廻る世界
「やあ、君が勇者かい? 」
魔王からの第一声はそんな言葉だった。
「そうだ、俺が勇者だ。そしてお前を倒す者だ」
「そうか」
天井を見上げる魔王。
何か仕掛けてくる気か?
俺は最大限の注意を払いながら魔王を見る。
「ん? 何だ。そんなに警戒しなくても……まぁそうだなそういうものか
ではさっそく殺し合いを始めようか、勇者」
魔王の一撃から戦いは始まった。
足が床にめりこむ一撃。
それを刀で受けた俺は魔王の腹を蹴り飛ばす。
「ほう、最近の勇者はこんなこともするのか」
魔王は蹴られた辺りを軽く払い、再び斬りかかってくる。
負けじと俺も斬りかかる。
お互いの剣がぶつかり火花が散る。
魔王の剣を流して、刀を振り下ろせば魔王はひらりとかわして横に一閃
死んだと思った瞬間、リサからもらったお守りが弾けた。
意表を突かれた魔王の動きが止まる。
俺はすかさず魔王の首を刎ねた。
ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ
危なかった。
危なかったが、何とか魔王を倒せた。
俺の命を守り、魔王の動きを止めてくれたお守りに
いや、リサに感謝しなくては。
彼女は俺の守護天使だ。
これでやっと終わる。
世界を守ったのだと感慨にふけっていると
ブザーが鳴り響く
ブーーーーーーーーー
只今を持ちまして
148代 魔王が討伐されました。
何だこれは?
いまいち状況がつかめない中ぞろぞろと人が入って来た。
そうして口々に言う
おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう
おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう
おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう
君が勇者だ 君が勇者だ 君が勇者だ 君が勇者だ 君が勇者だ 君が勇者だ
君が勇者だ 君が勇者だ 君が勇者だ 君が勇者だ 君が勇者だ 君が勇者だ
君が勇者だ 君が勇者だ 君が勇者だ 君が勇者だ 君が勇者だ 君が勇者だ
君が魔王だ
君が次の魔王だ
おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう
おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう
おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう おめでとう
君が魔王だ 君が魔王だ 君が魔王だ 君が魔王だ 君が魔王だ 君が魔王だ
君が魔王だ 君が魔王だ 君が魔王だ 君が魔王だ 君が魔王だ 君が魔王だ
君が魔王だ 君が魔王だ 君が魔王だ 君が魔王だ 君が魔王だ 君が魔王だ
「魔王? どういうことだ、魔王は俺が倒したぞ!」
「だからじゃよ。だから君が次の魔王なんじゃ」
「何を言っている。そんな訳あるか」
「なんじゃ、物分かりの悪い奴じゃな。先代はすぐに理解しておったぞ」
「お主はこれからここで魔王として過ごすのじゃ」
「これからお前は勇者と戦い続けるんじゃ」
こいつらは一体何を言っているんだ?
もういい、さっさと帰ろう。
リサに会いたい。
そう思って部屋を出ようとするが出れなかった。
一体どうなっているんだ?
何度試しても部屋から出れない。
どうなっているんだ!
俺はただ世界を、村を、リサを守りたかっただけなのに
何なんだ!
「俺をここから出せ!」
叫んだ声が空しく部屋に響いた。
「さぁ次の勇者はどこから選ぼうか? 」
「次はここら辺りはどうじゃ? 」
「そろそろこっちからも選んでくれんかのう? 」
「いやいや、こっちからの方がいいじゃろう。面白くなりそうじゃ」