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約束

作者: ちーずん


  少しづつ空気が冷たくなり、半袖だった服は長袖へと変わっていく。


  季節が過ぎるとともに、現実も近づいて立ち止まることすらできないままに毎日が流れて行く。


  「今年が最後」


  そんな言葉を何度聞いたことか。

  中学生とは全く違う、「卒業」という言葉の重みを俺は初めて知った。


  10月に入って、就職を本格的に始める友人を見送る俺は未だにどうして良いのか分からずにいた。


  とりあえずの目的は、大学進学。

  地元のそこそこ偉い大学に入って4年後に就職するかどうかを決めれば良い。

  そう、考えていた。



  「佳月は、逃げてるだけでしょ」



  そんな、冷たい言葉が俺の胸の中にずっしりとのしかかる。

  高2から付き合い始めた彼女とは今年で1年だ。

  そんな彼女から言われた言葉は真実で、その時の俺はいい返すことなんて出来なかった。



   「ふあ・・・」

   「寝不足か?」


   学校近くの自販機で暖かいココアを飲みながら2人で会話をする。

   隣に座る彼女は眠たそうにアクビをして、涙目になった目で俺を見た。そして、固まること数10秒。


   「み、見た!?」

   「お、おう?」

   「うわっ・・・最悪・・・アクビ見られた・・・」


   何がショックだったのか分からないが、ショボンとして肩を落とす彼女に俺は自然と笑が零れた。



   こんなふうに、何でもない事も全部、一緒に過ごす時間すべてが好きだと分かった。



   「ずっと、一緒に居たいな」



   独り言の様に呟いた言葉に、彼女はクスリと笑う。



   「そうだね」



   優しく呟かれた言葉は小さくて消えてなくなりそうだけど、少しだけ強く握られた掌はとても熱くて「消えない」と言っているようだった。





   「わ、分からん・・・」


   教室で参考書とにらめっこをしながら頭を抱える。

   入試はもうすぐだ。

   10月なんてすぐに過ぎる。そして、勉強しながら後悔する。


   今まで、ちゃんとやってくれば良かったのに


   授業をだるいといいながら蔑ろにしていた頃が頭によぎる。

   あの時の単位があれば、推薦がもらえはずなのに。

   あの時のテストはもっと勉強しておけば点数が取れたのに。


   今更だと分かっていても、責めずにはいられない。


   (クソ・・・)


   解けない問題と後悔だらけの高校生活を思い出して、涙が出そうになる。

   周りに、置いていかれそうになる。



   「どこが分かんないんだ?」



   シャーペンを強く握っていた俺に、友人は優しく声をかけて来た。


   「え?」

   「だから、どこが分かんないんだよ?」

   「ここだけど・・・」

   「あー、そこか」


   ビックリしながらも、たどたどしくわからない部分を指さす俺に、友人は笑いながら優しく説明を始める。


   「なんで、教えてくれんだよ」

   「なんでって?」

   「お前、受験まだだろ? 俺にかまってる暇ないんじゃ・・・」

   「ばーか」

   「・・・」


   優しく教えてくれる友人に迷惑をかけているのではないかと考え込む俺に友人は笑う。


   「一緒に、受かりたいんだよ」

   「・・・大学、別々なのに?」

   「お前には、ちゃんと受かって欲しいんだよ。俺だけ受かるとか、気まずい」


   そんな優しい言葉に思わず、泣きそうになってしまった。


   俺だけが置いていかれている様に感じていた。

   それなのに、俺のバカな友人は俺の手を引いてくれる。


   1人じゃないんだなと思えた。



   「一緒に、受かろうな」



   鼻声にならないように小さく呟いた言葉はちゃんと伝わっただろうか。





   どんな時だって、隣には彼女が居て、俺の右手を握ってくれている。

   どんな時だって、前には友人がいて、俺の左手を引いてくれる。



   それがどんなに心強い事か。



   交わした約束が、どんなに俺を支えてくれている事か。





   同じように、俺は誰かを支えられているだろうか。



これは、ボクの先輩の話を聞きながら書いたお話です。

最後の問いかけは、ボク自身が考えていることだったり・・・

高校生活は、すぐに終わるそうです。だから、今を楽しむことも大切だけど未来を楽しむために今、苦労した方がいいと先輩は言ってましたね・・・

胸が痛い。



10月、全く関係ないじゃん!って思った方。それは、言わない約束!


来月は・・・来月は頑張るから許して

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