夢
少年よ、大志を抱け
こんなことを言ったひとがいる。
高校生まで大志を抱いてきた。
総理大臣になりたかった。冗談半分で応援してくれる人もたくさんいた。
しかし、この世はそんなにあまくない。
大志を抱いたせいで、がっかり感は倍以上に膨らんだ。
「なにボーっとしてるんですか?」
「なんでもない。ところでお前は、少年よ、大志を抱け
という名言をどう思う?」
「…いい言葉だと思いますよ。」
「普通の意見だな。」
「でも、いい言葉になれたのは言った人のおかげです。」
「クラーク博士かい?」
「いえ、あなたですよ。」
「私は、そのまま言っただけだぞ。」
「はい。しかし、サラリーマンを夢にしていた人と
総理大臣を夢にしていた人ではそのままいっても、
言葉のリアリティが違いますよ。」
「だが、今や最高の笑い話さ。」
「笑い話にできることも含めてクラーク博士はそう言ったんじゃないですかね。」
わたしはそんなたわいもない会話で人生にまくを閉じた。