9話 サラエボ事件
タブレットを手にしたジュンソンは、そのまま2階に上がり、<人文系>と書かれた自分の部屋のドアを開けてその中を見ながら呟いた。
「…私の部屋よりいいね。ちっ」
ベッドに机、着替えの服とおやつ、小さなトイレまであった。ジュンソンは静かに部屋のドアを閉め、ベッドに座り自分が受け取ったタブレットを見た。
タブレットには2つの機能しかなかった。投票機能と、他のプレーヤーと1対1で対話できる1対1の対話ウィンドウだった。ジュンソンは1対1で誰かに話をかけてみようかとちょっと考えたが、何も確信できない状況だったのですぐやめた。そして最後のサービスで、各プレーヤーのごく簡単なプロフィールたちを見ることができた。
プレーヤープロフィール
おじいさん(74歳、男):確固たる信念を持っていらっしゃる。
警備員(58歳、男):ドージコインを買って老後資金を失った。
多血質(46歳、男):予選から怒っていた方。
小母さん(44歳、女):キリスト教信仰心がとても深い。
インテリ(33歳、男):参加者の中で学力が一番高い。
ジムマン(30歳、男):彼の筋肉はナチュラルです。
ニート(30歳、男):何もしていないニートなので、紹介も書くことがない。
理工系(26歳、男):チューリングテスト予選、最短時間通過者。
人文系(26歳、男):学資金融資が4千万ウォンも残っていた男。
風俗系(24歳、女):正確に何をしているかはプライバシー。
福祉士(24歳、女):眼鏡を外すときれいだ。
女子高生(17歳、女):彼女の腕ぬきをはがすな。
「いや、私のチャーミングポイントが学資金融資だと!?他人の個人情報をこんなふうに使いやがって!そしてもう3500万ウォンだぞ!」
とにかく<ニート>よりはマシだったが。ジュンソンがあんなふうにぼやいていると、各部屋に設置されたスピーカーから<人工知能>レイナの声が聞こえてきた。
『みんな入りましたか?』
『それでは、部屋のドアと窓、両方を閉めます』
『マフィアゲーム1日目の夜を始めます』
『おやすみなさい』
『ティーヒーヒー』
‘…あの笑い声、どうにかならないかな’
マフィアゲームの1日目の昼が、こうやって終わった。ゲームは順調だった。
そしてチューリング·テストも順調に続いていた。最大の危険を粉砕しながら。
『夜になりました』
『マフィアは顔を上げて部屋から出てください』
「さあ…じゃあ、誰を殺せばいいんだ」
「声を小さくして。2階の部屋に聞こえたら駄目です」
「ここから声が聞こえて脱落すれば、主催者側の責任だ。そんなに心配なら、早く選んで帰ろうよ」
「選ぶって?昼に…いや、昼ではない。ほんの少し前に、マフィアも誰も脱落させずに、次に進めると言ったじゃないですか」
「ああ、そうだ。そうだったっけ。それで、それで?
「昼間に市民が、人々が誰も殺さなかったのは事実です。私たちも規則を利用して…!」
「ああ、規則」
「さっき、規則好きだったあの<福祉士>さん、この規則はなぜ読まなかった?」
「昼の裁判規則6番。6。裁判で脱落したプレイヤーがマフィアだった場合、プレイヤーは裁判機会を1回もっと得る」
「その意味、分かる?マフィアたちは、一瞬にして3人がくたばるかもしれないってことだ」
「だからといって殺人を…‼」
「殺人というのは言葉だけで、気切とかで終わるかもな」
「うーん、そんなことはないと思いますが。とにかく重要なのは、昼も夜も、何もなければ危険なのは明らかに我々です」
「警察が誰かを指名していることを忘れないでください」
「そうだ、そうだ。私たち3人とも、あまり怪しくなかったけど……だからといって残りの9人が別に怪しく見えたわけでもない。本当に12分の3、いや、11分の3の確率で誰かが発覚されるぞ」
「警察が探偵に憑依して、この三日間ドゥドゥドゥドゥって打てば、そしてそれが裁判規則6番と連動すれば?私たちは皆殺しだぞ」
「…でも私は殺人に反対です」
「いや、お前正気か!!」
「おい、赤いボール。1つ聞く。マフィアがマフィアを特定して脱落させるのもできるか?」
『問題はありません。2票さえ集めるのなら』
「そうだろ?」
「な…!」
「はいはい。レディースアンドジェントルマン。皆様、落ち着いてください」
「マフィア同士が喧嘩するのはありえません。投票というのは民主主義だから。それぞれ自由に選ぶようにしましょう」
「ただし、私は予め言っておきたい。<ニート>にします」
「何ですって?ほら、それでは…!」
「ああ、それはいいね。言っておくこと。私はまあ…2票に積極的に協力する」
「…私は他の人です。あなたも別の人を特定してください」
「ああ?ならば誰なのか教えてくれ。それでこそ私が他の人に投票することができる」
「……」
「ああ、どうでもいいさ。早く投票を始めよう」
「ふむ」
「おい、だからお前は、なんで<ニート>を指名したんだ?」
「単なる消去法です」
「言いたいことはたくさんあるだろうけど、一応、2日目の昼の様子を見ましょう」
「ああ、ビンゴのことですけど」
「何だ、人工知能の手がかりでも見つけたの?」
「意見統一が必要と思って。みんな、ビンゴには賛成ですか?できるという前提で」
「当然、賛成です。みんなが生き残られるから」
「私はちょっと……わずか3億のためにここに来たの?しかも、賞金は人がいなくなればなるほど増えるし。ビンゴはつまらん。<インテリ>にどうすれば同調できるか、ずっと一生懸命に考えたんだ」
「あなた、本当に人間失格ですね!」
「これも意見が分かれますね」
「まあ…とりあえず、ビンゴに賛成であれ反対であれ、ビンゴの時は指名されない方がいいです。自分が人間だとしても」
「それはどうして?」
「このゲームは、ちょっと奥が深い」
「なんとも説明しにくいんだけど……人間である確率が100%と確定した人は、不利になります」
「この場合は、<インテリ>はちょっと不利になったと言えるでしょう」
「かわいそうなことになったな。それじゃ、どうしよう?」
「だから適当に、ビンゴの反乱者にビンゴ投票をしないといいと思います」
「<警備員>に<理工系>と<インテリ>と<女子高生>」
「<インテリ>はすでにビンゴされたから論外。簡単ですね」
「いや、あの…なぜ反乱者に票を入れないの?」
「反乱分子に票を投じなければ、過半数達成の確率は低くなります」
「お前、本当に賢いね」
「私は過半数の達成を望んでいますけど」
「おい…‼」
「妥協しよう、妥協しよう」
「この4人を除いて、もう一方にビンゴ票を入れることに。標的と集中、両方を捕まえるのです」
「ああ、そうね。確かに、ビンゴ達成も悪くはないし」
「そうです。命を大切にしなさい」
『はい、はい』
『夜の投票は終わりました』
『マフィアの皆さんは頭を下げて部屋に静かに帰ってください』