この小説は、絶対に読まないでください。
開きましたね。
私は悪魔です。私はあなたを試していました。私は読むなと言ったのに、あなたは自分の欲に負けて私が書いたこの小説を読もうとしています。まぁ、人間は欲にまみれているものですから、あなたはとても人間らしい人間ということになります。よかったですね。
そんなあなたは、この小説を開いた瞬間から私とお友達です。意地悪な悪魔の私と欲まみれの人間のあなたで、仲良くやっていきましょう。
そういえば、あなたは子どもの頃親に「勉強しなさい」と言われてもなかなかテスト勉強に手を付けませんでしたね。代わりに部屋の片付けを始めたり、漫画を読み始めてしまったりしていました。私はあなたが小さい頃からずっとあなたのことを見てたんですよ。全部知っています。「ゲームをやるのは1日30分までにしなさい」と言われても隠れてもっと長い時間やっていたし、学校の校則も破りたい気持ちでいっぱいでした。悪い子どもです。
そう考えると、自分の欲求を抑え切れないのは昔からであなたは今も相変わらずですから、その歳になるまで何の成長もしていませんね。でもそれが人間らしい姿なのですから、そのままでいいんじゃないですか。
私は悪魔なのであなたの邪魔をするのが得意です。というか、あなたはとても人間らしいので、コントロールしやすいのです。これからあなたに、これからの人生の正しい生き方を教えようと思います。
まず、人を好きになるのはやめなさい。あなたがいくら愛しても、その相手から自分も愛されるとは限りません。それどころか、愛されないことのほうが多いです。だから、そんなギャンブルのようなことはやめてしまいなさい。
人を信用するなんてもってのほかです。人は裏切るものです。自分が傷付くだけです。そんな不毛なことは、もうやめなさい。
誰かに助けを求めるのもやめなさい。先ほども言った通り、人は裏切ります。
誰かと一緒に居ようなんて、絶対に考えてはいけません。寂しいなんていう感情は、捨ててしまいなさい。人間はひとりでも生きていけます。
自分の弱さを、人に見せてはいけません。人は弱みに漬け込んで、人を騙します。
幸せになりたいと願ってはいけません。幸せなんて目に見えないないものを手に入れようともがくのは、不毛です。そんなことしてる暇があったら、お金を稼ぎなさい。
運命には逆らえません。自分の力で与えられた環境を変えようと足掻いたり、自分を変えようとするのはやめなさい。空しいだけです。
この小説を開いたあなたになら、きっと私の言ってきたことがわかるはずです。
最後に一つだけ言わせてください。
ここまで来たら、もうとことん、人間らしく生きてください。
私はあなたをずっと見守っています。では、またどこかで。