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第13話 *眠*

 布飾りをわたしの髪に編み直してくれたノーエとルーに手を引かれて案内されたのは、大きな葉を持つ低木の茂みだった。

 川辺は風が寒いから、と連れてきてくれたこの場所はノーエとルーのとっておき(・・・・・)の場所だという。

 二人に続いて、頭を屈め茂みをくぐると、ちょうど枝葉が重なりあった部分に、ぽっかりと空間が広がっていた。

 どこもかしこも葉に覆われているその場所には、タンザとユノさんの家のように絨毯が敷かれ、座布団が置かれていた。

 枝にかけられたガラス玉が連なってきらきらと光っていた。

 色布でつくられた花飾りもところどころに咲いている。

 夏になったら木苺ができるんよ、とノーエが得意そうに教えてくれた。

 二人が指差す方へ見ると、大きな葉が重なる隙間からさっきいた川も、その向こうの街並みも見える。


  母ちゃんが言っちゃいかんよって言ってたんやけど、とルーは言った。


「おねーちゃん、宝珠の森に捨てられてたってほんと?」

「森でタンザにぃに見つけてもらったってほんと?」


 向かい合って座る二人が、わたしの膝に手をのせ探るように聞いてきた。


 宝珠の森(・・・・)は、タンザがユノさんにわたしのことを話した時に言っていた場所。

 ユノさんもおんせんで、わたしのことを聞かれた時に、宝珠の森(・・・・)にいたのをタンザが連れてきた、と言っていた。


 だからあなたの宮城と神樹があるあの場所は——いつの間に木々に囲まれてしまったと聞いたその場所は、みんなの言う宝珠の森であるのは間違いないのだろう。

 けれど。


「捨てられていたわけではないですよ」

「ほんと?」


 なぜなら、わたしはあなたに乞われ、自らあの場所に入った。

 あなたがわたしを眠りに落とした時も、止めることはしなかった。


「タンザに見つけてもらったのは、本当です」

「迷子だったの?」

「宝珠の森で何してたの?」

「眠っていました。タンザは眠っていたわたしを起こしてくれた人です」


 神樹の内から連れ出してもらった。

 抱えてもらった時にはもう、タンザの声も温度も届いていて、わたしの眠りも揺すられてはいたけれど。

 こうして今も起きていられるのは、あの方の眠りのまじないがかかった簪をタンザが抜いてしまったからだ。


 儲けたね、とグーナ婆が言ったそれがそうだったのかはわからない。

 わたしがいなくなったから、最期に残っていたあの場所まで壊れしまった。


 それでも。

 連れ出してもらった先のタンザとユノさんがいる場所は、あなたが整えてくれた神樹の中と同じくらい、あたたかくて居心地がよいと思う。

 宮城以外の場所を知らなかったから、今いる場所を不思議に思う。


「寝てたの?」

「宝珠の森で?」


 改めて頷くと、二人は揃って渋い顔をした。


「宝珠の森で寝ちゃうなんて危ないよぉー」

「母ちゃんが宝珠の森には近づいたらだめって言ってたよ?」

「前王朝のおばけがでるんよ? 入ったら出られなくなるって」

「変な音聞いた人もおるんよ? きっとお化けが呼ぶんだよ」

「そうなのですか?」

「「そうだよぉー」」


 よかったねぇ、なんにもなくて、と二人はわたしを抱きしめて言った。

 大丈夫でしたよ、とわたしは二人の袖をひく。


「悪い場所じゃありませんでした。お化けにも会えませんでした」

「「そう?」」

「ちゃんと出てくることもできました」


 わたしを抱きしめたまま、ノーエとルーはわたし越しに顔を見合わせて。


「「じゃあ」」


 宝珠の森で眠るってどんな感じだった? と揃いの声で聞いてきた。

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