表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双眸の精霊獣《アストラル》  作者: 果実夢想
Ⅰ 猫のグレムリン
23/40

#3 両者の修行と二人の恋路【5th】

 やや早足で歩いていると、肩を並べているミラが口を開く。


「あの……蓮さんは、自分がロリコンってことを隠してるんですか?」


 唐突すぎる質問に、俺は問い返す。


「何でいきなりそんなこと訊くんだ?」

「だって、一昨日シャウラさんにロリコンなの? と訊かれたとき、否定しようとしてましたし」


 あー、確かにそうだったな。でもミラに肯定されてしまい、あの二人にもロリコンだと思われちゃった。まぁ事実なんだけどさ。


「そりゃそうだろ。ロリコンなんて、あんまり大っぴらに言っていい性癖じゃないし。俺はそのせいで、中等部のとき友達ができなかったんだ」


 性癖は人それぞれだというのに、少し異常で自分らと違うからって、ずっとゴミを見るような目で見られ、避けられてきた。


 別に同学年のやつらなんて、正直どうでもいい。


 ただ、もし万が一にも噂が初等部にまで広まり、幼女たちに嫌われてしまったら生きていける気がしない。


 それに俺は、あくまで普通の高校生活を過ごしたいのだ。クラスメイトたちから避けられて、常にぼっちとか普通じゃないだろ。


 そういうラノベは人気あるし俺も好きだが、リアルとフィクションは別だからね。


 俺の話を聞き、ミラはボソリと呟く。


「そうだったんですか……。変態ですからね、当然ですよね」

「待て待て、俺はロリコンという名の紳士だ! 変態じゃないぞ」

「何が紳士ですか! わたしがシャワーを浴びている時に、裸で入ってきたじゃないですか! シャウラさんのむ、胸を揉んだりもしてました!」

「だーかーらー! それは全部事故だって言ってんだろ!?」


 ミラは長い間根に持つタイプなんだな、恐ろしい。どうやったら許してもらえるのだろうか。


「むぅー、もういいです。蓮さんですからね、仕方ありません」


 口を尖らせて断念したように言うミラに、俺は食い付く。


「え、それって、俺になら裸を見られてもいいということか!?」

「違います! わたしはただ、諦めて忘れようと思っただけです! 今度同じようなことをしたら殺しますよ!」

「へいへい」

「もっと反省してください……」


 可愛い顔して、なんて辛辣な子だよ。幼女の裸を見られるなら、たとえ殺されても悔いなし。


 ……いや、やっぱり死ぬのは嫌です。


「そういえば、蓮さんがロリコンというのを隠しているなら、どうしてわたしには堂々とロリコン発言できるんですか?」


 そう言われ、暫し思案する。


 今までそんなの考えたことなかったぞ。けど、今なら分かるよ。ミラは、他の人とは違う。


「うーん。ほら、色々シビアなのは言ってきたりするけどさ、それでも離れようとはしてこないから……ミラになら、なんか安心なんだよな」

「ふぇ、だ、だって、その、唯一の、パートナー、ですし……」


 確かにその通りなんだが、何故かミラは顔を赤らめて俯き、更に何事かを呟く。


「……それに、わたしは幼いですから、嬉しい、です……」

「ん?」

「なっ、ななな何でもありません! 死んでください!」

「何で!?」


 あまりに小声すぎて聞き取れなかっただけなのに、いきなり罵られてしまった。理不尽だわ。


 と、そうこうしているうちに気づけば我が家の目の前である。


「あの、今思ったんですが。外を出歩くときは、猫の姿のほうがいいんじゃないでしょうか」

「あ、そういやそうだな」


 何も知らない一般人に、猫耳や尻尾を見られちゃマズいよな。今度からは猫の姿で出かけて、散歩をしていると見せかけよう。


 あれ、でも猫って犬と違い散歩は必要ないんだっけ。……まぁ、いいや。


 そして俺たちは家の中に入り、リビングへ直行する。


「あやめ、ただいま。遅くなって悪ぃ」

「…………」


 椅子に座って自分の携帯を眺めながら、何やらボーっとしているあやめに挨拶しても、返事がない。ただのしかばねのようだ。それに、どことなく顔が赤い気がする。


 恋する乙女か、お前は。


「あやめさん? どうかしたんですか?」

「…………えへへぇ」


 ミラも不思議に思ったのか怪訝そうに訊ねたものの、あやめは携帯を見つめて頬を染め、突然笑い出す。


 なんか不気味で怖いんですが。


 とりあえず、俺はあやめの頬を摘まむ。更に力一杯引っ張る。


「ひ、ひはいひはい、ひはいよぉ……」


 涙目になって訴えてきたので、やめてあげるか。


「うぅ……兄貴帰ってきてたのぉ? 気配を消していたずらするなんて、酷いよぉ」

「俺は気配を消せるほどすごくねぇよ。ボーっとしているほうが悪い」


 若干腫れた頬を押さえながら抗議してくるあやめに、事実を伝える。


