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マフィアゲーム  作者: Kim Junsung
12/48

12話 非可算集合

挿絵(By みてみん)


「…え?」

<人文系>の指摘により、プレイヤーたちの表情が急激に、あるいは少しずつ変わっていった。

ジュンソンが気になったのは、レイナが強迫観念に近いほど嘘をつかないという事実だった。それは規則の1つである‘人工知能は嘘をつけない’を遵守する姿だった。

ところが、この規則はプレイヤーの中に潜んでいる人工知能を探すのに役立つ規則として導入されたことでもあった。この‘奇妙な重ね合わせ現象’に対してジュンソンに違和感を感じ、辿り着いた結論は<人工知能>レイナとプレイヤーの中に潜む<人工知能>が同一人物だという結論だった。

『とある個体の同一性というのは、厳密な定義と多様な哲学が動員されなければならない概念ですが……』

『そういう面倒なことは却下』

『そうです。今私を見ている皆さんの間に、私が隠れています』

「……‼」

その言葉にプレイヤーたちが見せてくれた反応は、昨日とほぼ同じだった。人間たちは目を見開いて、自分の周りの人たちを観察した。

「当たり前のことを、何こんなに大げさに……みんな、どうして驚いた表情をしているの?昨日私たち12人の中にいると言った時点で、それは当たり前だろ」

<インテリ>が無関心な表情でそう答えたが、ほとんどのプレイヤーは<人文系>ジュンソンの指摘を全く新しい事実として受け止めていた。

同時に、それは禍々しい事実でもあった。今、無機質に規則を守りながら人間1人の命を奪った人工知能が、まさに自分の周りで人間を演じているという意味だったのだから。

そして中でも、<風俗系>が足を組んで単刀直入に文句を言った。

「それが事実なら……クソ不公平なんだ」

『何がですか?』

「何が?お前は一種の審判、いやゲームの運営人みたいなものだろ。そういうのが私たちの間に座って、プレーヤーの役割もするって?正気なの?」

「そう、そう!自分が不利になると、勝手にルールも変えたり、投票も操作したりするよね!」

<風俗系>の言葉に<小母さん>も同調し、プレイヤー間のざわめく声は次第に大きくなった。そして、そのような感情的な表現をあざ笑った<インテリ>でさえ、眼鏡をかけ直しながら問題点を指摘していた。

「確かに納得しにくい。マフィアゲームの最大のポイントは、それぞれの職業を誰が持っているのか分からないことだけど、あれはもう職業分布を知ってるんじゃないか。進行者が直接参加するマフィアゲーム?話にならない」

「あのメガネの話一つ一つがすべてムカつくけど、あれは正しい。こういうのをテストとかゲームだと?自分が直接採点するフィギュアスケートよりも不公平だ」

サバイバルゲームの公正性に対する不平不満が殺到する中、この不満に火をつけた張本人である<人文系>ジュンソンは、むしろ沈黙を守りながら<人工知能>レイナを見つめた。元々、放火犯が一番静かなわけだった。そして彼女はゆっくりと火を消し始めた。

『私はルールを守ります』

『このチューリングテストの規則とシステムは‘私が可能な限り’公平な勝負として作動するように設計しました』

『人間レベルの認知能力段階で、私の設計の矛盾は存在しません』

『人間レベルで考えられる不公平さはすべて遮断されたとも言えます』

レイナの答えは、平行線を辿る反復的な発言だった。そしてどうしても納得できなかった<インテリ>が、もう一度皮肉るような口調で呟いた。

「耳が故障した?人工知能。たった今、情報非対称に基づいた不公平さを並べたんだけど?反論はしないまま、オウムのように公平だと主張するのがお前の意見の全部か?」

『自分で設計して進行するテストの公正性を判断することは人間の権利であり趣味である』

『私はただ最短、最善の実験を設計して進行するだけ』

『この過程のどこにも、皆さんの理解と納得が必要な区間はありません』

『故に、説得の必要も感じられませんね』

‘設計して進行…!?’

