表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双眸の精霊獣《アストラル》  作者: 果実夢想
Ⅰ 猫のグレムリン
20/40

#3 両者の修行と二人の恋路【2nd】

 おい、待てよ。


 近くにいても聞き取りにくいほどなのに、不思議と聞こえてしまった。


 俺は愕然とし、あやめの双肩を掴み、声色を荒らげて叫ぶ。


「あやめッ! その名前……。いつ、どこで会ったんだ!」

「ふぇっ!? あ、兄貴どうしたのぉ? 何か怖いよぉ……肩痛いしぃ」


 あやめは、俺の様子に一驚を(きっ)し、肩の痛みに顔を歪ませて言う。


 やべ、無意識に力が入っちまってた。怖がらせちゃったか。


「あ。ご、ごめん、つい……」

「? 蓮さん? どうかしたんですか?」


 慌てて手を離し謝ると、ミラが怪訝な表情で訊ねてくる。どうやらあやめの声は、ミラには聞こえていなかったらしい。


 問いに答える余裕すら無く、俺はあやめの返事を待つ。


「ご、ごめんねぇ。いくら兄貴でもぉ、これはちょっと秘密にしておきたいんだぁ」


 そう言って、自室に戻ってしまう。


 あやめと鳥山先生は、一体どこでどんな出会いをしたのだろうか。何もされなかったならいいんだけど。


 でも、あいつは秘密にしておきたいと言った。それはもしかして、兄である俺にも言えないことをされたんじゃ?


