25話 鉄のカーテン
「……」
プレイヤーを待っている次の手順は「指名するかしないか投票」だった。<多血質>がちょっと時計を見て仲裁案を出した。
「裁判は裁判通りに行い、必勝法は必勝法通りに進めるのは……?」
「裁判で人が死んだ時点で、すでに必勝法ではありません!!」
「…それはいいとしても、医者が出てこないから、必勝法ももう駄目じゃないか」
残念ながらも、必勝法は何か交渉の材料でさえなかった。医者が出ない限り、存在も許されなかった。<理工系>が静かに言った。
「投票しましょう」
「なあに?結論が全然出なかったが?」
「だからやるのです。文字通り‘本物の民主主義’。ただ個人の判断に任せて」
「ちょっと待って。裁判に賛成すべきか反対すべきか、期待値くらいは説明してくれ!」
<小母さん>が切実に叫ぶと、<インテリ>が厳しい表情で言った。
「全然変わったことがない。市民の立場では裁判を開かなければならない。そして今は、マフィアと自白したプレーヤーもいる状況だし」
「可愛い言い方だな。皆を助けるために必勝法まで持ってきたこの<福祉士>を殺そうと?」
「可愛くない言い方だな、<多血質>。お前、もしかしてマフィアだから反対しているのか?昼を無事に乗り越えた後、夜に市民を殺すつもりで」
「この…‼」
結局、正しかったのは<理工系>だった。この問題はいくら解釈しても結論が出なかったので、そのまま個人の判断に委ねるしかなかった。<人文系>ジュンソンは、むしろ<多血質>が投票を強要した時代のほうがマシだと思った。
『うーん。じゃあ、指名するかしないか投票、進行しますか?』
「私は反対だわ。医師が協力するまで、すべての投票に」
『<福祉士>さんの明白な反対が出ました』
『これはこれは。ついに進行者の立場で、困った事態が発生したんですが……』
レイナが進行者として難色を示すと、沈黙を守っていたプレイヤーたちが立ち上がった。<インテリ>と<おじいさん>と<ジムマン>が次々と言った。
「その程度は、進行者の裁量で進めろ。ちぇっ、人工知能って」
「あのさ、進めるかどうかの投票でもしろっていうのかい?」
「いや、福祉士さん。まずこれは進めましょう。どうせ脱落投票を否決させると、人は死なないんです」
「……」
他のプレイヤーたちも静かに<福祉士>に不便だという視線を送っており、その無言の圧力が<福祉士>と<人工知能>を次々と屈服させた。
結局指名するかしないか投票窓がタブレットに現れ、ジュンソンはその雰囲気に違和感を感じながらしばらく投票ウィンドウを後にして1対1の対話ウィンドウを捜した。
人文系:でもこんなに早く投票しなきゃいけないの?
女子高生:知っていながら知らないふりしてるんですか?
人文系:何が?
女子高生:時間は思ったより足りないんです。
女子高生:今回の裁判でマフィアを捕まったら、今日の昼にもう1回裁判をしなければならないから
マフィアゲームの手順説明(昼間:指名と裁判)
6。裁判で脱落したプレイヤーがマフィアだった場合、プレイヤーは裁判機会を1回もっと得る。
「……‼」
たかが指名するかしないか投票の時点で、プレイヤーたちはその次を見ていたのだ。<福祉士>を殺してしまった後の時間帯を。プレイヤーたちの頭脳は、想像以上に鋭くて冷徹に動いていた。
『さあ、投票結果が出ましたああああ』
<第3回を指名するかしないか投票結果>
<賛成:7反対:3>
賛成:インテリ、じいさん、女子高生、ジムマン、理工系、警備員、小母さん
反対:福祉士、多血質、人文系
結果:過半数(6票)以上の賛成を得て、3日目の指名投票及び裁判の実行
投票は素早く終わり、結果が出た瞬間<インテリ>が質問した。
「指名投票も、延期する必要はないだろう?」
「まあ…!いくらなんでもそれは早すぎますよ!レイナが、時間は無制限だと言ったし!」
「無制限ではなく、午後10時までだ。そして、君は反対を押したよね、<人文系>。たった2人が<福祉士>のために反対を押したわけか……」
「……‼」
まるで時代の流れを掴んだように、<インテリ>が冷たい視線を向け、プレイヤーたちはその視線を追随した。すると<多血質>がジュンソンの代わりに反論した。
「おい!ただ<福祉士>の必勝法が皆が生きる道だから、それを信じたくて反対票を投じたんだよ!それをマフィアだと罵倒するつもりか!?みんなで一緒に4億!死なない4億!」
「医者が協力しないこの状況では、夜に100%死亡者が発生するはずだが、何がみんなが死なないというのか」
「だから医者が協力するまで待とうという……‼」
「ああ、うるさいな」
<インテリ>は露骨に<多血質>の言葉を無視して、自分のタブレットを露骨に叩き始めた。それはまるで救助信号を送るような態勢だったが、その救助信号は<人文系>のタブレットに到着した。
インテリ:おい、今指名を始めることに賛成せよ。指名も福祉士にしろ
インテリ:このメッセージはみんなに送っている。福祉士以外で。
人文系:何ですか?それで、皆で協力して福祉士を殺そうって?
