14話 キューバミサイル危機
「あんたも同意したぞ。そして1日目に馬鹿なことを言ってビンゴのチャンスを逃したのはあんただ」
「何が何だと…?」
「やめなさい!これは皆が同意した投票だから、問い詰めるのはやめましょう」
<ジムマン>は愚図愚図言って2人の男を止めた。そしてそうしたプレイヤーたちをあざ笑うように、レイナは付加説明を付け加えた。
『午前中に私が言ったはずですが……皆さんの間に、私が隠れていると』
『皆さんという言葉の解釈は自由ですが、この発言に、もういない<ニート>さんは抜いてもいいんですよ』
「それで私たちが錯覚の沼に陥っているのに、一言も加えなかった?それが正しい進行者の姿勢だと思う?」
『ルールを守るのは私の義務です』
『そしてそれ以外のすべての事項は、私が自ら設定した加重値に従って行動するだけ』
『他の個体の戦略に干渉しないでくださいよね?』
「この、この…!」
嘘はつかないが、真実を配布することもない。
そしてジュンソンは、レイナの最後の言葉に少し驚いた。自ら何か戦略まで立てているということを堂々と述べた。レイナは進行役であり、このゲームのプレイヤーでもあるということだった。
‘やっぱり、やっぱり何か不公平だ……‼’
しかし、‘何が不公平なのか’と聞かれると、まだ具体的に話すことは難しかった。そのため、<人文系>ジュンソンは沈黙を守り、時間はどんどん流れていった。
<19時10分30秒>
沈黙と囁きが間欠的に通り過ぎ、マフィアゲームの2日目はビンゴが終わった状態で何も進まなかった。そして、その退屈さの中で<理工系>が提案した。
「指名するかしないか投票も始めましょう」
「まあ、そろそろ時間だから……でもどうしよう。裁判を開くべきか、やめるべきか?」
「何を聞く?マフィアが先に市民を殺したから、これから市民も裁判を開かなければならない!」
「でも誰がマフィアなのか、一人も知らない状態だけど?」
人工知能探しが12人のうち1人だったとすれば、マフィア探しは11人のうち3人だった。
故に、難易度そのものは人工知能探しより3倍以上易い仕事だったが、手がかりが一つもないのは今回も同じだった。<人文系>ジュンソンは改めて目の前の他の10人のプレイヤーたちを考察しながら1つ1つ指折り数え上げた。
‘だいたい壮年層以上の<おじいさん>と<警備員>、そして<小母さん>まではまだゲームルールに理解が足りず、大勢についていく感じだし……<福祉士>はヒューマニスト、<ジムマン>は親切なアドバイザー、<多血質>は本当に称号そのまま。<理工系>はルールの判断が早いし、<インテリ>も同じだがちょっとムカつく。<女子高生>は静かだけど、たまに核心を突く。<風俗系>は神経質だよ’
1日以上一緒にいたので、人々の性向は少し見えるようになったが、マフィアゲームの職業判断にはほとんど役に立たない情報だった。
例えば、現在の<インテリ>と<多血質>は仲が悪のが目立ったが、それを逆に考えると、マフィア2人で仕組んでいるのかもしれない。<警備員>や<ジムマン>の笑いは欺瞞に過ぎないかもしれないし、<福祉士>も昼には人を救おうと言いながらも、夜には銃を撃つのが趣味かもしれなかった。こういう観点では、プレーヤー全部が怪しかった。
「昨日も言っておきましたが、市民にとってはやはり裁判を開いたほうがいい、ということが私の計算ですが。裁判で犠牲になるのが市民であれマフィアであれ」
<理工系>が今回も規則と計算を振りかざして言った。昨日、彼が説明した昼の裁判の正当性は簡単だった。‘昼間に裁判を開かなければ、結局は夜に市民だけが死んでいく’という、非常に分かりやすい指摘だった。
「もちろんこれは理論上の話です。やはり、ただ罪のない市民を殺すことかもしれません。実際、マフィアが誰なのかは全く知らない状態だし」
「何だその意見は!結論を言え!」
「今度こそ個人の考えに任せようということです。ケチをつけないでください」
「おい、なんで私を見る!」
みんな<多血質>の怒鳴り声には呆れたようだった。しかし、敢えて<多血質>を非難する必要もなかった。どうせ人々は今、ほとんど自分の意志通りに投票しているから。ちょっと大勢に巻き込まれる感じだけど。
そこで、プレイヤーたちはビンゴに続いて指名するかしないか投票を実行することに同意し、それぞれの投票は10分間の複雑な悩みの末に行われた。
<第2回を指名するかしないか投票結果>
<賛成:7反対:4>