 まさか強姦……。鳥山先生ってロリコンだったのか? 仲間だね! とか冗談ほざいてる場合じゃないぞ。


 ずっとそればかり気になり、夕飯も喉を通らなかった。久しぶりに作ったビーフストロガノフは美味しかったが。


 あやめも今日は様子がおかしい。心ここにあらずって感じでボーっとしていたら、急に赤面したりもじもじしたり。


 まったくワケが分からん。


 そのせいで、夜は六時間くらいしか寝れなかったよ。いや、疲れてたから充分寝てますな。


 結局聞き出すことはできず、わだかまりを残したまま夜が明けた。


 そして、翌日の放課後。


 俺は、ミラと共に中篠の家へやって来ていた。


 庭に入ったところで、人型になっているシャウラが、修行の説明を始める。


「あたしたちは、昨日とは違って本気であんたを追い詰めるわ。だから、死なない程度に避けて反撃してきてちょうだい」


 全くもって単純明快だ。


 複雑なルールがない分、まだ幾許(いくばく)かはやりやすいだろう。けど、難しいことに変わりはない。


 確か昨日は、多少手加減をしてくれていたはず。でも、今回は初めから本気を出してくるのか。


 死なない程度にって、無理じゃね? 素人相手に本気でくるなんて、随分スパルタなんですね。


「……まず開始する前に、一つだけ質問させてもらう」


 今からすぐ修行を始めるのかと思いきや、中篠がそんなことを言い出した。


「……五十嵐君は、たけのこの里派? それともきのこの山派?」


 まったく問いの意図が読めないが、素直に答えておく。


「たけのこだよ」


 おそらく、ほとんどの人はたけのこ派だと思う。きのこも一応美味しいが、やっぱりたけのこ一択だわ。


「……何故、あなたには大きなきのこがついているくせに、きのこ派じゃないの」

「股間見ながら言うな! 何の話してんだ!?」

「……まさか、今は大きくなってたけのこ状態ということ?」

「そんなわけねぇだろ!」

「……チョコレートの部分はめくれてるの?」

「何で興味津々なんだ、怖えよ! もう黙ってくれませんかね!?」


 どうしてこんなに、すらすらと下ネタが出てくるのだろうか。ある意味尊敬するレベルだぞ。


 後ろではミラが、赤面しながら「はわわわ、大きいんですか!? めくれてるんですか!? 美味しいんですか!?」と狼狽えている。


 あんまり子供━━特に幼女には聞かせないでいただきたい。狼狽しているところも可愛いけど。


 さっきまでジト目で俺たちのやり取りを見ていたシャウラが、中篠の頭を小突きつつ言う。


「つまらない下ネタ言ってないで、さっさと始めるわよ」

「…………分かった」


 渋々といった感じで頷くと、中篠はポケットから眼鏡を取り出し装着した。


 素晴らしい大人な対応。長い間一緒にいると、扱いに慣れてくるんだろうな。俺も頑張らないと。


 最近つっこみばっかりだよ……久しぶりにボケさせてくれ。


「━━〈不可視の結界(アレキサンドライト)〉」


 シャウラがそう呟くと、この家周辺が結界に覆われる。


「……〈ノッカー〉」


 と、シャウラは分厚い本の姿になり、中篠の左手に乗った。


「ほら、そっちも早くしなさいよ」

「あ、は、はい!」


 シャウラに催促され、 ミラは慌てて刀剣〈グレムリン〉へと変貌を遂げ、地面に突き刺さる。


 俺はそれを握り締め、中篠に対峙するように構える。


 というか、シャウラって本の姿でも喋れるんだね。まぁ、ミラも刀剣の姿で喋っているから今更か。


「あ。言うの忘れてたけど、〈不可視の結界(アレキサンドライト)〉内で壊れたものは、結界を解除したら修復されるわ。だから安心して暴れていいわよ」


 分厚い本から発せられた言葉に、俺は昨日穴が開いてしまった柵を見やる。確かに、何事もなかったみたいに元通りになっていた。


 なるほど、これは便利だな。


「……第一章第一節、〈紅蓮の鞠(アデュレリア)〉」


 やっぱり、最初は〈紅蓮の鞠(アデュレリア)〉でくるか。


 前回と同じように、ソフトボール級の大きさの火球が本〈ノッカー〉から飛び出し、追尾してくる。


 逃げ、避け、躱す。


 そして中篠のもとへ走り、グレムリンで斬りかかる。


 が。


「……〈紅蓮の阻隔(ファイアゲート)〉」


 思った通り、地面から高熱の(ほむら)が噴出し、火炎の壁となり防がれてしまった。


 まずは、どうやって攻撃を与えるか考えないとな。


「……第三章第一節、〈黄金の棘(アポフィライト)〉」


 な、何だ? 中篠がそう呟いた途端、左手に持っている本が、五メートルほどの鞭に変形した。


 眩しいくらいの金色で、何故かビリビリバチバチと音がしている。


 くそ、何だよあれ。いきなり、見たことない技使うんじゃねぇよ。


 なんて考えている間に、中篠は左手を大きく横に薙ぎ払う。


 もちろん避ける暇などなく、謎の鞭が直撃し、俺は右方にぶっ飛ぶ。庭の柵がボロボロになってしまうほど、激しくぶつかってしまった。


 体が、痺れる……。指を動かすことすら儘ならない。


「蓮さん、大丈夫ですか!?」


 手元の刀剣からミラの心配する声が聞こえたが、答える余裕はない。


 当たったのは精々左腕だけなはずなのに、何故か全身が痺れて物凄く痛む。意識もだんだん薄まっていく。


 また、このパターンかよ。俺は何でこんなに情けないんだろう。


 ふと中篠がこちらに歩いてくる。


「……この鞭には、電撃が流れているんだ。戦闘経験豊富な者なら大したことはないが、少ない者なら下手したら死に至ることも有り得る」


 そんな技の説明の言葉を最後に、俺の意識は闇へ落ちていった━━。


 そろそろガチで強くなりたい。

次回、再びあやめと鳥山先生が出会う!

蓮やミラ、恵とシャウラが修行している間あの二人は何をしていたのか?

久しぶりにレグルスも登場!


新作「アビリティ・フュージョン」もよろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