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ノン カピスコ・ピンクの傘

作者: 天野 涙

行方不明になっていた息子が、見つかったと聞いて

警察に行ってみると、そこには変わり果てた息子が待っていた。

『なんだ、お前、その格好は・・・』

息子は化粧をし、髪も肩まで伸ばしている。

髪の長さが、不明の3ヶ月の月日を物語る。

『ごめん、お父さん。どうしても、言えなくて・・・。』

『・・・お母さんは知っているのか?』

息子は頷く。

(俺だけが、知らなかったのか)

どれだけ心配したことか・・・怒りが込み上げて来るものと思っていたのに

ひとまずは無事な姿を見ると、何も言えなかった。


今は、友達とこの先のマンションに住んでいるという。

(それは、男なのか??あ〜、そんなことは聞けない。)


息子も黙って、ただ歩いていた。

お互い言いたいことは、山ほどあるはずなのに、ただ歩いていた。


そこに・・・雨


『お父さん、本降りになるかもしれない。家に寄ってよ。傘貸してあげる。』

『いいよ。このまま帰る。』

『ううん、寄って。濡れちゃうよ。』


半ば強引に、息子の部屋に連れて行かれた。

小ぎれいなワンルームマンションの5階の部屋。

几帳面な息子らしく、玄関は片づいてる。

どうも一緒に住んでいるのは女らしい???


『ここ、お店の寮なんだ。今は先輩と住んでる。よくしてもらってるよ。』

『・・・・・』

(だから心配しないでと言いたいのか?)


息子は察したように、小さく笑ってピンクの傘を差しだした。


『ごめん、こんなのしかなくて・・・。』

『・・・・・。』


(この傘、見たことある・・・。)


そう言えば、つい先日 妻が持ち帰った傘に似ている。


『母さんも来たんだよ。それでまた持ってきてくれた。』

『・・・・』

『お父さんは、返してくれなくてもいいけど・・・。』


帰る道、そぼ降る雨の中 ピンクの傘を差しながら考えた。

返すべきか、返さぬべきか・・・


自分はまだ当分、答えは出せないでいるだろうと。

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