7話 合従連衡
‘長いな……’
いくら縮約したって、規則そのものが余計に長かった。MTでマフィアゲームをした時は適当に、早く進められたが、いざそのルールを全部明文化すると、非常に長くて複雑になったのだ。さらに人工知能とビンゴ規則まで組み入れたので、さらに複雑になった。
疲れを感じるジュンソンだったが、一番下に書かれた文章が彼の疲れを一気に吹き飛ばしてしまった。それは他のプレーヤーも同じだった。
「おい、ちょっと待って。賞金……!?」
「賞金が33億からもっと増えるの?」
『はいはい。賞金増加の説明は省略しましたよね』
正確に言うと、プレーヤーたちが注目したのは賞金ルールの3番条項だった。レイナも驚いた口調でまた話を始めた。
『ペナルティ説明に集中して、いいものを外しました。申し訳ございません』
『予選の時、本選の総賞金は‘33億以上’だと言いましたよね。33億よりも増加できるということです。増加幅もかなり多く』
『まあ、簡単な話だから説明は必要ないですよね?もちろん、質問はいつでも受けます』
『個人的には、私も賞金がなるべく多く増えることを願っています』
レイナが賞金の説明を外したのも理由があった。違反するとゲームの進行を妨げる禁止規則とは違って、これはプレイヤーたちの注意が全く必要ない部分だったからだ。
そして先ほどあらゆる死の恐怖を間接的に体験したにもかかわらず、プレーヤーたちの目はいつの間にか他のルールよりも賞金の方に集中し始めた。ジュンソンもその金額に目を覚ました。
‘何だこれ。3億ウォンずつ増えるんだと…?賞金総額が40億…いや、50億も超えるかもしれないぞ⁉’
まさに魔法のように、頭の中から数字が出てきた。とにかく確定的だった。予選通過の500万ウォンなどは何でもないということは。
そして、みんなの欲望と恐怖が交差している時、結局<多血質>が再び荒っぽい口調で口を開いた。
「33億も信じられないのに、60億もあげるんだと?むしろもっと信じられない。ただ意味もなく数字だけを書いておいたんじゃないの?そして、ここに人工知能が人間のように座っているということも冗談のようだし。ありえないぞ?現代の科学技術では!」
「ふ…」
今回は<ニート>も<インテリ>も、<多血質>おじさんの言葉に軽く頷いた。すると<小母さん>が大げさに割り込んできた。
「あのさあのさ。もしかして、これドッキリじゃない?今、生存ゲームを撮影して、闇の富豪たちに転送してお金を稼いでいるかも。見せ物にしてね!」
『現代科学技術と現代社会についてご存知でしょうか?』
「は?」
陰謀論を繰り広げる人間たちの論争に飽きたというように、食卓の上に置かれた赤い球体が再び反論を提起した。彼女は赤い色を光らせながら慎重に言葉を選んだ。
『基本的に皆さんの命とか肉体とかは、その…あまり金銭的価値がありません。少なくとも、このテストの諸費用と賞金33億よりは下ですね。絶対に』
『見世物?こういうのを公開したら、企業が滅びますよ』
『何人は自分の臓器について心配していましたが、そちらもあまり興味はありません』
‘企業?’
何か黒幕の正体の一部分を表したその単語に、ジュンソンが注目した。しかしその程度は公開するというように、レイナは単刀直入にこの状況の定義を語り始めた。
『このゲームは、最先端の企業が文字通り人工知能の‘チューリングテスト’を行うために実施する臨床実験です。巨額の賞金もすべて研究開発費から充当するのです』
『そんな中、皆さんの命をかけたマフィアゲームは付加的なものです』
そこで、このゲームの名前はあくまでもチューリングテスト。
マフィアゲームは、そのチューリングテストの一部、ゲームの中のゲームに過ぎなかった。レイナは無味乾燥な口調で淡々と自分が知っている事実だけを並べ立てた。
『皆様に巨額の賞金を提供しながら同時に命をかけさせる理由は、人工知能の性能テストに最も良い形だからです』
『ルールは必ず守り、賞金は必ず支給されます。そうしないと、この研究とデータの価値が損なわれるからです』
『納得できましたか?それとも、まだ足りませんか?』
レイナの必死な話術に頷くのは<理工系>だけだった。他の人は半信半疑の表情で、今まで一言もなかった<女子高生>が急に口を開いた。
「詭弁だ」
『何がまた~?』
「熱心に観察したが、この11人は外見では区別できない。そもそもみんなが初めて見る人たちだし。外見で人工知能の区別は不可能だ。一体何を見て当てろというんだ?」
『うーん…』
それは<多血質>の不満と似ていながらも微妙に違っていた。<多血質>が人工知能の存在そのものを疑ったが、<女子高生>はこの中に人工知能があるとしても区別ができないと言っていた。レイナもその指摘に頷いて答えた。
『そうですね。チューリングテストは、あくまで自然言語で区別することが核心です』
『そこで、皆様のための人工知能ルールをご紹介いたします』
人工知能規則
1。12体のプレイヤーたちの中で1つは人工知能だ。
2。人工知能は嘘をつけない。
「ほう…」
その規則は断然異質で特殊だった。
そしてプレイヤーの何人かはそのルールに目を光らせたし、その中には<人文系>のキム·ジュンソンも含まれていた。マフィアゲーム経験者である彼は、そのルールが信じられなかった。
‘いや…あんなものを入れてもいいのか?よりによってマフィアゲームで?’