人文系:必勝法を握っている人を??
インテリ:違う
インテリ:私がこのゲームを終わらせる。裁判一本で、すっかり
人文系:裁判1つで??
人文系:その方法が何ですか?
ジュンソンの最後の質問に、<インテリ>の回答はなかった。代わりに<警備員>が自分のタブレット見てから、堂々と手を挙げて言った。
「ほら、今我々の<インテリ>さんが、堂々と指名投票を勧めているじゃん。でも計画は話さないまま。何だよこれ?」
「その計画は言えません。ただ、必勝法がしっかり作動するということは断言できる」
「<福祉士>を殺してしまうのが必勝法だと?」
「そ…そうじゃない。うまく行けば、<福祉士>も生かす方法だ」
「……??」
<インテリ>は今、露骨に<福祉士>を裁判所に立たせるためにあらゆる政治工作をしながらそんなことを言ったので、全然信頼と理解ができなかった。すると、会議室には10人のプレーヤーによる阿鼻叫喚が始まった。
「いや、方法も言わずに人を殺す裁判を開けろと言うのか。医者が出るまで待てばいいじゃない!」
「どうせ自分をマフィアだと自白した福祉士に票を入れるつもりだったんだけど。しかし必勝法をなくすことは……」
「まずは指名だけして、脱落投票では反対を押せばいいんです。そのくらいは理解してくれるよな、<福祉士>?」
「それは私が望むところですが、皆さんは私がマフィアだという理由で賛成を押すと思います。医者を説得するのが最優先で、それを待たなければなりません」
「医者が出てないじゃないか!」
静かにしていたプレイヤーでさえこの混乱した状況には一言ずつ言い出し始め、沈黙を守っていた頃の会議場は、もう昔の思い出になった。統制不能のレベルでうるさくなり始めると、ついに<人工知能>レイナが口を開いた。
『あ…皆さん、注目』
『現在<インテリ>さんが露骨に指名投票開催を言っていて、<福祉士>さんが露骨に指名投票に反対しています』
『残りの方々は、主観がありませんね』
『何か他の意見がある方?』
レイナの定理に、<人文系>ジュンソンが異議を唱えた。
「なぜ催促なんだ。確かに、討論時間自体は午後10時まで無制限にするのがお前の方針だったぞ。なぜ割り込んでくるの」
『進行役として、自然な流れを説明しておきたいですね』
『午後10時にこの裁判が行われ、その結果‘マフィアが脱落’した時』
『規則によると市民はその日に裁判の機会をもう1回得られるが、その機会は自動的に失われます』
「え?何言ってんだよ、それ!?規則があるのに、規則を無視するって!」
『午後10時以降のことなので、昼がもう終わったからです』
『カラオケで時間切れになった時、最後の歌は最後まで歌えるけど次の歌は選曲できないという感じ?』
‘あの比喩は、余計にぴったりだな’
<人工知能>レイナは、今プレーヤーたちがそれとなく考えている‘次の裁判の機会’について話していた。一種の配慮とも言えるが、ジュンソンは異常なほど不快感を感じた。自然な説明を装った人為的な干渉と感じられたのだ。
そしてその干渉が力を発揮した。<小母さん>と<多血質>の意見が交差した。
「じゃあ、今回の指名は早く進行しないといけないの?」
「どうせなら、早くしておくのも……いいが」
‘いや、今<インテリ>が言う、ゲームを終わらせる方法は聞かずに!?’
聞くと答える人間でもないが。
最終的には、確信のない状態で指名投票が始まった。そして数分後、その結果もとても予想通り出た。
<3日目の指名投票結果>
<福祉士>8票、<インテリ>1票、<警備員>1票
<福祉士>:インテリ、理工系、小母さん、女子高生、警備員、おじいさん、ジムマン、人文系
<インテリ>:多血質
<警備員>:福祉士
結果:<福祉士>裁判開始
『上座に座ってください、<福祉士>さん』
『そして次の10分……』
<00時10分00秒>
指名投票が終わる瞬間から発生する、生死を分ける絶対の10分。
そして<福祉士>が下唇を噛んで上座に座って監禁されると、すべてのプレイヤーの視線は<インテリ>に向かった。<インテリ>も会心の笑みを浮かべながらその視線に応えた。
「ついに望んだ瞬間が来たぞ」
「まさか今になって、ただマフィア1人を殺そうとしてるんじゃないよね?期待値とか言いながら?」
「私をなめるな。それよりずっといいもんだよ」
「……?」
<インテリ>はタブレットを静かに食卓の上に置いた。
その後、彼はそのまま立ち上がって、上座の<福祉士>に近づいた。ゆっくり、急がないまま。そして彼は、とても根本的な質問1つを<福祉士>に投げかけた。
「他のマフィア2人、誰なのか言え」