」

キャメリアとシャロンが紹介されて笑顔で挨拶する。

「召喚士のキャメリアよ!」

「魔導師のシャロンだよ!」

「俺はアスタと同じ島から来たファルシだ!いいなぁ、こんな可愛い子2人と旅なんかできて!」

突いていじってくるので「やめろよ!別にそんなんじゃないって!」と照れながらファルシを押し返す。

「ところでファルシ、革加工屋の弟子になったんだな」

「おう!元々実家が革の加工してたからな!やっぱお外の技術はすごいよ!!」

ファルシの話を聞いてキャメリアが質問する。

「アンティパストって、産業があるの?ずっと島の開拓作業させられてるんじゃないの?」

「魔王軍が来る前は普通に生活してたからな!それに、特産品として毎月魔王軍に島から献上もしてたんだ!俺ん家は革製品を渡してたよ!」

ファルシは得意気に答えた。

「アスタの家も何かあったの?」とシャロンに聞かれたが気まづそうに答える。

「ウチは何も無かったから、ただひたすら作業してたかな・・・」

「アスタのおじさんは元は貿易してたらしいからな。島で作った物や、お外の物を運んだり・・・。重要な仕事だけど、魔王軍が来てからは必要なくなった仕事だもんな」

ファルシの言葉を聞き、腕組みして苛立つ。

「魔王軍も迷惑なもんだよ!・・・ところでさ」

ファルシの腕を掴んで女子2人から見えない位置で例のチラシを見せる。

「みんなここに止まってるけど、4人揃ったんだ。これ目指して俺らと旅をしないか?あいつら女子だけど結構強くて頼りになるんだ!!」

「あー・・・その件だけど、俺はいいや・・・」

まさかのお断りに目を丸くする。

「おい!どうしたっていうんだよ!?お前らしくない!!革職人として目覚めたわけないし、どういう気の変わり様だよ!?」

すると、遠くから「ファルシ〜!」と女子の声が聞こえた。

目を血走らせて振り向くと、活発そうなファルシと同じく革職人の格好をした女子が駆け寄ってきた。

「も〜!一緒にお使い行きたかったのに、先に行っちゃうんだから!!」

焼きつけすぎて網膜に穴が開くんじゃないかというくらい瞳孔を開いて女子を見る。

さらに「ごめん、ごめん!」と鼻の下を伸ばしだらしなくニヤける元同胞ファルシを見た。

「あ!お客さん?」

やっとアスタ達に気づいて笑顔を向ける。

「紹介するよ!俺が前から探してた仲間の最後の1人、アスタとその旅仲間のキャメリアとシャロン!」

「あ!前に言ってた子、見つかったんだ!!良かったね!すごく心配してたもんね!!」

アスタは今にも呪いでもかけるんじゃないかというような眼差しをファルシに向け、小声で脅す。

「お前、俺をダシにこの子への好感度稼ぎしてないか?普通心配なら探しに来るだろ、女の子とイチャコラせずによぉ!ぁあん!?」

「いや、それは・・・アスタならきっと来ると思って・・・」

気まずい空気から、一つ咳払いをして仕切り直す。

「こちらはムスカリ!俺の師匠の娘さんだ!」

「よろしくね!私は主にはパパのお手伝いや、ファルシが今ウチで下宿してるからそのお世話係だよ!」

その言葉でさらに胸ぐらを掴み、血の涙を流して睨みつける。

「パパがセンスが良くて、勤勉なファルシのこと気に入ってて、将来はここを継げって言ってくれてるの!」

腕を組まれて見つめ合う2人にアスタは完全排除された。

「ということで悪いな、アスタ!俺はお前の幸せも祈ってる!!」

「うっせー!裏切り者!!」

吐き捨てて去ろうとしたら、引き止められた。

「アスタ!待てよ!」

「あん?まだやり残した幸せアピールでもあんのか?」

あまりにも荒んでいるアスタに苦笑いを返す。

「悪かったって!そうじゃなくて、カプレーゼが食堂で、ラペが運送屋で働いてるから、行ってみるといいよ!みんな力になってくれると思うからさ!」

「はいよ。みんなに会いに行ってみるよ」

また去ろうとするアスタの背中に声を掛ける。

「アスタ!明日の昼頃、また来てくれ!あとみんなによろしく!!」

「みんなに会ったらお前の裏切りの話で盛り上がってやるからな!!」

久々の再会だというのに仲間の幸せを素直に祝えず、傷心するアスタ。

そんな彼にかける言葉も見つからず、女子2人はただついていった。


革屋を後にしてからカプレーゼのいる食堂に向かった。

「いらっしゃい・・・アスタ!!」

「よぉ、カプレーゼ!!」

再会を喜び合い、抱き合うのはさっきと同じ流れだ。

「良かった!1人だけ違う場所に流されてたんだもの!心配したよ!!」

「俺は平気さ!運の強さだけはあるからな!!」

アスタが自信満々に胸を叩く。

「さっきファルシのところに行ってな、あいつ師匠の愛娘に手を出してやがんだ!!」

「ああ、ムスカリのこと?」

カプレーゼは知っているようだった。

「ところで、ご飯はもう食べた?もしよければここで食べて行かない?ここのマスターには事情を伝えてたから、僕の仲間が来たらいつでもご馳走するって言ってくれてるんだ!!」

「え!?助かるよ!!」

カプレーゼに案内されて席についたら、店のマスターが挨拶に来てくれた。

「まぁ!かわいい子達ね!!カプレーゼの仲間ってことは、私の子同然よ!たくさん食べてってね!!」

マスターはふくよかな体型に、母性を感じるような優しい雰囲気のある40代くらいの女性だった。

「カプレーゼも、革屋のファルシも、運送屋のラペもみんないい子でこの町に来てくれて嬉しいわ!!」

「えへへ!」と飲み物を運びながら照れ笑いをするカプレーゼ。

そんな友達の腕を掴んで小声で話しかける。

その光景を飲み物を飲みながら女子たちが『また何か言ってる・・・』と見守っていた。

「おい、カプレーゼ!いつ行くんだ?」

「え?どこに?」

とぼけたことを言うカプレーゼの肩を強く叩く。

「何寝ぼけたこと言ってんだ!!これに決まってるだろ!俺たちの最大の目的!女祭り!!」

思い出したかのように驚くのを見て、アスタがニヤリと笑う。

「やっと思い出したか!この食堂にいつまでもいるわけじゃないんだろ?あんなずんぐりむっくりのおばさんより、もっと若くてスレンダーな女を見に行こうぜ!!」

「アスタ、悪いけど僕抜きで行ってくれない?」

またもや断られて目を丸くする。

「どういうことだよ!?お前に至っては料理人の息子とかでもないのに・・・まさかあのおばさんに母性を感じたってのか!?」

「そういうわけじゃないけど・・・」

その時、店の扉が開きアスタは思わず入ってきた人物に言葉を失った。

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