探しものは何ですか? 2
なくしたら困ってしまう大切なものといえば……。
「そうだ、通帳やカードじゃない?」
おばあちゃんは、おじいちゃんの写真が飾ってある棚の引き出しを開けてみた。
「通帳もあるし、カードもあるねぇ。」
そうかぁ。お金関係じゃないんだなあ。ほっとしたような、困ったような。
写真立ての中のおじいちゃんは、にっこり微笑んでいるけれど、何も教えてくれない。
「他に何か思い出せることはない?」
「そうねぇ……。そう言われてみると、何だか、あったかくなるものだったような気がする。」
窓の外の雪景色を見て、はたとひらめく。
「あ! じゃあ、あの手袋じゃない? どこかに出かけて、置いてきてしまったのかもしれないよ。」
おばあちゃんはいつも下駄箱の上に、茶色い皮の手袋をきちんとそろえて置いているのだ。手袋の指を一本一本、ピンと伸ばし、とっても丁寧に扱っているので、「何でそうするの?」と聞いてみたことがある。すると、おばあちゃんは
「これはね、昔、おじいちゃんにもらったものなの。」
と教えてくれた。ふふふと笑うおばあちゃんの目が、とてもかわいらしかった。
そうだ。きっとあの手袋だ! 優希は小走りで玄関に向かった。
だが、手袋はいつもの場所にちゃんとあった。
う~ん……、困った……。どうしよう。
写真立てのおじいちゃんの顔を見上げる。「おじいちゃん、何だと思う?」と、問いかけてみる。
「あ、そうだ! 写真じゃないの?」
優希が叫んだ。
おばあちゃんが大事にしていた家族写真。
まだ若かったおじいちゃんとおばあちゃん、優希の母さんがちょうど今の優希くらいの時の写真。母さんの弟の良行おじさんも、一緒に写っている写真。4人家族で、遊園地に行ったときの写真だそうだ。おばあちゃんは、時々その写真を見ては、当時のことを優希に教えてくれた。
「奈美は、ジェットコースターが怖くて、わんわん泣いたのよ。いつまでたっても、高いところが苦手なのは、なおらなかったわ。」
奈美というのは優希のお母さんの名前。何でもバリバリやってのけるお母さんにそんな時があったなんて、とっても不思議な気がする。写真のお母さんは、ちょっと涙目で、おばあちゃんの、服のすそをしっかり握りしめていた。
「あの写真、ほら、遊園地の。いつもおばあちゃん、見てるでしょ。」
「ああ、あの写真!」
「おばあちゃん、あの写真、仏壇に置いてるよね。」
急いで仏壇に向かうおばあちゃん。
しかし、おじいちゃんの位牌の横に、写真はいつものように立てかけられていた。
じゃあ、おばあちゃんの探しものは何?




