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双眸の精霊獣《アストラル》  作者: 果実夢想
Ⅰ 猫のグレムリン
32/40

#4 悪意に満ちた人造【9th】

かなり遅くなってしまってすいません

しばらくスランプだったもので、文章力が悪くなっているかもしれませんが、ご了承ください

 ――そうか。


 さっきの鳥山先生の携帯電話から響いた着信音は、あやめからのメールだったのか。


 中篠との修行の日々で、あやめにも心配をかけてしまったのか。


 俺はすっと立ち上がり、鳥山先生に携帯電話を返す。


「ごめんな、あやめ。お前を危険なことに巻き込みたくなくて内緒にしていたのに、その結果心配をかけちまった」

「ううんっ。でも、危険なことなんかやめてよぉ」


 そう思うのは無理もない。


 自分の兄が、命に係わるほど危険なことをしていたら、そりゃ嫌だろう。


 だけど。


「悪い。やっぱり俺は……見捨てるなんてできないから」


 そう告げると、二つの鏡が何処からともなく現れる。二つとも、あやめの身長とほぼ同じくらいの大きさだ。


 一つは俺の家がある方角に向かって飛んでいき、もう一つはあやめに向かって飛ぶ。


「――〈無限の扉(マルスプミラ)〉」


 鳥山先生が呟くと同時に、あやめが鏡の中へと吸い込まれていく。


 徐々に体が消えていく中、それでもあやめは涙を零しながら叫ぶ。


「兄貴ぃ! 鳥山さんは、本当は悪い人じゃないんだよぉ! あやめのことを助けてくれてぇ、本当にいい人なんだよぉ!

だから、もうやめ――」


 喋っている途中で、あやめの全身は鏡の中に入ってしまった。


 悪い人じゃない、か。


 本当にそうなら今すぐにでも戦うのをやめたいところだけど、こいつが精霊獣をみんな殺すと言うなら阻止しなければいけない。


 ところで、あやめは一体どこに行ったんだろう。


「一般人を巻き込みたくはないんだろう? それも、お前の妹だ。だから五十嵐の自宅の付近に瞬間移動させた。余計なお世話だったか?

「いや、それでいい」


 関係のない人は、戦いに巻き込もうとしないんだな。


 やっぱり根はいい人なのかも。


 たとえそれでも、こいつは中篠を傷つけた。更に、ミラたち精霊獣を滅ぼすつもりでいる。


 そんなことさせちゃ、絶対ダメだ。


「ちなみに、お前の妹からメールが来たとき、俺は『高等部校舎の屋上に来てみろ』と返事をした。何故だか分かるか? 最近の五十嵐の様子について、悩んでいるようだったからな。この状況を目にすれば分かると思った。俺が、五十嵐たちを傷つけている、と」

「俺はまだ、傷つけられてねぇよ」

「ああ、そうだったな」


 あやめに説明するには、状況を見せたほうが分かりやすいとは思う。


 でもそれじゃ、あやめを危険に曝してしまう。いや、初めからさっきの技で瞬間移動させて、巻き込むつもりはなかったのか。


 あやめに対しては優しかったらしいし……まったく、わけが分からない。


「とんだ邪魔が入ってしまったが、始めようか。五十嵐」

「……ああ」


 中篠はもうボロボロで戦える体じゃない。


 次は、俺だ。


 俺がやるしか、ないんだ。


 そしてついに――そのときがやって来た。


 バンッと再び扉の開く音がしたので視線を向けると、真っ白な猫がいた。


 あれは間違いない。


 ――ミラだ。


 猫は目が合うと同時に、こちらへ駆け寄ってくる。


「ミラ……何で、ここに?」

「蓮さん、もう一時ですよ」


 まず気になったことを問うと、人間の姿になって答えた。


 ズボンの後ろポケットに入れていた携帯電話で時刻を確認したら、確かに午後一時を過ぎている。


 更に、電話が五通もきていた。


 眼前の戦闘に夢中になりすぎて、チャイムや着信音が聞こえなかったらしい。


 今朝帰る時間を聞いてきたとき十二時くらいと答えたのに、一時間経っても帰ってこないから心配して様子を見に来たというのか。


 駄目だ、俺。みんなに心配をかけてばっかりだな。


「にしても、どうしてここが分かったんだ?」

「前言いましたよね。わたしたち精霊獣は精霊獣の気配を感知できます。心配して学校に来てみたら屋上から複数の精霊獣がいる気配がしたので、すぐに分かりました」


 なるほど。そういや、その感知能力で学校に他の精霊獣がいると分かり、中篠やシャウラに会えたんだっけ。


「それよりも――」


 そこでミラの視線が、血塗れで倒れている中篠と、いつの間にか若干遠くに移動している鳥山先生に移る。


 その目つきは、普段の可愛らしいところなど面影もないほどに鋭かった。


「――〈不可視の結界(アレキサンドライト)〉」


 今度はミラが唱え、もう一度辺りを結界が覆う。


「……五十嵐。お前は、何のために戦っている」


 突然鳥山先生が発した言葉に、俺は訝しむ。


 何のためにだなんて、そんなもの今までよく考えたことはない。


 だけど――。


「俺のように明確な理由があるわけではないだろう? なのに、何故そこまでして戦っている」

「俺はただ、昔の俺みたいな人を増やしたくないだけだ。困ってる人を、見捨てたくないだけだ。そのために俺は、精霊獣を滅ぼそうと企んでいるあんたの前に立ちはだかって、いくらでも阻止してやるよ」

「……そうか」


 俺の答えに、鳥山先生は何故か満足そうに笑む。


 そして、更に続く。


「……では、少し話をしようか。お前も知らないであろう話だ」


 意味が分からない。


 でも俺は、単純にその話とやらが気になって、鳥山先生の言葉に耳を傾けてしまっていた。


 たとえ聞かないほうがいい内容だったとしても、俺は聞くべきだと思ったんだ。


「単刀直入に言おう。お前のパートナー、ミラも含む精霊獣たちは皆、愚かな人間によって生み出された存在だ」

「……生み出、された?」

「そうだ。おかしいとは思わなかったか? 精霊獣という、人間にも動物にも武器にもなれる特異の者が、自然に生まれるわけがない」


 ……確かに、一理ある。いや、俺はずっとそれが気になっていた。


 そう、ミラと契約を交わしたあの日から、何で精霊獣というのが存在しているのか、不思議で不思議で仕方がなかった。


 真理は、そういうことだったのか。

突然鳥山疾風が話し出す、精霊獣の正体。

そして、中篠恵やシャウラの真相。

伏線を回収しまくり、物語は佳境へ向かって突っ走る――!


次回、#5 高速の獣

また遅くなってしまうかもしれません

本当に申し訳ありません

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