3/47
机
「何か事情でも?」
「いえ、言っていいものなのか……」
「ここで言ったことは秘密にしますから」
さあ、言ってみてくださいよ。俺は女性に話しをうながした。
女性の首元から、汗がひとつ流れ落ちた。
「今から、一週間前だったかしら。白い猫が私の家にきたの」
「飼っていたわけではないのですか?」
「ええ、私のアパートはペット禁止なのよ。その日は今日みたいな寒い日だったから、窓の鍵はしっかり閉めておいたわ」
けれど、と女性は話しを続けた。
「いつに間にか猫がいたの。あの白い猫が、私の化粧机の上に……」
さらに、女性は話す。猫は血のような真っ赤な目でこちらを見ていたこと。瞬きした時には、消えていたこと。
「私、夢を見たんだと思って、そのまま会社に行ったのよ。でもまた、夜に化粧机の上に現れた」
腕をさする女性に、俺は話しを続けるように言った。