表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双眸の精霊獣《アストラル》  作者: 果実夢想
Ⅰ 猫のグレムリン
15/40

#2 本に囲まれた少女【5th】

 午後一時過ぎ。俺はミラと共に、中篠宅へ訪れていた。もちろん、服は既に着替えてある。


 外観は普通の一軒家といった感じで、適度な大きさだ。


 庭もそんなに広くなく、修行できるスペースがあるようには思えない。一体どこでするつもりなのだろうか。


 とにかく、このまま眺めていてもどうしようもないので、やや緊張した面持ちでインターホンを鳴らす。


 すると、間髪入れずに扉が開く。


「……入って」


 中篠も、当然私服だった。


 上は、水色を基調としていて所々に花模様のある、涼しそうなTシャツ。下は、およそ太ももの辺りまでの長さしかない、群青色のミニスカート。


 同年代の女子の私服なんてそうそう見る機会ないから、思わずドキッとしてしまった。海聖学園は、初等部ですら制服なのだ。


 これで、あと二十センチほど身長が低かったら完璧だったのに、惜しいな。


 ふと、隣に立っているミラがジト目で俺を見てきたが、無視して案内されるがまま中へ入る。


 トイレ、風呂場、リビング、台所などオーソドックスなものに加え、本が多すぎる。ざっと四千冊くらいはあるんじゃなかろうか。


 それも全て、リビングの本棚に綺麗に収納されている。俺の部屋なんか、ラノベが床に置いてある状態だというのに。


 人知れず愕然としていると、突然中篠が口を開く。


「……あなたが、五十嵐君のパートナー?」

「は、はい! 蓮さんと契約をしました、ミラといいます! よ、よろしくお願いします!」


 少し畏まりすぎなミラの挨拶に、中篠はやはり興味なさげに「……よろしく」と答えるのみ。


「蓮さん蓮さん、この人は本当にわたしたちと会話する気があるんでしょうか?」

「……さぁ」


 ミラが小声でそんなことを言ってきたが、俺に訊かれても困るよ。


 それから庭へ移動し、中篠が言う。


「……まずはあなたの実力を確かめるため、私と戦ってもらう」

「ちょ、ちょっと待てよ! 俺はまだ契約したばっかなんだぞ?」

「……大丈夫。本気は出さない」

「いやそういう問題じゃねぇよ」

「……覚悟はいい?」


 ちっともよくないが、中篠は諦めるつもりなどないみたいだし、仕方ない。修行を頼んだのは俺なのだから。


 それに、実践のほうが学べることが多いかもしれない。だから、やってみる価値はあるよな。


 くそう。緊張したらトイレに行きたくなってきやがった。


「な、なぁ、その前にさ。トイレ貸してくんねぇか?」

「……大? 小?」

「え、小、だけど?」

「……じゃあ私の中に出せばいい」

「は!? いきなり何言ってんだ!?」

「……わざわざ場所を教えて、厠に行かせるより手軽」

「そういう問題じゃねぇんだよ!」


 中篠はもっと真面目だと思ったのに、下ネタを言う人だったのかよ。ギャップが激しいね。


「……私は構わない。こんなこともあろうかと、早脱ぎの特技は習得している」

「ちょっとは構えよ! どんなときに備えてんだ!」

「えぇ? だ、出す!? ど、どどこに、何を、ですか!?」

「お前は落ち着け!」


 前方で無表情を崩さない中篠と、後方で赤面しながら狼狽しているミラに、連続でつっこむ。


 駄目だ、幼女の潔白は守らないと。


 というわけで俺は、意地でも便所の場所を聞き出し、用を済ませたのだった。何でトイレに行くだけで疲れなきゃならないんだろう。


 そして、俺と中篠の勝負が始まる。


「……シャウラ」


 中篠がそう言うと、さっきからずっと俺たちの周囲を舞っていた蝶が、人間の姿に変貌を遂げた。


 腰の辺りまでのばした、明るい黄金の髪。


 身長や体重は中篠と大差ないだろうが、その一部分。胸だけは、比べ物にならないほど豊満だ。


 更に、少し吊り目気味である。


 と、不意にシャウラと呼ばれた女が手を差し出し、ミラが握り返す。


「あたしはシャウラ。恵のパートナーよ。よろしくね」

「は、はい! 蓮さんのパートナーの、ミラです!」


 なるほど、中篠と契約を交わした精霊獣は蝶か。


 ……ん、待てよ? もしかしてあの時。学校で見かけた蝶はシャウラで、俺を中篠の(もと)まで案内してくれたんじゃ……。いや、さすがに考えすぎかな。


「……シャウラ──〈不可視の結界(アレキサンドライト)〉」

「分かってるわよ!」


 途端、肉眼で認識できるほど濃い紅色の結界のようなものが、中篠の家の四周に展開された。


「……この結界の中なら、たとえどんなに激しい戦闘が行われても、一般人に気づかれるどころか目にすることすら不可能」

「ちなみに、精霊獣だったら誰でも使える基礎的な技よ」

「あ、はい。わたしも使えます」


 じゃあこれさえあれば、どれだけ暴れても問題ないってことか。


 一人で納得していると、中篠はスカートのポケットからシンプルな眼鏡を取り出し、自分の瞳に装着した。


 うむ。思ったより似合っている……が、何の意味があるのだろう。


「……いくぜ」


 あれ? 今心なしか、口調が変わってたような。今まで中篠の口からは聞いたこともない、蛮的な言葉遣いに。


「……本〈ノッカー〉」


 なんて脳内に疑問符を浮かべていたら、シャウラが分厚い辞書みたいな姿に変わり、声を発したばかりの中篠の左手の上に現れた。

蓮VS恵、開戦!

本で予想外の戦い方をする恵に蓮は──!?

ミラの刀剣、グレムリンで勝利を掴むことができるのか!?


次回、本に囲まれた少女【6th】

2013年11月6日前後、深夜12時更新予定!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