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少年は願い、少女は求める。

世界の移り変わりに、光の神は気づかない。

作者: 池中織奈

少年は願い、少女は求めるシリーズ第16弾

 「ピリカ、こちらをどうぞ」

 「ピリカ———」

 私の周りにはたくさんの神が居る。

 此処は神界。神々の住まう世界。そして、私、光の神ピリカはこの神界の中心にいる。ふふ、お姫様のようなものなんだって皆いってくれるのよ。当然よね、私なんだから。

 私の寵愛を得ようと必死に動く男たちを見ると気分が良いわ。でも私は誰か一人のものになっていい存在ではないもの。だから、一人に定めたりなんかしないわ。

 それにしても……、火の神フランはどうしましょう。私の傍に侍るようになったのは良いことだけれども、この私が体を許してあげるといっているのに「ピリカに触れるなんて」と遠慮して触れてくれないの。私はフランにも私の愛をあげたいのに。

 フランはとても美しい男性だわ。かっこよくて。力も強くて。私の愛を受け取る権利はあるというのに。

 フランの元奥さんのウィントという忌々しい女神のことを気にして私の愛を受け取れないなんて。本当に、居なくなっても、あの女は……と思ってならないわ。

 あの女さえそもそもいなければ、フランは奥さんがいるからと最初から遠慮することもなかっただろうし。あの女さえいなければ私はフランと仲良くできて。あの女とフランの娘だって、もしかしたら私とフランの娘になっていたかもしれないのに。

 それにしても、あの女は子をもうけたというのに、私は子供が一人も出来ないのよ! 本当理不尽だわ。フィートが私の娘になればいいのに、何故だか、私のことを避けているし。本当に忌々しいわ。

 ピリカ、ピリカと、私の名がささやかれる神界は本当に良い場所になったわ。

 私が生まれた頃はあの女がこの神界で力をつけていて、本当に忌々しかったわ。私が私がやりたいようにしているのをとがめてきたり。私は神なのよ。そもそもあの女の神は平等であるべきなんて考え方おかしいのよ。私たちは神よ。人の上に立つ存在なのよ。だというのに、あんな考えをしているなんて神としておかしいわ。そもそも何故、私たちが下界のもののために行動をうつさなきゃいけないのかもさっぱり分からないわ。私たちは傅かれる存在であって、下界のもののために行動を移す必要性なんてないもの。

 本当に人々の信仰がなければ私たちが成り立たない? そんなの、信仰するように仕向ければいいだけじゃない。下界の人々なんて、神である私たちのことを勝手に信仰しているわよ。

 あの女を封印した時にあの女の記録は全て抹消して、あの女という神が居なかったようにしたわ。それでも抵抗するような愚かなものもいたけど、私たちが力を見せたら、あの女への信仰は失いますと宣言したわ。それから大々的にあの女への信仰は失われたはずだもの。だから、あの女が幾ら強い力を持っていてももういないの。ふふっ、清々したわ。だってこの私をとがめるからいけないのよ。下界のものを大切にしていたあの女が下界のものに見捨てられて、消え去るなんて、本当に今思い出しても笑えるわ。

 あの女を封印してから、私たち神々は下界に顔を出すことさえしていない。というのに、私たちはもちろん消えてないもの。あの女は下界のものを大切にしなければならないとかいっていたけど、別に私たちが何もしなくても、下界のものたちは私たちへの信仰を失うこともないじゃないの。

 私は、下界で私が一番力が強くて偉い神様だってちゃんと八百年前に知らしめたから私はとても信仰されているのよ。本当に気分が良いわ。

 私はこれからもずーっと、ここで楽しく生きるの。そのためにフランに愛を与えたいから、今はそれに必死なの。フランだって私の愛を受け取ったら、今の遠慮した態度もなくなるはずよ。フランはとてもかっこよくて、フランが素直に私への愛をささやいてくれたらと思うと考えただけで嬉しくなるわ。

 そうしたら私が愛を与えた男神たちが煩いかもしれないけど。仕方ないわよね。だって私は皆を愛しているもの。ふふ。今日は水の神と風の神と共に過ごすのよ。二人とも私のことがだーいすきなの。奥さんの女神もね、私を愛するのは仕方がないって、当然だっていって私に優しくしてくれるのよ。本当、これが当然なのに、あの女だけはフランに私が近づくと怒っていたものね。本当、常識がない女だったわ。

 「ピリカ……その」

 「あら、どうしたの?」

 「なんでもない、わ」

 水の神の妻である女神が何か言いたそうにしていたわ。私に何か意見しようなんて、この女神も愚かになったのかしら。私の後ろに控えていた男神たちに睨まれて、愚かな真似はしなかったようだけどね。

 私に意見しようなんておかしいのよ。

 だって私がルールだもの。私が、この神界の全てだもの。

 「……ピリカは」

 「ええ、ウィント様が」

 そう思って笑みを浮かべていた私は、女神たちがこそこそと話している内容なんて聞いてはいなかった。

 私は水の神と風の神との夜に思いを馳せて、笑みを零すのだった。フランも、加えてあげるからね、すぐに!




 ――――世界の移り変わりに、光の神は気づかない。

 (愚かな光の神は、下界など見ていない)




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