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双眸の精霊獣《アストラル》  作者: 果実夢想
Ⅰ 猫のグレムリン
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#2 本に囲まれた少女【6th】

 シャウラが変化した辞書に、動揺を隠しきれない。


 え、本? それでどうやって戦うのだろうか。まったく想像もできないんだが。


 とりあえずこちらも臨戦態勢をとる。


「ミラ、〈グレムリン〉だ!」

「あ、はい!」


 ミラは元気よく返事をしてから刀剣に姿を変え、地面に突き刺さった。そして俺はグレムリンの柄を握り、構える。


 この間の、鳥山先生と対峙した時には気づかなかったが、何故か妙に軽い。ぬいぐるみでも持っているかのような感覚だ。


 もっと重くて、構えることすら困難なのかと思ってた。


 そんな俺の様子を見て、ミラが説明してくれる。


「そういえば、まだ言ってませんでしたね。パートナーが亡くなった場合、精霊獣は自然とパートナーを失うことになります。その状態で武器を人に触らせると契約ができるわけですが、でもどうして契約が必要なのだと思いますか?」


 確かにどうしてだろう。契約なんてしなくてもいい気はするな。俺は、何も答えられなかった。


「それは、武器がまともに機能しないからです。契約をせずにどんな精霊獣の武器も使えたら、その人はまさしく悪魔と化してしまいます。だから信用、信頼できるただ一人のみをパートナーに選ぶ必要があるのです」


 信用、信頼できる一人だけを、パートナーに。


 そう考えると、何故あれほど平和を愛している鳥山先生が、粗暴なレグルスと契約したのか分からない。


「逆に、契約を交わしたパートナーならば問題なく機能します。経験さえ積めば、自ずと戦闘方法は見えてくるはずです。もちろん、特有の奥義を放つことだって夢じゃありません」


 特有の奥義、だと。ナニソレカッコイイ。


 一通り理解できたところで、中篠が苛立ちを隠したように言う。


「……話は済んだか?」

「あ、あぁ。悪い」


 気のせいなんかじゃない。やはり眼鏡をかけた途端、口調が変わった。一体どうしたのだろう。


 でもそれは後で訊く。やるからにはいい結果を残したいので、今は戦闘に集中しなければ。


 と、いつもより若干低い声色で、中篠は告げる。


「……お前の戦歴は皆無。通常に戦闘を行っても、圧倒的な力量差は否めない。だから、ハンデを与えてやる」

「ハンデ?」

「……そうだ。私は本気を出さず、強力な技は使用しない。そして、私はここから一歩も動かない」


 鸚鵡返おうむがえしに問うと、中篠はそんな″ルール″を答えた。


 無茶だ。いくら俺が素人だからって、一歩も動かずにいられるわけがない。


 だが、中篠にとっては無謀でも何でもないのかもしれない。完全に俺を、なめてやがる。


 正直、ここまでのハンデをもらっても、負けると思う。経験という、覆すことのできない差が、俺たちにはあるのだから。


 まぁそれでも、全力で立ち向かうつもりだけど。


「……時間制限は一時間。私は本気を出さず、今立っている位置から一歩も動かない。……準備はいいか?」


 未だにハンデが重すぎる気がするが、それは勝ってから言えってもんだよな。


 中篠の問いに、俺は小さく頷く。


 こうして俺、五十嵐蓮 対 中篠恵の勝負が幕を開けた━━。



 ……と、思ったんだけどなぁ。中篠は、持っている分厚い本をいきなり読み始めた。


 怪訝な表情の俺に気づき、中篠が言う。


「……何をしてる。私に構わず攻撃してこい」

「え? お、おぅ」


 いいのかな。もしかして、これもハンデの一つなんだろうか。


 けど見た感じ、ハンデをつけているというよりかは俺をなめている、馬鹿にしているようにしか思えない。


 俺は少し戸惑いながらも、刀剣〈グレムリン〉を構えたまま中篠に突撃する。そして、左肩辺りに斬りかかる。


「……第一章第一節、〈紅蓮の鞠(アデュレリア)〉」


 突如、中篠の声と同時に、本(ノッカーって名前だっけ?)から真っ赤に燃え盛るソフトボール級の大きさの火の玉が飛び出し、俺は慌てて右へ躱す。


 おっと、ギリギリセーフか。危うく、俺の顔面が真っ黒焦げになってしまうところだったぞ。


 ようやく分かった。中篠は、近づいたり動いたりしなくても攻撃する術があるから、一歩も動かないって言ったのかよ。


 それはもうハンデどころか、俺のほうが不利じゃね?


 でもいいや。文句なんて言ってられない。


 何故なら、今この時もまだ、火の玉が俺を追尾してきているのだ。避けるだけで精一杯だよ。


 不肖ながら、真っ黒にはなりたくありません。熱いのも嫌でございます。


 だから、中篠自身を盾にすべく、中篠の背に隠れる。


 上手くいけば、俺の代わりに中篠に当たるはず。といった考えは、どうやら甘かったらしい。


「……無駄。第一章第二節、〈紅蓮の阻隔(ファイアゲート)〉」


 中篠の三センチほど前方。突然下から炎が噴き出し、瞬時に追尾してくる火の玉を遮る壁と化す。


 すると、先程の火の玉は炎の壁にぶつかり、音もなく完全に消沈した。

自らの宣言通り、一歩も動かずに蓮を追い詰める中篠恵。

一体、蓮は勝利を掴むことができるのだろうか!?

そして一方、あやめは運命的?な出会いを果たす━━!?


次回、本に囲まれた少女【7th】

2013年11月13日前後、深夜12時更新予定!


少し遅れるかもしれませんが、ご了承ください

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