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暗殺者の恋  作者: ザクロ
3/5

声を掛けたのは

…………。

なんだこれ?私こんな美形に声かけたのか??

表情にこそ出さなかったが内心驚愕だった。



切れ長の目、スッと通った鼻筋、薄い唇が黄金比で配置されている。その上、程よく日焼けした肌にスラッとした長身である。完璧な美青年、そうとしか言いようがない。


先程腕に抱きついた時にわかったが、この美青年かなり鍛えた身体をしている。

それに、艶のある黒髪に質の良い服を来ていることから、裕福な家柄の人だということもうかがえる。


暗殺者をやっていると、つい癖で相手の容姿から情報を探ってしまうのだ。


そんな事を考えていると、隣の美形と目が合った。


「そんなにジッと見つめられると反応に困るんだが」


いけない、ついつい観察しすぎてしまった。


「あ、ごめんなさい。貴方の顔が凄く綺麗でびっくりしてしまいました」


私は恥ずかし気に俯く。勿論、演技だ。こうすると大抵の男は初心な女なのだと思ってくれるのだが、だいたい美形には効果が薄い。


「私こそびっくりした。貴女にいきなり腕に抱きつかれて」



うっ……。確かにそれはびっくりするだろう。だが、貴方の対応は素晴らしかった。本当に助かったのだ。


「あれは……本当に失礼しました。あれ以外にいい方法がみつからなくて……。でも、相手が貴方で本当に運が良かったです」


「お役に立てたのなら、何よりだ。ところで、ここに来るのは……いや、この街に来るのは初めてだろう。それにどうやら一人のようだが……」


そう言って、隣の美形が目を細めて此方を見てきた。

この男、鋭い。それに、どうしてこんな事を聞いてくるのだ。このまま一緒にいると危ない気配がする。



「あら、どうしてそうお思いになるんですか?」


「ああそれは、この街には女性だけしか泊まれない宿屋があるからだ。それを知っている女性は大抵はそちらに泊まる。その宿屋は有名だから、一度この街に来たのなら知っているだろうと思って。だが、貴女は知らないようなので」


ヤバい。この男、ますます怪しい。 普通、ここまで考えるものなのか?運が良かったと思ったけど、それは間違いだったのではないだろうか。早く側を離れたほうがいいのでは……。かと言って、この話の流れで急に側を離れても怪しまれる気がする。それに、そろそろ頼んだ料理がくる頃なのだがーー。

とにかく、警戒していることを悟られてはいけない。



「はい、実はこの街に来たのは初めてなんです。女性専用の宿屋があるなんて、知りませでした」


「やはり初めてか。ああ、それにこの街に女性専用の宿屋なんてないぞ。知らなくて当たり前だ」


瞬間、背筋に寒気が走った。

この男、私のことをはめやがったな。これ以上側にいては駄目だと本能が告げている。もうここは強引にでも離れよう。

嗚呼、本当に朝から男運が悪い。


「どうやら、私は嵌められたようですね。どうしてこんな事を聞くのか非常に気になりますが、これ以上話を続けると墓穴を掘りそうなのでやめておきます。貴方は非常に頭が回る様ですし」


そう言って私は素早く立ち上がった。


「私、用事があった事を思いだしてしまいました。すみませんが、ここで失礼させてもらいますね。料理を頼んでいたので助けてくださったお礼と思って、どうぞ代わりに食べてください」


そう言い次第、踵を返す。


「貴女のような美しい女性が一人では何かと危ないだろう。気をつけて」


後ろから声を掛けられたが、聞こえなかった振りをして、その場を後にした。



ーー結局、朝ご飯を食べ損なってしまった。







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