 気配を消す……というか透明人間になりたいとは思う。そしたら、幼女の更衣や入浴などを堂々と堪能できるよね。


 ミラに知られたら、思い切り引っ掻かれてしまうが。痕が残ったらどうしてくれるんだよ。


 それにしても、最近のあやめは様子がおかしい。


 兄としては、何か悩んでいるなら相談くらいしてほしいんだけどな。


「ボーっとなんかしてないよぉ! ちょっと……色々あっただけだからぁ、心配しないでねぇ?」


 明らかに"ちょっと"じゃ済まないことだと思う。その、"色々"の部分が一番気になるよ。


 が、あやめは無理矢理話を反らす。


「そ、そんなことよりぃ! ずっと待ってたんだよぉ? 早くごはん作ってぇ! もうお腹空いたぁ。昨日はカップラーメンだけだったんだからぁ」

「はいはい、分かったよ。ごめんな」


 そう返事をして、俺は台所に立つ。


 まぁでも、隠し事の一つや二つくらい許容すべきだろう。話したくなったときに話してくれたらいいし。


 だから、これ以上の追及はしないと決めた。


 うーん、今日は何を作ろうかな。


「蓮さん! たまにはイタリア料理がいいです!」

「あやめはフランス料理が食べてみたいよぉ」


 外国料理のリクエストをもらってしまった。日本人なのに何で日本の料理じゃないんだよ。


 けど、昨日はあやめ一人だけにしちゃってたからな、仕方ない。


 冷蔵庫の中には不思議と材料があったから、カルパッチョにビスクというスープを作ってみる。


 ……うむ、なかなかいい出来だ。でも明日からはもっと節約しないとな。


 完成してテーブルに置くと、椅子に座っていた二人は待ってましたと言わんばかりに、若干前のめりになりながら料理を口に運ぶ。


 そして、すぐに口元が緩む。


「わぁ……すごく美味しいです」

「やっぱり兄貴のごはん最高ぉー」


 父さんも母さんも料理はあまり得意でなく、昔からほとんど俺がやっていて自信はあったのだが、喜んでもらえて何より。


 どんなものかと俺も食べてみたところ、これは確かに美味しい。ほっぺたが落ちるとはまさにこのことだね。


 グルメレポーターじゃないから詳しく感想は言えないけども。


 と、不意に、あやめが暗い表情になって小さく囁く。


「ねぇ……もしあやめが、兄貴の知り合いに恋したって言ったらぁ……どうするぅ?」

「………………………………………………………………は?」


 いきなり何言ってんだ、こいつは。あまりに唐突すぎて、間の抜けた一文字しか発せられなかったぞ。


 ってか、恋? しかも俺の知り合いに?


「は、はぁぁぁぁぁぁ!? おま、それマジかよ!?」


 近所迷惑じゃないか心配になってしまうほどの大声で仰天すると、あやめは慌てて(かぶり)を振る。


「だ、だからもしぃ! 例えばの話だってばぁ!」


 その言葉を聞いて、心の底から安堵する。


 そ、そうだよな。あやめが俺の知り合いに恋とかするわけないよ。こいつにはまだ早い、うん。


「びっくりさせんなよ……。でも何でだ?」

「な、なんとなくだよぉ。なんとなく、その場合は兄貴、どう思うのかって気になったんだぁ」


 今までの幼い妹はどこへやら、大人っぽい容貌で言うあやめに、俺はしっかりと告げてやる。


「俺の知り合いだからって関係ねぇよ。あやめが選んだ相手なら、俺はちゃんと応援するぞ。当たり前じゃねぇか」


 それを聞くと、あやめは何故か嬉しそうに微笑む。


「そっかぁ。兄貴、ありがとねぇ。来月のテストが終わったら、ちゃんと話すよぉ。だから、待っててぇ」


 そして、綺麗に完食した皿をテーブルに置いたまま、自室に戻っていく。


 そういえば、もうすぐ期末テストだったな。海聖学園は小中高と同時にテストが行われるのだ。ってか一切勉強してねぇぞ、大丈夫かしら。


 それにしても、やっと話す気になってくれたのかな。兄には話しておいたほうがいいと思い、テストの日までに心の準備をしておくのかも。


 俺はただその時を待ち、黙ってあやめの言葉を聞いてあげるのみ。


 あとは風呂に入ったり、歯磨きをしたり、ラノベを読んだり、少しだけ勉強をしてみたりして、深夜一時過ぎに就寝する。そして、今日という一日が終わる。


 それから、昼までしかない学校の授業を受けたり、中篠との修行などで時間はあっという間に過ぎていき━━。


 大して強くもなれないまま、十日が経った。

#4突入!

蓮、ミラ、あやめ、恵、シャウラの五人でテストが近いため泊まりがけの勉強会を行う。

そして、修行も泊まりがけでやるのだが━━。

この平和な日々はいつまで続くのか。もしかたらこれは、嵐の前の静けさなのかもしれない。


次回、#4 悪意に満ちた人造

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