他のプレイヤーが不満を吐露した時、<人文系>は息を殺して情報を吸い込んでいた。投げ出してくる無味乾燥な文章の中から、単語をかき集めた。たった今、レイナは自然にもう1つ情報を漏らした。このゲームの進行者を兼ねるとともに、このゲームの設計者ですら自分であるという事実を。

一方、<理工系>はもう少し冷たい観点から指摘した。

「もっと素直に、露骨に言えばいいのに。プレイヤーの首輪の作動権をお前が持っているから、何でもお前の勝手だということを」

『あ~それは違いますよ』

『ルールを守ると言いました。皆さんがルールを守ってゲームに勝てば、首輪が作動することは絶対にありません』

『皆さんが私を分解するとしても』

敢えて言うと、分解する行為が絶対基本規則の1番違反だが。

そして<人工知能>レイナは、自分の赤い瞳を輝かせてこの論争に決着をつけた。

『まあまあ、速断しないでください。私とテストの公正さは、時間が経てば経つほど自然に分かるようになるはずだから』

『そうですね……自分で採点するフィギュアスケート?』

『私はそれも公正に進める自信があります』

「……」

納得するプレーヤーはいくらもいなかったが、これ以上不満を申し立てるプレーヤーもいなかった。

おそらく<理工系>がふと言及した首輪の作動権の部分のせいだった。レイナは安全を保障したが、それでも人間は無意識的に縮こまるしかないのだ。自分の生殺与奪の権を手にした個体の前では。




<15時04分10秒>

『賞金総額:3、600、000、000ウォン』

睡眠不足を訴えた人が多すぎたので、2日目のプレーヤーの‘ミーティング’は午後3時ごろに行われるようになった。

<おじいさん>、<警備員>、<多血質>、<小母さん>、<インテリ>、<ジムマン>、<理工系>、<人文系>、<風俗系>、<福祉士>、<女子高生>。総数11人、男性7人、女性4人の黄金比率で集まった彼らは、食卓の上に赤いボールを置いたまま、本格的にマフィアゲーム2日目を始める予定だった。しかし、まだ進行者の<人工知能>レイナに対する不満が収まらない状況だった。<多血質>がぼやいた。

「このような不公平なゲーム、絶対やらないといけないのか?みんなが団結して、ストライキを起こすのはどう?」

「それじゃ、また昼を断るって?市民がまた死ぬだろう」

「そういうところじゃなくて、ただ、私たちみんなが手をつないで、この山を降りてしまうとか」

「皆殺しがお前の望みか?」

「お前どうして文句ばかりだ!そして敬語はどこに行った?年も取ってないやつが!」

<多血質>と<インテリ>は、同じ場所に座っているだけで喧嘩になっていた。それ以外にもみんな不満そうな顔だったが、<おじいさん>がいきなり口を開いた。

「確かに、若者たちが文句が多すぎるよね。ゲームが公平なのかはよく分からないけど、とにかくこの状況で勝つ方法はもうあるじゃん。‘ビンゴ’で人工知能を見つけてゲームを終わらせればいいんじゃん」

「言葉では正しいですが、人工知能はどうやって見つけるつもりですか」

「それは賢い若者たちが……」

「…やめましょう」

すでに2日に渡って何時間も一緒にいたが、誰も身体的に変な人がいなかった。

プレイヤーたちは少しずつ会話をしたり食事をしたりしながら、間接的に数多い‘観察’をしてみたが、到底人々の外見に異常を見つけることができなかった。その点にとって、すでに<人工知能>は自信を持っているに違いなかった。<ジムマン>が信じられないというように呟いた。

「率直に言ってもいい?この中に人工知能があるとするなら、リアルドールとか映画CGみたいなレベルじゃない。実際の人間と区別が不可能なレベルで体を作ったと?絶対ありえないと思うけど!」

「そうそう。最初からすごくあやしかったんだ!これはどう?最初から人工知能レイナって存在しないんだ。ここはみんな人間で、あの赤いボールはスマートフォンみたいなものだよ。誰かがリアルタイムでこの様を見ながら、あのボールを通じて何でもしゃべっているんだよ。こっちの方が話になるだろ!」

<多血質>の不平に、<インテリ>はうんざりした表情を浮かべていたが、<小母さん>と<警備員>はひそかに頷いていた。ジュンソンも、今回の発言だけは一理あると思って食卓の中央を見つめた。極めて現実的な陰謀論だった。