賛成:おじいさん、風俗系、理工系、女子高生、小母さん、多血質、人文系
反対:ジムマン、警備員、福祉士、インテリ
結果:過半数(6票)以上の賛成を得て、2日目の指名投票及び裁判の実行
「実行…ですが、反対票も結構ありますね」
昨日とは違う結果。
投票に文句をつけないことで合意したとは言え、今回も少数派に視線が集中するのは仕方なかった。自然と<ジムマン>と<警備員>と<インテリ>が次々と自分の反対理由を語った。3人の意見はほとんど同じだった。
「誤解するな。僕も裁判には賛成だ。しかし、今はヒントが何1つもないから、ちょっと気まずいということだ。マフィアの判別が必要だと思う」
「この若い青年と私は、同じ考えだ」
「私も同じだ。それに個人的な見解を言うと、ビンゴも外れたから今回の裁判も無駄になる予感がしただけだ」
「言い方」
ビンゴの1日目の指名対象者になってから、<インテリ>はプレイヤーに対する期待を大幅に下げたようだ。ジュンソンはそのすねた姿がなんとなく可愛いと思ったが、とにかくそのシニカルな態度は不和の原因となっていた。
一方、もっと単純な反対派もいた。<福祉士>が眼鏡をかけ直しながらきっぱりと言った。
「私は人を殺そうというすべての投票に反対します」
「なに?マフィアたちがもう夜<ニート>を殺したが?」
「それで選択の機会をつかんだ時、誰かを殺すのが正しいと?それは間違っています。誰かを傷つけるすべての選択は間違って…」
「本当に聞いてあげられないね。クソみたいな地味女が」
「……!?」
きしむ不協和音がもう1つ。
<福祉士>のヒューマニズムに反発した人は、すべての面で全く対照的な外見と性格を備えた同い年の女性<風俗系>であった。<福祉士>が彼女の言葉を信じられないというように聞き返した。
「今、何と言いましたか」
「クソ駄目だと。マザーテレサですか?マフィアが夜に人をもうぶっ殺したのに、まだ寝言言いやがって。論理さえないし。対策なしに、人を殺すのが悪いからダメだって?最近はディズニー映画にもあんたのような現実知らずの妄想家は出ないんだよ」
「……」
ラインをはるかに越えた。瞬く間に、破壊的に。
<風俗系>の容赦ない叱責に、プレーヤーたちは目を見開いて黙った。そして<福祉士>はその言葉を聞いて、社会的悲鳴を上げる代わりに破綻的なカウンターを叩き込んだ。
「現実を知らないのはあんただろう、低俗な娼婦が」
「は?」
「自分勝手に体を転がしながら売っているので、他人の命の大切なも知らなくなったの?これが今、男性たちに足を何回か広げて解決できるくらいの問題に見える?ここでは体の代わりに頭でもちょっと動かしてみろ。汚い口を閉じながら」
「あら、あら、あら…神様、どうしたらいいの。神様……」
隣で聞いていた<小母さん>が突然十字を切るほど、2人の女性の表情と言葉は前例がないほど険悪だった。しかし、これは始まりに過ぎなかった。命がけのゲーム中のこの孤立した別荘で、<風俗系>も<福祉士>も社会的な仮面をすべて脱ぎ捨てたまま、お互いに向かって節制のない憎悪を浴びせかけ始めた。
「言うのが本当に劣等感にさいなまれて生きる地味女そのものだな。羨ましいの?体を売って金を稼げるのが。あんたみたいな女は、学生時代から劣等に生きていく無色無臭人生だから。お前が何ヶ月間歯を食いしばって稼ぐお金、こっちはスイートルームでルームサービスを受けながら稼ぐんだ」
「それであんたの職業、親に説明とかできるの?後で結婚して子供産む時、恥ずかしくもない?私が困っている人々と共に助け合う時、あなたは吐き気を催す人間不信にかかって、男のキンタマでも比較しているだろう。その空っぽの頭を転がしながら」
「頭?あたまあ?超ウケる、本当に。あんたは体も駄目なくせに頭も回らないから福祉士とかやってるんじゃない?馬鹿が何かを選択したふりをしているね。社会福祉士?愛嬌もないのに勉強もできないやつらに、高校の先生がかわいそうな目で、誰でもできる善い職業として推薦する社会のどん底だよ」
「そんなふうに愛嬌を振りまいてきたあんたは、そのまま男たちに体を売る道にダイレクト直進できたんだな。人々が気づかないと思う?敢えて名札をつけなくても、低俗に身を売る女は言行に烙印が刻まれている。あんたは一生、安っぽい人間群像と質の低い交感を交わしながら生きていくおぞましい娼婦。一生洗っても皿洗いができない汚さだ」
「……」
二人の女の滑らかな舌の刃が、互いの人格を容赦なくめった切りしていた。