追いつけない
追いつけない
それにしてもなんて速さ。
とにかく追いついて、ここが何処かを聞かないと。そう思って追いかけ始めているんだが追いつけない。
少し近づいたかと感じたら、また引き離される。そんな感じで10分以上も歩いただろうか。
人家が見えてきた。あそこへ向かっているんだろうか。
家への上り道が見えてきた。
どんどん近づいていく。
さぁいよいよ話が聞けると上り始めたが、見えなくなっていた。
「え、どこへ?」
家の前まできたが誰も居ない。
仕方がない。家の中へ声をかけた。
「すみません。どなたかいらっしゃいませんか?」
「・・・・・・はい」野太い男の声がした。
現れたのは、中年の男性だった。
「何か用ですか」
「いえ、道に迷ったらしくて、ここはどこでしょう?」
「あんた、どこから来たんだ」
「あ、私歩いてたら森の中でして・・・・・・」
「ああ、ああ、じゃあ駐在に電話するから、ちょっとそこに座りなさい」
「は、警察ですか?」
「そうだよ。迷子なんだろ」と電話をかけ始めた。
・・・・・・
「そう、また出たんだよ。迷子。大人だ。あんた年いくつ?」
24歳と答えると、その後しばらく電話をしていた。
・・・・・・
「で、あんたどこに住んでるの?」
私は、○○県xx市と答えた。すると、
「ここは、△△県だよ。ずいぶん遠くまで来たね」と笑って言われた。
「さっきまた出たって言ってましたよね。よく迷子が出るんですか」
それには答えず、
「駐在から人がくるから、お金貸してもらって帰りなさい」
とだけ言うと農作業があるからと言って出て行ってしまった。
巫女さんを見かけたということと、彼女を知らないかと聞くことも
忘れていた。