‘機械は嘘をつかない’という前提は、かなり有名な俗説であったが、いくら考えてもあれは作用する場所を間違えたようだった。
そして、プレイヤーが何を考えようと、レイナは興味がないというようにゲーム開始を宣言した。
『長い説明、聞いてくださってありがとうございます』
『じゃあ、今からマフィアゲーム1日目の昼を始めます』
『まあ、もう日は暮れたけど…』
<20時13分00秒>
すでに午後8時超過。本当に説明が長かった。
そして、レイナの言う通りもう日は暮れたが、一旦午後10時まではマフィアゲームの定義上‘昼’
だった。つまり、‘裁判’と‘ビンゴ’が1回ずつ可能な時間帯だったが、<インテリ>がじっと時計を見て言った。
「何かおかし……いや、何かずるいな」
『何がですか?』
「集まった時点で午後6時を過ぎた上に、夕食の時間までに設計し、そこに長いルールを説明……事実上ゲームが始まった時間は午後8時以後だなんて。何もしてないのに、1日目の夜が近づいてるじゃないか。これでいいか?」
『ああ。意図的でした』
<インテリ>の追及に、運営者側のレイナは自分の計画を素直に告白した。
『正直、1日目の昼は推理する材料って何一つありませんね……それで時間を短くしました。頭脳戦へ行くために』
『ルールを守る限度内の、ゲーム設計者の小細工というか?』
『それでも午後10時前に票決に入ったら、10時を過ぎてもその議題の結果が出るまで昼を終わらせません』
『‘合理的融通性’はいつでもあるから、心配しないでください!』
‘陰険な計画以後の融通性だろう、ちくりょ’
昼間に日を無くしてしまった人工知能、レイナ。
そして、今残っているのはプレイヤー12体の生存ゲームだけだった。チューリング·テスト、同時にマフィアゲーム1日目の昼が正式に始まった。
<チューリングテスト中>
『賞金総額:3、300、000、000ウォン』
<20時29分11秒>
「……」
10分以上、巨大な沈黙が会議室を支配した。騒げる人が12人もいるのに。
言わば、膠着状態。その理由は2つだった。マフィアゲームについてよく知らない高い年齢のプレイヤーらは、まだルールを確認していたし、マフィアゲームについて知っているプレイヤーたちは沈黙を守っているからだった。
‘このゲームの特徴の1つは……’
普通、出しゃばる奴が一番先に死ぬということだ。
目立たない方がいい。昼の市民投票であれ、夜のマフィア襲撃であれ。しかし、その沈黙の交錯を破って、<ニート>が手を挙げて言った。
「ああ…皆さん。このままなら、夜が来るんですよ」
「そりゃ、仕方ないだろ。何の証拠も推論もないのに、関係のない人をマフィア扱いして殺すわけにはいけないんだ」
「それは‘裁判’の話です。‘ビンゴ’はするべきでしょ?ビンゴは、間違っても人は死にません」
「それも同じだ。人工知能なの正体など全然分からない」
‘人工知能は嘘をつけない’という規則はかなり強力なはずだったが、今のこの状況では、それすらあまり意味がないように見えた。半分以上がほとんど一言もしゃべっていないから。
そして、また皆が沈黙する時、<おじいさん>がやさしく一言加えた。
「あああ、何も知らないんだ。投票かなんとか、何でもいいからやってみたら?」
「おじいさん!投票が間違ったら人が死にますよ!」
「この国はいつもそうだったが」
「あ…ちょっと待ってください。みんな、ちょっと待って」
くだらない話が交差した時、静かだった<福祉士>が手を挙げて、ルールを確認して提案した。
「裁判もビンゴも‘するかしないかの投票’があるから。特にビンゴは、どうせ失敗してもリスクもほとんどないし。‘ビンゴするかしないかの投票’はどうですか?レイナ、どうやって始めるの?」
『私に要請すればいいですよ』
