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第12話 借金

 家に帰り着いたところで、タンザは「あぁー」と呻いた。

 戸口を陣取っているのは幼馴染の金貸しのソリだ。

 垂れ目がちではあるものの、他は顔の造作も背格好もやたらよく、愛想も性格もよいせいか、忌避されがちな職業の割に人をよく寄せ付ける。

 ほとほと困っている者には親身になって、破格の条件で金も貸してくれる。

 そのせいで彼自身、両親に口うるさく言われているようではあるが、改める様子がない。

 おかげさまで、タンザの家は困ったことになっていた。


 タンザを視界に入れるや、ソリは愛嬌よく、ひらりと手を振るう。


「ようやっとのお帰りか。聞いたぞ。タンザのくせに彼女とか、いいご身分だなぁー、おい」

「じゃないって、わかって言ってんだろ、お前」

「いやだって、タンザとユノおばさんが、やたら綺麗な子、連れてるって噂になってたからさぁ」


 で、その子はどこ、と聞かれ、タンザは手にした空の木桶でソリの腹を殴った。

 大袈裟に喚くソリを押しやって戸を開け、修理の道具を取りに中に入る。

 当然のように後について入り、さっさと胡座あぐらをかいてくつろぎはじめた幼馴染に、タンザは「おい」と声をあげた。


「おれ急いでるんだけど、出てってくんない!?」

「いや、こっちだってそろそろ返してもらわないと困るんだけど。返済の目処はたった? そろそろ期限だかんね? まぁ、たってなさそうだけど、おれも親父に報告しなくちゃならんくてさ」


 三人分だもんなぁ、と憐むように言われ、タンザは唸る。

 そもそもタンザの家の借金は人のよい父が、頼まれて保証人になったことが問題だった。

 しかも、まったく他人同士であるはずの三人が三人、返済期限である年の瀬を前に行方をくらましたことが原因である。

 せめて半年前に逃げ出していてくれたら、こちらだってなんとかやりくりをして用意のしようがあったかもしれない。

 だが、さすがに期限の一月前にそれをやられると、どうしようもない。

 元々あった貯蓄をあて、売れるものはソリの家が少しでも高い値がつくよう売り払ったが、さすがに三人分の借金を賄ってやれるだけの金はなかった。

 というより、それだけしても、あと二人半分も残っているのが現状だ。

 

「いや、おれも一応、三人目の時は止めたんよ? クマのおじさん、それでもこの人は大丈夫だからって言うし、ほんとその人、困ってたからさぁ」

「……わかってるよ。むしろうちのバカ父さんが迷惑かけて悪いって思ってる」

「そう言ってくれると助かるわ。んでもって、早く返してくれると、なお助かる。でないと、昔お前を振ったうちの妹もろとも、うちの家族も路頭に迷う」

「最後の余計じゃない!? そしてお前も、そんなかつかつの状態で、人にぽんぽん金貸すのやめろよ!?」

「まぁまぁ」

「いや、全然まぁまぁじゃないからな!?」

「かつかつの状態で、女の子拾ってきたタンザに言われたくないなぁ?」


 にへら、と言い返されて、タンザは押し黙った。

 で? とソリは辺りを見渡す。


「例の子は? ユノさんの店についてった?」

「いや、ノーエとルーに捕まった」

「あぁ。先を越されたか。ならさ。その子、なんて言うの?」

「え?」

「なんて名前?」

「え?」

「いや、だから、名前」


 うちの家族も気になっててさ、聞いてこいって言われてんだけど、とソリは言う。

 やたらと垂れてる幼馴染の目をまじまじと見返して、タンザは首を捻った。

 名前が何か聞いた覚えはあるが、答えを聞いた覚えがない。


「名前……なんだろ?」

「いや、知らないよ」


 ソリにものすごく呆れられ、タンザは地味に凹んだ。

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