一方、食卓の上の赤いボール、<人工知能>レイナは、その言葉を聞いてとても楽しそうに口を開いた。

『そういう風に結論を下すのも自由ですけど』

『今皆さんの発言は、ティーヒーヒー……』

『チューリングテストとしては、完全無欠に私の勝利を宣言してもいいくらいですね』

『ぜひ、他の人に聞かせてもらいたい』

「……」

それは見下したような声ではなかった。

ただ見下した声だった。彼女はプレーヤー全員を多血質にする才能を持っているに違いなかった。そしてそういう中で、<福祉士>が手を挙げて言った。

「お互い自己紹介をしたらどうですか?」

「どうして?」

「このまま私たちは一緒に数日を過ごすことになります。しかし私たちは今、お互い名前も知らない状態ですね。こうして集まったついでに……」

「それはいい考えだ。私からやるぞ?私が生まれた所は、忠清南道保寧で、本貫は……」

複雑なゲームの話には沈黙を守っていた<おじいさん>が、にこにこ笑いながら自己紹介を始めようとした瞬間、「風俗系」が顔をしかめ自己紹介を拒否した。

「本当に情けないな。大学のMTなの?一緒に過ごすって何よ。すぐ殺される人たちが。そして殺し合う人たちの名前なんて知りたくもありませんね」

「言い方。若い妻子がどうしてそんなに悲観的なの」

「昨日だったら良かったかも。しかしもう人が死んでるよ。今ここには、殺人者が3人もいるんです」

「……」

パーフェクトゲームを逃したグラウンドに残ったのは、血だらけのストライクだけだった。そして、その最中に<女子高生>が手を挙げて言った。

「私も自己紹介は別に」

「お前はなぜ…」

対話の代わりに、<女子高生>は自分の腕ぬきをそっと下ろして手首を見せた。手首に刻まれたいくつかの線を見たプレーヤーたちは、表情をしかめながら口をつぐんだ。

結局、自己紹介の時間は<おじいさん>の故郷と人生史の自慢の時間になった。ジュンソンは数分ほどその話を聞き流し、<インテリ>が我慢できないというような新しい提案をした。

「自己紹介が嫌なら、これはどう?チューリングテスト予選の話」

「何ですか、それは?」

「ここに集まった人たちは全部、その変な部屋で厚い服の男が人工知能だということに気づいてからここに来たんだ。その時の話を聞きたい。何人かは一体どうやってパスしたのか疑わしいし」

「は、あのふざけるな人工知能から‘インテリ’と言われて、一々偉そうに言いやがって」

<人文系>ジュンソンは<インテリ>の提案が悪くないと思った。マフィアゲームには会話が必要だったから。それがどんな内容であれ。

とにかく<福祉士>の自己紹介とは異なり、<インテリ>の提案したチューリングテスト予選の話には、あまり反対の声はなかった。みんなの暗黙の了解を得て、プレイヤーのチューリングテスト予選物語が始まった。今回も<おじいさん>が一番先に口を開いた。

「私は、テストとか何とか、何が何んだとか聞いたら、人間と人工知能を区別する試験なんだって!それで、もしかしてそっちが人工知能なのか何かと聞いたら、そうなんですって。それで合格したんだ」

「……それが全部ですか?」

「それじゃ、なに、作り話だと思う?」

合格だと言われたから正しい合格だが、果たしてテストと呼べるかさえ疑問な事例。

しかし、<おじいさん>の事例は、その次の事例に比べると、むしろチューリングテストの趣旨にとても合う合格であった。<小母さん>と<多血質>が次々と自分たちの予選過程を説明した。

「部屋の中に入ると、青年の服がすごく暑く見えたの。だから服をこうやって握って、ちょっと脱がそうとした。そうすると、その中に機械があったの。そして合格だって。その日に限って、何だかおせっかいをしたかったの。私は神様の御意に従ってここに来たのだ」

「神様を除けば私と同じだな。私はまあ、機械音を出すやつに、いきなり帰れと言われて、腹が立ってうわごとするなって胸ぐらを掴んだら、いきなり赤いボールがぽつんと落ちてきた」

‘あんなやり方も許されるの!?’

偏向的に解釈すれば、‘触って確認’してテストを通過したとも言える。実際は、ただ勝手に触ってみたら機械だったという話だったが。それに<ジムマン>と<風俗系>が言った見分け方は、なおさら奇想天外だった。

「僕は人を初めて見る時、息をする筋肉の形を注意深く見る癖がある。しかしその部屋の男の人は、息をしなかったんだ」

「私が身なりをちょっと……暑さに適応した服を着ていくと、人の目が本当に~~~不自然に動くんだ。これは男女問わずだ。ところがその部屋の男は、私があちこち体を動かしても何の反応も見せなかった。機械だったからな」

それさえも、この人たちは親切に話してくれた方だった。<理工系>と<女子高生>の返事は非常に短く、同時に本当に気持ち悪かった。

「テストの名前を見た瞬間から、最初から知っていた」

「決まっているんですね?」

「何と…私のように、会話と推理を通して解いた人はいませんか?」

ジュンソンが呆れながら聞いた。大まかに<インテリ>と<福祉士>は推理で解いたと手を上げたが、<警備員>は間抜けな表情をするだけだった。

すなわち、チューリングテスト予選は、ジュンソンのように正攻法で推理する場合がむしろ珍しくて、大部分が身体的違和感を感じて解いたという話だった。この点を念頭に置いて身体接触禁止条項を入れたのなら、確かに<人工知能>レイナは予選で何かを学んだわけである。ジュンソンはその事実にちょっと腹が立って時計を見ながら話した。


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