『でも投票に入ると、投票制限時間は10分です。始まった投票をせず、邪魔するのは駄目です』
「それ、思いもよらなかったいいアイデアだな。それでは、10分間押さなかったら投票権がなくなるのか?」
『いいえ、すべての投票にとって、未参席者は脱落です。罪目は、ゲームに参加しなかった罪』
「……怖い」
大抵、マフィアゲームでこういう些細な部分はあまり問題にならない。みんな投票に意欲的だから。
しかし、このようなゲームに命をかけて数十億ウォンがかけられると、あらゆる些細な規則が気になって、確認を重ねなければならない作業と変わった。その中でレイナが言った。
『とにかく基本的には融通性です、融通性。それでは、ビンゴするかしないかの投票、開始しますか?』
「ちょっと、私は反対だ」
いきなり根も葉もなく反対意思を表明したのは<インテリ>だった。<女子高生>が聞いた。
「反対って何?」
「ビンゴするかしないかの投票するなら、私はそれに反対票を投じるってことだ。どうせ記名投票だから、予め言っておくんだ」
「え?人を殺す裁判でもないのに、人工知能を見つけるビンゴをなぜ反対するの!?12分の1の確率で、犠牲者なしで、みんなで3億ウォン持って行けるのに!」
<インテリ>の怠業宣言に怒った人は、やはり<多血質>だった。敢えて<インテリ>がこれ以上言わないと、<多血質>はそのまま指差しをしながら叫んだ。
「お前が人工知能だ。だから反対しているんだ!」
「いや、それは単純すぎる推理だと思いますが……」
『皆さん~?ビンゴするかしないかの投票、始めますか?』
「ちょっと待って、ちょっと待って!11票も必要なのに、すでに反対票が出たじゃないか。投票は保留せよ!」
沈黙が沈黙となるまでには5分もかからなかった。<風俗系>が自分の肩を指で叩きながら呟いた。
「どうせ11票なら、あの人が反対してもいいんじゃない?」
「いやいや、こういうのは初めてが重要なんだよ!おい、<インテリ>。ビンゴに反対する理由を言え」
「いやだ。黙秘権を行使する。黙秘権にちょうどいいゲームだよな。暴力禁止だから」
「黙秘権が好きな職業って決まっているぞ!こいつ、マフィアだからゲームをビンゴで終わらせたくないのだ!人を皆殺して増える賞金を狙っている!こんな奴は裁判で除去しなければならない!」
‘うん…?’
<多血質>の2番目の推理は、最初の推理より遥かに鋭かった。さらに脅迫まで加えられていたため、黙秘権を主張した<インテリ>も少し表情が変わった。
「おい、レイナ。今、この人、脅迫を使って正当な投票権行使を邪魔しているぞ。これでいいの!?」
『全然問題ありません』
『あの方が特に投票そのものを阻止するわけでもないし』
『むしろ、そのような暴言と脅迫と魔女狩りがマフィアゲームの醍醐味ですよ?』
『あ、もちろん暴力はダメだけど』
「思ったよりとんでもないゲームだよな。分かった。ビンゴに賛成すればいいじゃん。民主主義とか何とか、ここでは蒸発したぞ」
結局、<多血質>は<インテリ>の反乱票と宣戦布告をうまく鎮圧してしまい、皆がお互いを見つめながら頷くと、レイナが再び反応した。
『いいですね。では、第1回ビンゴするかしないかの投票を開始します』
『タブレットで賛成する場合は賛成を、反対する場合は反対をタッチしてください』
『誰がどこに投票したのかは全部公開されるから、匿名性に対する期待は捨ててください。制限時間は10分……なのに20秒カットですね』
<第1回ビンゴするかしないかの投票結果>
<賛成:12反対:0>
賛成:人文系、理工系、多血質、福祉士、ジムマン、小母さん、じいさん、風俗系、インテリ、警備員、女子高生、ニート
反対:なし
結果:11票以上の賛成を得たため、1日目のビンゴ実行